第25話 ナキと神社とシズクの鉄馬
シズクは『図書室』へ戻ることが出来た……?
急いで図書室の受付カウンターに走り、鞄の中からスマートフォンを取り出した。
時間を確認すると……。
――『16:41』
転移前の時間にピタリと戻ってきていた。
シズクは、転移前に『ストップウォッチ』のアプリを起動しておいた。
――『経過時間……5分』を回ったところだ。
やはり、ファバーダに転移している間は『自分の世界』の時間は停止するようだ。
もしくは、『転移前の時間に戻ることが出来る』とも考えられる。
――但し……。
「……今回は疲れた……」
時間は消費されないが、『体力と精神力』は大幅に消費される。
正確には、活動した分きっちりとステータスゲージが消費された感覚。
シズクは戻る事ができて安堵した。
フィーナの雰囲気が『ザラッと』した感じがした。
2日以上『ファバーダ』で生活した疲れを癒やすためにすぐに家に帰る事にした。
図書室の鍵を閉め、自転車置き場へ向かった。
自転車置き場に到着すると、丁度『生徒会長の神畑 日花梨』が帰ろうとしていた。
特に関係を持ったことが無かったシズクは、軽く会釈をして通り過ぎる……。
「うーんと……シズクちゃん……だったかなかな?」
独特な言い回・語尾をする日花梨だ。
「あ!はい?あのう……どうかしました?」
3年生である日花梨とは繋がりが特にないが呼び止められた。
強いて言うなら、『水槽楽部の七海さん』繋がりだ。
シズクと七海とは『ある共通の趣味』があった。
七海と日花梨会長は『同じ生徒会役員』でもある。
「ナナちゃんから……さっきだけど、シズクちゃんが気になる……って」
「聞いたんだねだね?」
「シズクちゃん的には……2日程前の話かなかな?」
……笑顔がステキな日花梨が……この雰囲気……。
――フィーナ似ている。
雰囲気とかではなく……肌触りが……。
シズクは『本』脳的に察した。
――タイミングが良すぎる。
――しかも、ファバーダで過ごした時間を的確に当てた。
そして、日花梨はシズクに……。
「うーん……ナキちゃんの家に訪ねるなら、ワッフルをお土産にね!」
「きっと喜ぶよん!」
シズクは言葉が……出ない……!
何か察して『警告』を受けるような感じだったが……?
「あのう……ナキさんは……」
異世界にいるナキサワメの存在を日花梨は知っている?
会いに行くには、ナキから貰った本を使って行くのか?
「ナキちゃんの家は、つい最近までは『橿原』にあったんだけど」
「今はお引っ越しして、藤並神社に住んでるよん!」
「あ、正確には、『藤波神社の前にあるタバコ屋』でタバコ売ってるよん」
「タバコ屋さん訪ねてね!」
日花梨が的確にナビアプリで場所を教えてくれた。
その後、日花梨はシズクに笑顔で手を振って帰って行った。
一人になったシズクは、ナキサワメについてネットでサーチしてみると……。
「存在している……神様……なのね」
ナキサワメの情報がインターネットに乗っていた。
……安産……井戸……再生の神……。
アルハンブラの浄水釜で会った『ナキ』をイメージする由来を閲覧できた。
浄水釜……再生……アルハンブラでみた……井戸……。
――会いたい!
日花梨が言うとおり、この世界にナキがいるなら会いたいと願った。
都合良く、明日は『土曜』だ。
場所は判った。
――しかし、問題が一つある。
「遠いかな……私の家から50Kmはあるかな?」
「電車とか……バス……無いよね」
「さすが陸の孤島!!」
普通の女子高生なら自転車で50km走って行くことはない。
「まあ、1時間位でいけるかな?」
シズクは電車もバスも無い50km先にある神社に行く手段を持っているのか?
学校からは自転車をこぎながら家へと急いだ。
◇
シズクは帰宅するとすぐに確認したい事があった。
自分の部屋に戻りチェストの上に置いているエルチェを見ると……。
――エルチェとシズクで合成した『シルフィード・ソード』を持っていた!
ファバーダで着用している服と一緒の格好に変化していた。
――シズクは『パッ』っとスカートをめくり、『パンツ確認』をした!
