第45話 風の移動要塞・カーハツヴァイの人形師①
小さいながらもシズクとナキの活躍で『港町アローナ』の公共施設が発展した。
シズクは街灯完成から『数回の転移』を繰り返して工房のパワーアップを模索していた……。
シズクの工房はナキとの契約により大幅に改修されて以来、現状維持状態だ。
「うーん……意外とこのセカイ……平和だね……」
街に暴君な王子様のが乗り込んできたり、モンスターに蹂躙される展開も起きない。
シズクが鍛冶士としてアローナの街で営業をしていることで、日用雑貨類も滞りなく『再付与』が行われていた。
シズクはソファに腰掛け、ノンビリと『ファバーダの書籍』を読んでいた。
文字に関しては不思議な事にファバーダに転移されてたら解読できた。
読書と合わせて、異世界での経験を生かして『異世界転移もののライトノベル』を書くことにしていた。
プロットを書くために、『シズクの世界の自室から』メモ帳を呼び出し、プロットを考えたりしている。
ノンフィクション作家である『柊シズク』先生の新作だ。
時折、工房の窓から港側を覗くと、街の住人とエルチェが『何やら慌ただしく』作業をしていた。
エルチェの気合いの入り方がかなり離れている工房まで伝わってきた。
エルチェは早朝より何から落ち着きがなかった……?
港の桟橋に多くのロープを引き出していた。
アルハンブラが来たときよりかなり大規模のようだが……。
――どうやら『移動要塞』が入港するようだ。
シズクは数回の転移する間に『中規模の移動要塞』を幾度か経験していたが、『各街に鍛冶士』が存在したせいかシズクの工房へのお客は少なかった。
入港には最盛期があるようで、出港するとその翌日には入港を繰り返していた。
シズク達の功績で夜のアローナでの活動範囲が広がったお陰で『宿屋ラパン』は大盛況だった。しかし、大繁盛のお陰で『宿屋ラパン』で食事が取れなかったが、しばらく冒険者に同行していたフィーナが戻ってきていた。
シズクはフィーナの手料理のお陰で食生活は問題なかった。
フィーナが戻ってきたお陰で、『協会の子供達』が一番喜んだだろう。
孤児院も併設する『協会』ならではの出来事だ。
のどかな雰囲気でシズクは『希望通りのノンビリ生活』を送っていた……?
……読書している本のページをめくる……。
『――ズドーン!!!!』
――大きな振動でシズクはソファーから吹き飛んだ!!
――街の屋根に止っていた鳥たちが一斉に飛び立つ!!
「な、なに!!」
シズクは衝撃がきたであろう方向……港を工房の窓から見ると……!
とんでもなく大きな謎の物体が水面すれすれで浮いている!
「なんだありゃ!!」
工房の窓を開け身を乗り出し全体像を見ようとしたが……!
見上げて見たが、浮遊物体の底しか確認できなかった。
――バターン!
勢いよく工房の扉を開け、エルチェが戻ってきた。
「シズク!カーハツヴァイ!!カーハツヴァイが入港した!!」
エルチェは興奮してシズクに飛びついてきた!
――飛びついてきたエルチェのパワーで窓から落ちそうになった!
「おーとっと!シズクが落ちちゃうとこだった!」
「で!カーハツヴァイ!!来たよ!!!会いに行こう!!『心桜』ちゃんに!」
シズクはエルチェが言う『心桜』とは誰かは知らなかった。
「ココロ?さん?って誰?」
――当然の質問だ……が、シズクは感づいている。
「このセカイで私を創ってくれた創造主!それが心桜ちゃん!!」
「カーハツヴァイはホント凄いよ!」
空を飛んでる時点でとんでもなく凄いが……。
「普通に……ラピュ……だけど!ちょっと大きすぎない!?」
アルハンブラよりさらに大きい移動要塞のようだが……。
シズクはアローナの港にある橋と連結されている道をよーーく観察すると。
……見覚えのある看板が……。
星のステッキを持つ三本の毛が生える……妖精が描かれている。
そして……。
「あの看板……標高634って書いているよう……に見えるんだが……」
シズクにとってとてもとても見覚えのある看板が建てられていた。
「あり得ない……けど、『あの街』なら……あり得るわ……」
「アルハンブラの浄水釜にあるレリクス最深部が繋がってたんだからね……」
シズクはレリクス最深部で見た『井戸』の事を思いだしていた。
レリクス最深部にあった『ナキサワメ』が暮らしていた場所と同じ現象だからだ。
――但し、規模が半端なく違った――。
「シズク!ミアスでカーハツヴァイへ行くよ!」
シズクが見入っている間に、エルチェは工房の二階からヘルメット風の帽子を二つ持って来た。
――うやむやにして『借りパクしたミアス』に乗車する為か?
「ミアス乗るのにヘルメットいる?」
当然、異世界であるからメットの着用は必要ないが……?
「ううん、カーハツヴァイはメット着用しないと!警備隊に逮捕されるわ!」
警備隊とは……?
――すんなりとカーハツヴァイに入国出来るのだろうか?
「って!エルチェ!手ぶらで良いの!?」
シズクはヘルメットのみ装備してエルチェに問う。
「あ!鍛冶士のブローチは堂々と付けてね!『アローナの鍛冶士』なら『ダイアモンド地区領』も顔パスできるから!」
「あと、心桜ちゃんの『ワークスペース』は、ちょっと街外れにあるからね!」
急かすエルチェに押される格好で、シズクはカーハツヴァイへ行くことになった。
何も準備はしてないが、『鍛冶士のブローチ』は胸元に付けた。
◇
シズクとエルチェはミアスに乗車してアローナの港へと向かう。
道中、カーハツヴァイへ向かおうとする者、そしてカーハツヴァイから降りてくる『スキンヘッドの集団』をシズクは『冷や汗をかきながら』ジト目で見ていた。
「エルチェ……どう見てもあれは『僧侶』だよね?」
「僧侶というより、モンクさんだね!『ベ〇マズン』つかえないからね!」
シズクはそれは判っている。
シズクが言う僧侶とは『夢想阿修羅拳』が使える方だ。
そもそも、RPGゲームの僧侶だったとしても『ベ〇マズン』は使えない。
あえて言えば……『ザ〇ラル』は使えるかも知れない?
修行僧達がアローナに買い出しに行くのを横目に坂道を昇っていった。
そもそもだが、『アスファルト』の道路を走行している時点で違和感が半端ない。
カーハツヴァイの街に近づくにつれ道路標識に『大門』と書いている。
「エルチェ……どう見ても『大門』って書いてあるよ!」
シズクは見間違いするはずがなかった。
「何言ってるのシズク!『マスターゲート』って書いているよ!」
……エルチェは見間違えるはずがなかった?
シズクはマスターゲート……ではなく、『大門』前にミアスを停車させ……。
「エルチェ!やっぱりここ……『高野山』だよ!見間違えるはずがない!」
シズクは『高野山・大門前交差点』に立っている!
「シズク……寝ぼけているの?『カーハツヴァイのマスターゲート前』だよ!」
エルチェは『カーハツヴァイ・正門前』に立っている?
シズクが観ているセカイとエルチェが観ているセカイ……。
二人のセカイが乖離する……!





