第09話 シズクの部屋とファバーダで本を使った転移実験!?
ファバーダから帰還したシズクは、試したい事があった。地味なシズクだが、意外と女子力が高い『愛用の日記帳』に調べたい事を箇条書きした。
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1、この世界の本を転移することが出来るのか?
2、ファバーダの本を転移させて読む事ができるのか?
3、知らない本≪読んだことが無い本≫を呼び出せるのか?
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まず、自室にある本を出してみることにした。ファバーダで転移させた……
「ジーニー英和辞典!!」
「……やっぱり、目の前にある本は無理……そう『感じて』いたけど……」
シズクはフィーナが言っていた事を思い出した。能力は『想像』と本人の『技量』に大きく比例する。シズク自身、自分の世界で自分の持っている本を転移できる気がしなかった。
次に、『図書室』にある本を転移を試みた。しかし、英和辞典と同様に転移は出来なかった。
そして、ファバーダ・ストーリを転移を試みると。
「ファバーダ・ストーリは転移出来るのね?感覚的にファバーダ・ストーリは何処かに所蔵されていて『転移』させているというより、『心の中』から取り出している感じかな……」
『ファバーダ・ストーリ』と『ファバーダの歩き方』の2冊は、存在はしているが、『物理的に……』と曖昧な『本』のような感覚だった。『ファバーダ』にもシズクの学校である『東高校の図書室』や『シズクの部屋』にも存在していない感覚だ。『ファバーダ・ストーリ』を初めて手に取ったのは『図書室』ではあった。
そして、ファバーダで1日程生活して読んだ本は『ギルド手帳』『家庭用雑貨・キッチン編』の2冊だ。『手帳』は本ではなく日記帳になるが、呼び出せれば便利だ。逆に言えば、『自分の部屋にある日記帳』をファバーダで転移出来ることにもなるからだ。
シズクは試しに転移させてみると……。
「同時に2冊とも出せるのね!でも……私から離れると消えちゃうと……実質、読むためには1冊だけかな……」
シズクは『ギルド手帳』を手に取って残しておいた。あと、ファバーダで『英和辞典を転移』させた時に気付いていたことを試しておくことにした。『英和辞典』には、『お気に入りのブックマーク』が挟まれていたからだ。
ギルド手帳に『ブックカバー』をかけ、『お気に入りのシャープペンシル』を付けて『ファバーダ』へ戻した。次回、鍛冶屋に行った時に2つとも手帳に付いていたら、こちら側の世界から『ファバーダ』へ物資を送ることが出来る事になる。しかし、『本に付ける』条件付きだが……あと、『手帳に加筆』することも出来た。機能的に制限とかはなさそうだ。
最後に『知らない本≪読んだことが無い本≫を呼び出せるのか?』だが……。
「……本を愛する者として、例え出来てもやりません!」
シズクは……『密林』でタイトルを調べておいて、『ファバーダ』で転移出来るのではないか?
『密林の倉庫にはある!』……絶対転移出来ると確信していたが、『倫理』……『真理』であり、『禁忌』である!
シズクは『グッ!』っと握り拳を作り、この物語最高のドヤ顔をキメていた!
「あら?シズク、また小説の影響で『高3病?』だっけ?大変ね」
シズクの母親が知らない間に部屋のドアを開け、シズクの部屋に立っていた!?
「って!『厨二病だよ!』あと、私、まだ『高一』だから!あと、勝手に部屋に入らないで!」
「さっきから夕ご飯って何度も呼んでたわよ!本に集中すると全然聞こえてないでしょ?速く来てたべて!」
明日も学校があるので、ファバーダの事は一旦保留としておくことにした。次はファバーダ側へ行って、『試したいことが』沢山あった。
具体的には、本を介して『シズクの部屋』から『ファバーダ側』に荷物が送る実験をしたいと考えていた。自分で作った『本』の形をした収納BOXを異世界へ転移させ、あちら側で便利グッズが使いたいからだ。
一番重要なことだが、『再びファバーダへ転移』するには、『転移出来る時間か・リキャスト時間』の概念があるようだ。シズク自身、既に何回か試みたが、『ファバーダ・ストーリ』を呼び出せるが、『転移』は出来ないようだ。あと、シズクは『転生』ではなく、一連の現象を『転移』とすることにしたようだ。本当に『転移』なのか『ただ幻覚』を見ているだけかは定かではない。
今判って居る範囲で『転移するときは任意の場所と時間』『リキャスト時間がある』『同世界にある本は呼び出せない?』だ。本に関してはイレギュラーがあり、『ファバーダ・ストーリ』と『ファバーダの歩き方』はどちらの世界でも呼び出せる。もしかすれば、同2冊は『別の異世界の本』なのかもしれない。
まずは、色々とシズクの部屋の本棚に仕込んだ『本』を『ファバーダ』へ行って実験してみることとした。彼女の予想では、『本であれば』『転移可能』なはずだ。
――そして……一番重要なことも……
――フィーナは言っていた、『ここは異世界の人が多く来る』と。