第七話
次回で終わりです。
そして、新作を投稿となります。
「ふむ。先ほどの衝撃から察するに、海に強烈な打撃を叩き込んだというところか」
「すごいですね、そこまでわかるなんて」
今一度周りを見渡すとすごい光景だ。数にして、海兎が戦った海賊の二倍以上は居るだろう。そんな数を海兎が到着する前に片付けてしまった。
彼らならば、本当にデビルクラーケンをも倒してしまうのでは? そんなことを考えていると。
「おっと」
「なんだ!?」
突然、アルヴィス目掛けて鉄球が飛んでくる。余裕で回避したアルヴィスだが、床に転がっていた海賊達は回避することができず鉄球に押しつぶされてしまい、それと同時に甲板が崩れてしまった。
「やってくれたじゃねぇか、猫野郎」
姿を現したのは上半身裸の筋肉隆々な男。
アルヴィスから聞いた話とは容姿が違うため、ジルドンではないだろう。
「アルヴィスさん。あいつは?」
「ジルドンの右腕で、カトラという。相当な鉄球使いだと聞くが、私達の敵ではないだろう」
「言ってくれるじゃねぇか。おい、そこのガキ!! ここまで来たんなら、死んでも後悔するんじゃねぇぞ!」
一度鉄球を回収し、そのまま豪快に振り回してこちらに投げつけてくる。あんなものに当たってはただではすまない。
「任せたまえ」
先ほどは回避したアルヴィスだったが、今度は逃げずに立ち向かっていく。短剣を鞘から引き抜き、天に掲げる。
「馬鹿め!! んな小せぇ剣で俺の鉄球が斬れるかよ!!」
常識的に考えればそうだ。そんなことはアルヴィスでも理解していることだろう。それでも、アルヴィスは臆することなく短剣を振り下ろした。
「おや? 私が斬ったのは木材だったかな?」
「んなにぃ!?」
あんな普通の短剣で容易く。まるで、チーズでも斬っているかのように綺麗に真っ二つになった。
「さあ、どうするのかな? 君の武器はなくなってしまったが」
「はっ! 鉄球だけが俺の武器だと思うなよ!!」
鉄球がなくなった鎖を投げ出し、腰に装備した曲刃の剣を鞘から引き抜く。
「おやおや。鉄球とは違い随分と普通の武器だ」
「元々俺は、この武器で名の通った男なんだよ。こいつの切れ味は、てめぇの短剣以上だぜ!」
先ほどの鉄球からの遠距離攻撃とは違い、意気揚々と突撃してくる。
「海兎くん。では、お手並み拝見」
「や、やってみます」
どうやら海兎の実力をこの目で見たいようだ。海兎も、まだ対人戦は慣れていない。とはいえ、これからこの世界で過ごしていくからには、慣れておかなければならない。
一度呼吸を整え、迫り来るカトラの攻撃を。
「っと」
「ちっ!」
最小限の動きのみで回避。それには、後ろで拝見していたアルヴィスはほうっと声を漏らす。
「ガキがぁ! なめんじゃねぇぞ!!」
「なめてないって!!」
慢心などしていては、攻撃を食らう。海兎は、全力で攻撃の体勢に入る。
「らぁっ!!」
「ぐおっ!?」
再び剣で切り裂こうと振り下ろしてくるカトラに対し、海兎は拳にて反撃。刃が当たる前に剣を持っている右手目掛け叩きつけた。
武器を持っている手を潰せばどうにかなると思いやった行動だったが。
「ぐあああああ!? い、いでええええ!?」
「あ、あれ?」
思った以上の威力が出てしまったらしく、武器を落とすのは成功したが。カトラの右手が完全に潰れてしまったようだ。
これには大の男も泣き叫んでしまう。
「期待以上だ、海兎くん。カトラほどの男を圧倒するその戦闘力。見事だ」
どうやら海兎の実力は理解したようで、短剣を手に隣に並ぶアルヴィス。これは、共に戦う戦友と認めてくれた証なのだろうか?