変化無しのようだ……!
「――って、帰ってきて早々『パンツの確認』!?どうかと思うけど……」
「おお!喋った!!」
「――喋ってないよ!ファバーダの時同様で心に直接話しかけてるだけ」
「お話……出来ちゃう系?」
「――心で会話した方がいいと思うよ?」
「――間違いなく『アブナイ』人だから!」
シズクはドアの方を見た!?
……今日は母親の乱入は無かったようだ……!
「まあ、でも、部屋でいる間は声に出して話しても『電話』しているみたいな感覚?」
「――気をつけてね……外ではちゃんと心で会話してね」
シズクは『ドールの声が聞こえる危ないお友達』になった!
……シズクはここで一つ疑問に思った。
ファバーダにエルチェを連れて行くとどうなるか?
「――連れてきちゃダメだからね!」
「何故判る!?」
「――いや……マスターだから……!」
「――この流れ飽きたから!」
シズクとエルチェの関係は、ローズのドール達と同じ扱いに辿りそうだ!
「――それで、明日なんだけど……」
「もちろん!明日も行くよ!」
シズクは即答した。
しかし、エルチェは少し間を置き……。
「――シズク、明日はナキサワメに会いに行って」
「そして、水の……いや……シズクなら行けば何とかなる」
エルチェは『何か』知っているような話しぶりをした。
「とにかく、明日会いに行けばいいのね?」
シズクはナキサワメを祀る神社が存在することに『偶然の一致』とは思えなかった。
ナキサワメのよくある話の本を読んでおくことにした。
熟読すると、『インターネットの情報』とほぼ同じ内容だった。
……ただ……。
シズクは『最終ページを開く』事は自重した。
――間違いなく、異世界転移しそうだからだ。
地球時間では殆ど進んでいないが、『ファバーダ』では数日過ごしている。
体力と精神の浪費もあるが……気持ちの方が疲れていた。
シズクにとって『とても長い1日』が終わった。
地球時間では2日しか進んでいないが、ファバーダとの生活を合わせるとかなりの時間を過ごしたことになる。
◇
翌日、シズクは朝6時に起き、ナキサワメが祀られる神社への出発の準備をしていた。
「――シズクって本好きでドールオーナーでインドア根暗タイプなのに……」
「――ほんと意外だよね?」
エルチェはシズクの準備している様子を見ながら指摘した。
典型的優等生タイプのシズクだが……。
実際、学校の成績は常に二位だ。
唯一勝てないのが……水槽楽部の七海さんだけだった。
「――シズク、今日は一人で行くよね?」
「――もしかして、七海と一緒?」
「ううん、一人で行くよ。行った先で『異世界とリンク!』とかだと言い訳も難しいし」「でも……七海さんなら『そつなくこなしそう』だけど……」
「よし!準備完了!エルチェも『乗せていく』からね!」
シズクの格好は『かなり厚めのジャケット』と『プロテクター入りのジーンズ』姿だ。 シズクはクローゼットから『オシャレな筒状の鞄』を出した。
エルチェも同じく『ジャケットとジーンズ』と『ヘルメット』を着せた。
そして、エルチェを鞄に入れ部屋を後にした。
家のガレージに移動したシズクは、文系っぽいメーカーのシャッターを上げた。
エルチェが入っている鞄をシートバッグに乗せ……。
「――いつも思うんだけど……私にヘルメット被せる必要ある?」
エルチェの言い分も一理ある。
鞄に収納している状態でヘルメットを被る必要があるのか?
「そこは……こだわる所でしょ!」
シズクなりの拘りを見せているようだが、エルチェは不満らしい。
シズクは小さい体で『自分の体重の4倍』はある物体を器用にガレージから出した。
シャッターを閉め、ウェアーと合わせた『手袋』をし、ヘルメットを被った。
――シズクはキー刺し、回した。
――『キュイーーーーン・ジジジ』
フューエルインジェクションの機械的な音を立てた後、スタータボタンを押す。
――『フオォォォォォン』
直四の独特な……教習所の懐かしいサウンドを奏で出した!
『本の申し子』には似つかわない『CB400 SUPER BOL D’OR』に乗り、シズクは『藤波神社の前にあるタバコ屋』に向け出発をした。





