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只今森のなかで索敵中です。
ええ。索敵中です。
ドガァーン!
もう一度言います。索敵中です!地球上では見られないほどの怪力で木を殴り倒しています。何故か?知りませんよ。私に解るわけないじゃないか。狩りのド素人が。
ドガァーン!
これ、剣要らなくね?と思うのは私だけなのかなぁ。あっ、怪我ですか?私の処置が無駄なくらい翌朝綺麗に治ってましたよ?ファンタジーだね。驚いてバク転出来そうだったよ。勿論出来ないけど。
「ク、クロイド。本当に索敵中なの?」
「ん?違うが?」
「えっ?」
「ん?」
あっれぇ?索敵中って叫んでたの私ですが?勘違いでしたか。HAHAHA。恥ずかしいなぁ。思わず「えっ?」とか言っちゃったよ。でも、朝御飯食べた後に言ってたよね。「………索敵か。」って呟いてましたよね。私地獄耳なんだよ。聞こえるんですよね。てっきり索敵かと…………。
か、かかか顔にね、熱が、熱があああああ!暑い暑い。今日は暑いですねー!
「そ、そうだったんだ。てっきり索敵かと。」
「索敵?………………ブッ!ハハハハハ!」
「うわぁーーーーーー!恥ずかしいから!やめてぇ!だって、狩りとかそんなん知らんがなぁーーー!」
「ククク、はぁ~。いや、ちょっとした身体確認だ。怪我とかしたからな。"迷いの森"はこの世界では未踏地域だからな。身体能力低下とかあり得るからな。」
クロイドは真面目な顔でそう言っているが、ピチッとしたタンクトップのうえから腹筋が笑っているのがまるわかりだ。
「お腹が笑ってる。バレバレだよ。」
「すまない。狩りに縁の無かった都会の坊主でもそんなことは言わなかったのでな。」
「はぁ~。もう。はいはい。私は異世界の都会の坊主でもわかる索敵でない行為を索敵と勘違いをするお馬鹿さんです。」
「そこまでではないが、すまない。笑いすぎた。気を悪くしたか?」
クロイドはシュンと耳を垂らして私を見下ろす。(尻尾は元々下がってる。狐は感情を尻尾で表さないって聞くしね。)クロイドは中々に繊細な男だ。私が拗ねたフリをすると、途端に萎んで弱々しい男になってしまう。
だが、ここはチャンスだ!そう、機会!私はこの時を待っていた。クロイドは中々に防御が堅い。この、押しに弱い時に押せばいけるはず!
「じゃあ、機嫌とって。」
「ああ、なんでもする。だから、気を悪くして無視しないでくれるか?」
「なんでも?」
「ああ、なんでもする。」
ククク。言質ゲットォォォォォ!私の脳内でコングが高らかに鳴る。
「本当の本当に?」
「ああ、狐人族は嘘はつかない。」
「じゃあ、耳と尻尾触っても良い?」
「うっ。それは。」
「なんでもするって言ったよね。嘘はつかないって言ったよね?」
「待ってくれ。解ったから。その、心の準備をゴニョゴニョ。」
「えっ?何て言ったの?」
「触ってもいいぞ。」
「わーい!やったぁー!」
ヒャッホーイ!
おまけ
「待ってくれ。解ったから。その、心の準備をしなければ。オリハルコンの心で耐えねば!」
鉄の心ならぬオリハルコンの心。異世界ならではですね。