第51話 龍神に挑む者②
シズクが七海の家から帰宅してから……。
正確には心桜からのSNSのメッセージを受け取ってから眼の調子が悪かった。
――色が少し欠けている……戻らない?
気になる事はもう一つある。
――エルチェが返事がしない?
エルチェが機嫌を損ねたのだろうか?
心桜と会って楽しげに話していた事がエルチェにも伝わったのか?
――一番会いたかったのはエルチェだ。
だが、エルチェは心桜と『会話』どころか、『会う事』・『観ること』すら出来なかった。
シズクは『本』能的に考えて、『カーハツヴァイ』に解があると考えた。
心桜の導き通り、『龍神』から『カーハツヴァイ《高野山》』へアタックする事にした。
――そして……土曜日の朝……。
朝という定義だが、『起きた時間』が朝である!
新聞配達員のバイクの音が『闇夜』……『朝』……。
……『早朝』に響く朝、シズクは新型のバイクをガレージから引き回していた。
心配していた『色』は戻っていた。
しかし……。
――エルチェと会話できなかった……。
シズクは『本』能的に察する……。
「虎の尾……踏んだかな……」
――シズクは『ファバーダストーリー』を取り出す……。
――シズクは『風の鍛冶士の証』を取り出す……。
――シズクは『シルフィード・ソード』を取り出せた!!
「……エルチェの剣……」
シルフィード・ソードはエルチェが持っている剣だ。
「……冷たい……風の属性なのに……凄く冷たい……」
シズクは……少し涙を浮かべる……。
シルフィード・ソードは氷のように想いが冷たかった……。
「きっと……嫉妬の報いかな……」
シズクは明るく振る舞っていたが……。
「エルチェは……私が生みの親だから……」
シズクは嫉妬していた……。
「エルチェの生みの親が……心桜さん……」
シズクはエルチェが心桜に『逢』いたがっていた想いに……。
――嫉妬していた。
「私は……シルフィード・ソードを紡いだとき……」
「エルチェの幸せを護る為に『風の想い』を紡いだ……」
心桜と逢って喜ぶ姿を観たくなかった……っと。
『本』の1ページ想ってしまった報いを受けた。
「悔しい……悔しい!なんで!私!!」
――シズクは察していた……。
その『本の1ページ』にエルチェは取り込まれた――。
「行くしかない!!カーハツヴァイへ!!」
シズクは『新車のバイク』のチタン製タンクをサラッとなでる……。
「エルチェの為だ……」
――シズクは決心する。
「出来ると解っていた……けどやりたくなかった……」
――シズクは『風の鍛冶士の証』を胸元に付けた。
シズクはバイクに『シズク自身の想い』を紡ぐ……。
「我が愛馬よ……風と共に生き……我と共に走り……」
――シズクは買ったばかりのバイクに属性を付与する……。
――シズクとバイクの周りに『風の想い』が集まる……!
「我が想いの『翼』となり共に駆け抜けよ!」
「CBR1000RR!!エルチェの想い紡ぎに行くよ!!」
シズクは買ったばかりのバイクに『風の精神』を宿した――!
――シズクはシルフィードパーカーを取り出し纏う。
シズクはギュッと握りこぶしを作る――!
「私……絶対これしたくなかったんだよ!」
――シズクは奮起する!
「だって……でもファバーダの……カーハツヴァイへ行くためだ!」
シズクの本心は『自分達のセカイ』で精神の力でチートをしたくなかった。
さらに言えば、『オートバイ好き』なら尚更だ……!
買ったばかりで『走行距離0km』なら尚更だ!
「行こう!エルチェの本へ!!」
シズクは『キー』を指す……!
キーを回すとバイクの液晶パネルに『文字』が浮かび上がる。
そして……。
ユーザー名が『ERTYA』と書かれていた!
シズクは涙を……また浮かべる。
「なんで……設定もした覚えもないのに……」
エルチェなら『ERUTYE』だが、『ERTYA』になっているのはシズクがアレンジしたからだ。
シズクは右手で涙を拭い、セルボタンを押した!
――セルの回る音が軽快に響く!
エンジンが始動し、4気筒の滑らかな音を奏で出す!
「よし!行くぞ!まずは龍遊だ!」
――シズクはサイドスタンドを振り払った!
左足で1速に入れ……!
シズクは龍遊目指して走り出す――!
――『カシューン!!』
豪快にエンストをキメた!!!
シズクはCB400SBと同じように発進しようとしたが見事にエンストした!
「って!!!アクセル開けないと発進できないの!ボルドールなら出来るのに!!」
「アイドリングのトルクがスッカスカじゃない!!」
「重量4kg軽くて馬力が4倍よ!!」
――シズクは龍遊に向けて発進できなかった!
――少しもたついたが、無事龍神へ向けて発進できた。
軽快に高速道路を目指し『東高校』を目指す。
丁度、高校の隣にICがあるためだ。
最近では、ナキサワメ……『沢村ナキの家』に行った時や『ミカのカフェ』にも行ったときに利用した道だ。
ナキの家同様に有田インターを降り……。
そして……ライダーズカフェ・バグダッドが見えてきた……。
「よし……後ろよーし!」
シズクは後方車を気にしているようだが……?
「魅せて貰おう……!君の戦闘能力を!!」
バグダッドを過ぎた瞬間――!
◇
――ごまさんスカイタワーに到着した!
「異世界3大ダンジョンの『ごまさんスカイタワー』にこんなに速く着けるなんて……」
異世界3大ダンジョンとは……。
――クリスタルタワー《並》!
――ダルダンティスが最上階で待つ王城≪鬼畜≫!?
――そして、ごまさんスカイタワーだ!!!!
「さすが、風の精神の力……やるわね……」
――シズクは風の精神を使わないで攻略した!
「さて……ここからが本番……心桜さんに教わった通りなら……」
シズクはガーディアンドラゴンとの戦いが始まる――!