「て、てめぇ……!」
なんとか痛みに耐えながらこちらを睨んでくるカトラ。そんなカトラにアルヴィスは容赦なく跳びかかり、頭に上に乗っかる。
「終わりだ」
頭の上から振り落とそうとする前に、短剣がカトラの頭に突き刺さった。
「……」
「どうやらまだまだ耐性はないようだね」
容赦のない攻撃に海兎は一瞬だが後ずる。こちらに来て色々と耐性がついたと思ってはいたが、これが本当の命の奪い合い。アルヴィスは、その命の奪い合いに慣れている。
確実に相手の命を奪う方法や部分を熟知しているようだ。刃に付着した血を払い鞘に収め、息を大きく吸い込む。
「ジルドン船長! 君の部下達はこの通り、始末した! さあ、どう出る!!」
右腕に加え、数十人もの部下が倒された。これでは、さすがの海賊船長でも動揺しているに違いない。残っている部下も容易には出て来れないだろう。
しかし。
《やるじゃねぇか、傭兵! そして、そこのガキ!! まさか、俺の部下達をこうも簡単に倒してくれるとは》
声を聞く限るでは、冷静だ。だが、姿を現そうとはしない。
《どうだ? 今からでも遅くねぇ。俺の下で働かねぇか? 俺が作戦を練り、てめぇらが戦う。今まで以上に儲かるぜ!! 丁度部下達の数が減ったところだからなぁ》
「こんなに部下達が死んだのに、平然と……」
「彼はそういう男だ。部下は自分が動かす駒としか思っていない」
そんな男の下で働くなど大金を積まれてもいやだ。海兎は心の底から決心した。察したアルヴィスは周りを見渡し、カトラのところへ近づいていく。腰には持ち歩き用の拡声器がついており、それを手に取った。
《ここに居る海兎くん含め、私も。当然エスティも君の下で働く気は毛頭ない。大人しく、武装解除をして投降したまえ!》
《……ちっ。これだから、傭兵とガキは。大人しく俺の部下になっていれば楽して儲けられるっていうのによ。いいだろう! てめぇらがその気なら、野郎ども!!》
ジルドンの指示が下った刹那。
目の前にあった壁にいくつも穴が空く。そこから黒い砲塔が出現した。
《俺様特注の大砲で吹き飛びなぁ!!!》
「くっ! そんなことさせ」
「心配いらないよ」
「え?」
砲撃される前に、攻撃しようとしたがアルヴィスに止められる。
《エスティ!!》
拡声器でエスティーネの名を叫ぶ。
《りょーかーい!!》
すると、それに答えるようにエスティーネが叫び、何かが放出される音が響く。
「うおっ!?」
おそらくエスティーネが放ったであろう何かが砲塔を貫く。砲弾が装填されていたようで、連鎖するように爆発していく。
《な、なんだぁ!? いったい何が!?》
「にゃははは。さすが、エスティ。見事な狙撃だ」
「エスティーネさんって、狙撃もできたんですか?」
明らかに剣士のように見えたうえに、銃のようなものはどこにもなかった。まさか魔法か?
「まあね。今頃センリくんは驚いている頃だろう」
いったいどんなことになっているのだろうと気になりつつも、気を引き締める海兎。
《ジルドン船長! それで、どうするつもりかな? 先ほどのが君の奥の手だったようだが》
《……そんなはずがねぇだろ! てめぇら! こうなったら、接近戦だ!!》
「どう考えても奥の手だったようですね」
「みたいだね。では、海兎くん。残党狩りと行こうか」
「わかりました。船長は生け捕り、ですよね?」
「うむ。生け捕りだ。では、行こうか!!」
「はい!」
その後は呆気なかった。ほとんどアルヴィスの活躍によりジルドン海賊団は壊滅した。ジルドン自身はそこまでの強さではなく、船長室へと攻められた時には抵抗はしたもののすぐに捕らえられた。




