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黒詩集  作者: ユーリ・S・イブニングムーン
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深淵

覗き込むなと言われても、覗きたくなるのが心理。暗くて、深くて、冷たい場所。


ニーチェは言った。深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いているのだと。


目が合った気がした。底の底から、もう一人の自分が手招きしている。


「こっちの方が楽だよ」


「考えるのをやめれば幸せだよ」


甘い誘惑。重力が強くなる。落ちていく感覚は、浮遊感に似ている。


底にあるのは絶望? それとも無? どちらにせよ、今のこの場所よりは居心地が良さそうだ。


引っ張らないでくれ。まだ、こちらの世界に未練があるふりをさせてくれ。

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