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本の世界の鍛冶士 柊シズクの物語  作者: 川崎タイチ
風の移動要塞・カーハツヴァイ エルチェの物語編
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第79話 禁忌を犯した者とドールマスター


 ドールを一体錬成するだけの材料は十分に揃っていた。

 ちょっとご都合主義だと私は感じていた……。

 目の前には心桜こころが努力した結果24体分のドールのパーツがある。


 ――心桜こころ想いが24分割されている状態だ……!

 不思議な事は、心桜こころが『子供』になっている事だ。

 私とナキ達のセカイでの心桜こころは、『七海のお母さん』だからだ。

 仮に、100年前のアローナだとしたら、心桜こころは100年以上生きている?


 ……っシズクは想っけど、よく考えたら、時間の経過に差異がある。

 詳しく計測したわけではないが、大けがを負った『花梨かりん』の今の年齢を聞けば判る……?かとも考えたが……やはり矛盾が出る。

 私の『本』能的に感じた差は、3年程だと想った。


 ――言うより、花梨かりんが倒れていた小川の近所に『第2大門道開通!』と明記された看板が掲示されていた。

 奥の院へ続く第2大門道開通して3年経過していた。

 私がバイクに乗り出してから2年経っているので間違いない。

 東高校の制服を着ている花梨かりんは、高校1年になる。

 生徒会長である日花梨ひかりと確か同学年だったはずだ。

 私がまだ中学3年生の時だった。


 ――小説家・柊シズク……私のノンフィクション作品が店頭に並んで爆売れ状態の時だ!

 翌年、ICUで大賞を取り一躍有名人になる前の事だ。


 私はこの時はまだエルチェをお迎えしていなかった。


 ――あと、何故か……『エルチェをお迎えした時』の記憶が若干不明瞭だった。


 私がエルチェをお迎えしたの時の事はこの際保留しておくけど……。


 ちなみに、このセカイ……ファバーダでのドールは『パペット・ドール』と呼ぶ。

 ――操り人形……でもない。操れる人間……ホムンクルスだ!


 そして、エルチェは……。

 ……ドール……ドールだった!

 そう、アルハンブラのカサ・ミラはどちらかといえば、『ホムンクルス』に近い。

 何より……彼女たちの素材が……。


 ――人体――。


 だけど、エルチェは違った。

 触った感覚はまるで人間のようだったけど、素材は『木』に近い素材だった。

 温かさがあって、かつ、柔らかい。

 それが、『アルゴートン合金』……。


 ここにいる心桜こころは、『人体ではなく純粋にドール』を設計と開発を実行している。

 私は、彼女の想い……きっと彼女は『元・大人』の心桜こころさんなんだと。


 もしかして……輪廻転生して子供に?

 って考えたけど、いくら何でもぶっ飛び設定崩壊だよ。


 なら……。


「ねえ……心桜こころちゃん……」


 私は……怖い……聞くのが……でも確かめないと……。

 24体のドール達、この人体に模した素材『アルゴートン合金』が出来たカラクリ。


「転移して……100年……時間を観測出来てたらだけど……」

 いくら何でもデタラメだけど、ここが100年前のアローナであり、100年後のアローナであるなんて。


「……そう……かも……」


 100年生きて10歳位に退化!?

 あり得ない……けど、あり得る……!

 だって……ナキちゃんも心桜こころちゃんも……。


 ――神様だもの――。


「シズクさん!どういう事!全く……わかんないです……」

「ここが、未来であり過去であるアローナ!そして、心桜こころさんは10歳位になっちゃった!?」


 ナキちゃんが疑問に想うのも無理もないと想う。

 ここは多分……。


「うーん、ナキちゃん『エルシュ』を誕生させて『花梨カリンちゃんの名刀幸村』をここで作らないとダメって事に繋がるの」

「……と言う設定……いや、ストーリね」

「このセカイ、『心桜こころ』ちゃんが禁忌を犯したせいで設定崩壊が起きちゃっているんだと想うんだ」


 そう、心桜こころさんが犯した禁忌……ドール錬成。

 神様なんだから問題無いって……想いそうだけど。

 神様だからだと想う。


 ――『神』なんだから『人』を作れば良い。


心桜こころちゃんは『人』ではなく『ドール』を創造したからよ」

「……気持ちは……痛いほどわかる」


 我が子の七海ななみと親友の双葉ふたばの想いを紡ぎたかったんだと。

 人の器に2つの精神を宿せるなんてあり得ない。


 ――二重人格とは違う。『2人の人間が1つの器』に入れるって事。

 だからか……ドールの合成に失敗する。


 ――失敗する?

