第47話 風の移動要塞・カーハツヴァイの人形師③
シズク達はエルチェの創造者の『心桜』を訪ねる事になった。
「ねえ……七海ちゃん。心桜さんに逢いに……」
「……ここって、高野山だよね?」
シズクは確かに『ファバーダ』からカーハツヴァイへ来た。
だが、カーハツヴァイは高野山そのものだった。
――高野山とは、和歌山にある『天空の街』の事だ。
シズクの問いに七海ではなく、花梨が答える。
「……ふむ……。その前にだが……今日は心桜さんには会えん……」
花梨は先程心桜に会いに行くと言っていたが……?
「あ……心桜ちゃんがココに来てないのね」
七海は納得したようだが?
「でも、朝一番でH2で出かけたと思うけど?」
――H2?とは?シズクは……。
「って!まさか『龍神の主!?』なの!」
シズクはH2を知っているようだ……!
「……高野山……どうなってるの……」
「あり得ない……あり得そうだけど……高野山なら……」
シズクは信じがたい事実を突きつけられたが、『藤波神社のナキ』や『熊野本宮大社のミカ』の前例がある以上……。
「でも!規模が大きすぎない!?」
カーハツヴァイ……高野山そのものが異世界と繋がっていた。
「……ふむ……シズク……?とか言ったな?」
花梨はシズクに名前を訪ねる。
「はい。柊シズクです……花梨さんも『東高校』の学生なのですね?」
花梨の制服を観ると、『1年生』のリボンを付けていた。
「私、2年の柊です。『図書委員』をしています」
「七海ちゃんとは2年からのクラスメイトです」
シズクは念のため年下ではあるが『丁寧語』を使っておく事にした。
「……!?」
「……シズクよ……私はシズクより年上だ!決して1年生ではない!」
「……卒業後も制服を着ているのだ!」
シズクは花梨を観て、『自分より年下』だと認識したが……?
花梨は卒業生のようだ……!
そして……。
シズクは七海に『花梨とは知り合い』なのか考えた。
「……うむ!七海とは『水槽楽部員』として共に戦う仲間だ!」
――アクアリウムなのに何故戦う!?
「って!私……なにも言ってないですが……」
少し驚いた表情をしたシズクに七海が説明をする。
「シズクちゃん……花梨ちゃんは『心を感知する』能力を持ってるの」
シズクは軽く混乱する――。
……が、『本』能的に……。
「ファバーダ・ストーリー!」
シズクは転移を試みる……!
本は呼び出せたが……。
「……ふむ、転移出来ないぞ?シズク」
「……その『本』でシズクは止む事無きセカイから来たのか?」
「……ここ、高野山は『セカイが1つの泉となる地』だからな」
花梨はセカイの理をアッサリと明かした……のか?
「花梨ちゃん!端折りすぎ!」
「シズクちゃん……まあ、高野山だからね……」
――七海は花梨の説明に付け加える。
「私たちは『輪廻』側なの……正確には、花梨ちゃん側?」
「そして、シズクちゃんは……『紙一重のセカイ』側……」
「シズクちゃんは知恵があるから『二律背反』って表現した方がいいかな?」
「私はどちらのセカイにも干渉できるし……、できない……?」
「うーん……どう説明したらいいのかな?」
七海自身、自分の存在について今ひとつ掴めていないようだ……!
「まあ……異世界転移出来ると仮定すると……」
――仮定ではなくシズクは出来てしまうわけだが……。
「ここ高野山に入ると、どのセカイとも繋がっているお陰で、『転移が出来ない』わけ」
「転移先と転移元が一緒だからね」
「正確には全然違うんだけど……」
「……ふむ、シズクよ。要約するとココは『セカイがチャンポン状態』なのだ」
「……だが、七海は『どのセカイの干渉を受けない』『ゼロディバイド』なのだ!」
花梨は七海の事を自慢げに紹介した!
……シズクは『本』脳的に答える。
「うーん……?七海ちゃんは無限大の可能性を秘めた存在ではあるが、『不定・不能的存在』」
「可能性は無限にはあるが、七海ちゃんに頼ることは『このセカイの理において禁忌』である存在って事?」
――シズクは『右手が暴走』しそうな中二病的解釈を――。
「って!さすがシズクちゃん!『ゼロディバイド』の単語で『ゼロ除算』の意味を取り入れて『異世界風にアレンジ』する解釈を……やるわね」
「でも、大体『合っているといえば合ってはいる』『私=異世界÷0』って事」
七海はシズクの直感を素直に褒めたが……。
七海とシズクのやりとりに花梨は……。
「……何を言っているかわからん!とにかくだ!七海は『ゼロディバイドなのだ!』」
花梨の言い分もある意味正しい。
七海と花梨の言いたいことは『理解』した。
ゼロで割ったらダメなんだよって事だが、『異世界』とは『÷0』との事になる。
――『訳が判らん・説明が出来ない』ということだ!
しかし、七海は改めて自分の事を説明する。
「私は……『物語の主人公になれないって事』だね」
「そして、ここ高野山は『神様仏様なんでもOK!』でもあるの」
「ところが、シズクちゃんは異世界へ転移した状態で高野山に来た」
「当然、そのまま来ると高野山……ではなく異世界なんだけど」
「シズクちゃんには時間軸という概念があるから変になったのかな?」
「だから、シズクちゃんとエルチェちゃんには『時』の差異があるのかな?」
「うーん……?ちょっとちがうかな?時間の無いセカイに『時間』持ち込んじゃった系?」
――なんだその『女子高生的』発想は!っとシズクは思ったが、『女子高生』だった。
「でも、ここ高野山は『時の概念』があるセカイなの」
「だから、シズクちゃんがここに来ると『時が動く』って事になるのかな?」
東高校で二番目の美少女が『中二病的痛々しい事を語りだした』が、『シズクがファバーダに転移する』と『転移元であるセカイの時間が停止する』『理』が――。
「……ごめん……七海ちゃん頭痛い……」
さすがの『本』脳でも難しかった……!
「時間が何で止るか?って事は何とか判った……」
シズクはセカイの『七不思議』はとりあえず放置して、本来の目的を優先することにした。
「それで、心桜さんに会いに行くには?どうしたら良いのですか?」
「……ふむ、場所的には『高野龍神スカイラインの真ん中にある鶴姫公園の頂上』だ!」
「……そこから『風のレリクス最深部』を経由して『星空の間』へ行き……」
「……『カーハツヴァイ・双翼のガーディアン』を倒して『人形士の工房』へ行くわけだが……」
――ほぼラスボスステージでした!
さすが、高野山全てが移動要塞だけのことはあった。
「……ただ……もっと簡単に行く方法もあるが……」
花梨は七海の方に目を向けた。
「ん?私の家に来ればいいよ?」
――とんでもない事を言い出した!
「だって、心桜ちゃんに会うだけのならそれが一番簡単でしょ?」
――それ言ったら……?
「それだと、エルチェが会えないんじゃない?」
シズクの言い分も正しいが。
「『ドルフィードリーミ』のエルチェちゃんを連れてくれば普通に会えるよ?」
「ただ、それだとエルチェちゃんと心桜ちゃんは直接は会話出来ないけどね」
良いか悪いかのは判断は付けられないが『会う事』に関してはクリアー出来る。
「じゃあ、私達、一度工房に戻ります」
「心桜さんへは『輪廻側』に戻って会いに行きます」
シズクは『説明しやすい』ように、シズク達のセカイを『輪廻のセカイ』と定義した。
シズクとエルチェは『工房』にひとまず帰る事にした。





