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第143話 追いべきキーマン ①

 東京上空では二十四時間体制で、エイ型戦闘マシン四機が常時哨戒飛行を続けていた。

 各エリアの公園、広場、学校の運動場には、臨時の UCBD重装特務隊の屯駐拠点が設けられ、輸送マシンと人員が常駐している。

 干渉波発生装置が稼働し、複数のサーチライトが、まるで光の剣のように夜空を切り裂いていた。


 深夜、シャドマイラ防災対策本部会議室。

 キングピーファピュトン、コードネーム『レナタ』に関する最新情報の共有と、退治方針を巡る緊急会議が続いていた。

 長方形の会議卓、中央席には剣崎部長と葛西副部長。

 情報・通信管理担当の中臣、作戦対策部の綾瀬颯斗。

 さらに沖田純一をはじめとする各地の長官が、ホログラム通信で参加している。

 卓の片側には、特別招集された三名の若い異能者。

 小柄なルベライト、

 マンバンヘアで目を細め、左手側に太刀を置く青年、武田覚たけたまさる

 そして、金と茶が混じったミディアムヘアの少女が、席に座ったまま仮眠していた。

 東京各地の拠点や実家からは、ナイト・ガディアンズの永倉鈴奈、松原心桜、その他数名がリモート参加。

 紅糸世もアドバイザーとして顔を出している。


 モニターに映し出されたのは、二十三時頃にアラスカのネオ・アンカレッジの被害映像だった。

 炎をまとった《レナタ》は、二十階建てを超える巨躯へと肥大化。

 大蛇のように太く長い複数のワーム状の首を振るだけで、高層ビルを貫き、中央からへし折っていく。


 黒い影が爆煙の中で火焔を放射し続ける、まさに悪夢の光景。

 剣崎は無言でデータを読み込み続けていた。

 葛西副部長が、こめかみに汗を浮かべて呟く。


「……わずか数時間で、ここまで成長するとは」

「はい。この成長ペースですと、完全体は記録上の最大個体を超える可能性があります」


 本日午後、複数州郡が襲撃を受けたことで、《レナタ》は正式に命名され、大型災害級シャドマイラとして認定されていた。


「現在、ターゲット《レナタ》の所在は?」

「一時間前、アラスカ防衛軍と現地支援部隊の迎撃を受け逃走。現在、位置不明です」

「……このまま東京へ戻ってくれば、五年前の北九州壊滅が再現されかねん」

「同じ悲劇を繰り返さぬためにも、確実な討伐方法を定めねばなりません」


「しかし、ネオ東京タワー級の巨大シャドマイラとなると、我々の手段は戦闘マシンとマリアンヌしか残っていないのでは?」


「まずは封じる手段が先だ。中臣君、これまでの対策効果は?」


「干渉波生成装置は一定の効果がありますが、配置数不足と投下距離の問題により、封じ込め前に破壊されました。拘束成功率は23%まで低下しています」

「数が足りないなら、量で押すか」

「四月に承認された量産案は?」

「東京の十拠点にミサイル対応マシンを配備済みです。さらに州議会および防衛軍より、地上ミサイル発射ユニット使用許可も取得しました」

「……だが、それで止まるか?」


 葛西の懸念に、剣崎が静かに続ける。


「中臣君、他の手段は?」

「松原心桜ヤングエイジェントによる窒素冷凍弾を投入しましたが、再生増殖の抑制には至りませんでした」


 画面越しの心桜が肩を落とし、深く頭を下げる。


「申し訳ありません……」

「松原さん、今は、反省会ではない。君と黒川君のおかげで、多くの命が救われた」


 綾瀬がフォローしつつ、新たな提案を口にする。


「物理拘束以外に、感覚干渉は有効でしょうか?」


 剣崎の視線が、巫女装束の鈴奈へ向けられる。


「永倉君の幻術は?」


「……足立エリアで一度試しましたが、効果は確認できませんでした。《レナタ》には、迷いや恐怖といった感覚が成立していないようです」


 武田覚が静かに問いを投げる。

「そもそも、シャドマイラに心はあるのか?」


 ルベライトが即答する。


「あるわ。生物である以上ね。ただし、何を怖れ、何を嫌うのか。その形がまだ定まっていないでしょうね」


綾崎が応じる。


「……生まれたばかりの赤子のようなものか」


「ええ。この数時間の間に経験を積めば、反応する可能性はある」


 鈴奈が慎重に言葉を挟む。


「ただし、巨大個体への幻覚干渉は、暴走のリスクが高すぎます。」


 剣崎は、眠っている少女へと視線を向ける。


「モルペウスさん、君の睡眠術は効果があるかね?」


 金と茶が混ざった髪をハーフアップにし、後頭部で三つ編みにまとめた少女。

紺のセーラー服に水色のリボンを結んだその少女は、すっかり熟睡しており、口元にはうっすらと涎まで浮かんでいる。

 近衛・ソフィアノス・真夢まゆ、本人は眠っているが、彼女の前に置かれた霊体プロジェクターは淡い光を放ち、音量レベルを示すインジケーターが静かに明滅していた。


「……あの子に眠り夢を仕掛ける、ということかしら。試してみる価値はあると思うわ。問題は、あの子が、いつ・どこに現れるか、よね?」


 スピーカーから流れたその声は、眠る真夢の背後で幽体離脱した彼女自身の意念だった。プロジェクターに映し出されているのは、実年齢よりもはるかに大人びた、エレガントな長い髪を伸ばせた貴婦人の姿。

 神々しいまでの気配を纏い、穏やかに微笑むその霊体は、夢を司る女神の魂を宿す存在。

 近衛・ソフィアノス・真夢は、肉体が眠りに落ちている間もなお、こうして幽体離脱の状態で会議に参加できる、稀有な体質を持つ人間だった。


「《レナタ》は嫉妬を強く持つ人間を好む、今度は現れた場所は紅さんが与えた予言を探ると分かるでしょうね」


剣崎は視線を中臣へ戻した。


「先日頼んだ、例のネット掲示板の調査結果はどうだ?」

「はい。関係者は三名です。赤星実瀬、氷川瑠織、オーディションで直接対決した二人。そして、炎上の火種を作った張本人」


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