 私は成し遂げていた?


「そっか……私は出来ちゃうんだ……ナキさんの時のコーヒー……2つの精神の付与……」


「私のコーヒー?……コーヒーなんて苦いだけで美味しくないですし、嫌いだし、飲まないですよ?」

 ――え……!

「って!ナキちゃんコーヒー嫌い!?」


 ビックリだ!ナキさんが聞いたら驚愕する……まさかナキちゃんのおばあちゃんのお気に入りコーヒーセットを私が『再付与うちなおし』した事がきっかけで引退して『ナキサワメ世代交代』になってしまった事。

 

 厨二病を小五で発症して『ブラックコーヒー』キメながら小説書いていた私とは考えられない!


「現実問題、コーヒーよりミカンジュースの方が美味しいですよ」

「なんせ私ん家って『有田ミカン農家』でもありますから」

「コーヒーとタバコを飲むきっかけなんて『厨二病かヤンキーのカッコつけ』ですよ」


 小6の少女が『厨二病とヤンキーを爆死させる』説法を説いた!

 ……神が説法とかないで!

 確かに、『コーヒーよりミカンジュースの方が美味しい』です。


 ……小説書くときは無理してブラックコーヒーをキメて書くのは未成年の間は辞めよう。


 まず、整理するけど。

 100年かけてドールが完成できなかったのは『2つの想いを1つに紡げない』。

 神様なのに『ドールを錬成』しようとしたこと。

 

 逆に言えば……。


「パーツは全部揃ってる……頭部以外」


 そう、肝心の頭部が創造出来ていない。

 このドールを完成させるためにはまず。


 ドールヘッドの製作。

 衣装の製作。

 関節部位のリレーション。


 ……が必要になる。


 ヘッドも衣装も難しいけど、私自身は今まで製作しているから大きさだけの問題。

 一番の難関は『関節部位を繋ぐ』事!

 例えば、『ホムンクルス』なら関節は外に飛び出している事は無い。

 当然、体の構造は『人間』と同様の構造体だから。

 しかし、『エルシュ』は『純粋なドール』なので骨格で構成する必要がある。


 ここで『リアル志向ドール』と『キャラクター志向ドール』とでの違いがあって……。

 セカイ的に有名な球体関節ドールは、『球体の関節』に『ヒモ』を通して連結する。

 一方、『キャラクター志向ドール』は、『骨格構造』……腕や脚、胴体が一体となって自立する仕組みになってる。

 逆に言えば、『リアル志向ドール』は自立が通常カスタムではできない。


 そして、このアローナの鍛冶工房……心桜こころが製作したドールは、『リアル志向ドール』になる。


心桜こころちゃん……この子達を1つの子にするのに『骨格仕様』ドールにしちゃダメかな?どうしても『リアル志向ドール』にする『必然』があるなら、リアル志向ドールで構成するけど……」

「それだと、この子の想いを紡げないの……私だと」


 そう、材料は全て揃っている。

 ただ……構造が『リアル志向ドール』なので『キャラクタードール』にする必要がある。


 リアル志向のドールたちは『ヒモ』を使って関節部位を通し、一体とする。

 それに対してキャラクタードールたちは『骨格』具体的には、『背骨』などの素材がボディーの中にある。

 骨格があるお陰で『ポージング』を取ることできるのだ。

 だから、キャラクター志向のドールはよりそのキャラクターの個性あるポーズを取って静止させることが可能だ!


 ファバーダでも骨となる部分をドール体内に形成して創る事が出来れば、より柔軟でかつ素早い動きが可能になるって考えた。

 リアル志向だとどうしても『ヒモで関節を結ぶ』関係で各関節部位の動きが全体に及ぼす影響があるかなと……。


 素体全体を『アルゴートン合金』で統一してエルシュ<エルチェ>を完成させる!


 等身大ドリフィードリーミー制作を開始しよう!


 ――チロリン!チロリン!

 と、丁度いい、ご都合主義的なタイミングで鍛冶工房のドアが開く音がした!


 何処か見覚えのある女性が鍛冶工房に入店する……。

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