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本の世界の鍛冶士 柊シズクの物語  作者: 川崎タイチ
アルハンブラ浄水釜 再付与(うちなおし)編
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第14話 水のスフィアの守護精霊

 第一層ではガイコツ兵など雑魚との戦いで進んでいった。雑魚とは言え、シズクや近衛兵・親衛隊レベルでは怪我人だけでなく、死人が出るレベルの強さはある。


 フィーナとアルバラードの戦闘能力は相当レベルが高い事がシズクは実感した。二人の活躍で第一階層はクリアーし、第二階層へ入ったところだ。


 第二階層への階段を降りた場所の広間に……。


 ――新たなモンスター『バーサーカー』らしき屈強な肉体と『大剣』を持つ敵が1匹現れた。


 ……『グルルル……グアァッァァア!』


 ――うめき声を上げている!?


「あ、あのモンスター……『バーサーカー』なのですね!?」


 シズクは『異世界満喫モード』から『死への恐怖』が沸き立っていた……!!


「ええ、正式名称『バーサーカーデーモン』ですね。死んだ者の亡霊ですね……」


「良くも悪くもスフィアに人や霊、モンスターをも魅了する。彼の者も水のスフィアに引き寄せられて迷い込んで来たのだろうと……」


 レリクスに出るモンスターは、力ある存在へ『スフィアの魅了』によって集まって来ていた。階層が深くなるにつれ、より強靱なモンスターが現れる。


 ――そして、バーサーカーデーモンとの戦いが始める――!


「聖戦士アルバラード!第一の矢!参る!!」


 ――かけ声と同時に『盾を正面に構え』、バーサーカーデーモンに正面突進した!


 ――突進と同時に、フィーナが詠唱を始めた!


「……我ら戦友の心を支え我らを護れ!プロテクトフィールド!」


 アルバラードを含むこの場全員に防御魔法が掛けられた!


 アルバラードがバーサーカーを押さえ込んでいる間に親衛隊が取り囲み一気に追い詰めた!!


 抗戦している間に……


「彼の者を……光ある世界へ導きたまえ……」


 ――フィーナが再び魔法の詠唱を始めた!彼女の周りに『光』が集まりだした!


「全員!距離を取れ!デカいのが来るぞ!」


 ――アルバラードはフィーナの詠唱が終わるタイミングを見計らい親衛隊をバーサーカーから距離を取らせた!


「貫け!!ホーリーランス!!」


 ――フィーナに集まった光が無数の矢に変化し、バーサーカーを貫いた!!


「ブァァァァァア!!」


 ――うめき声と同時にバーサーカーの体は徐々に石化していき……砂となり(かえ)った!


 持っていた『大剣』はその場に残った!


「フィーナさん!無茶苦茶強いです!なんかホントに賢者さんですね!」


 圧倒的魔法力にシズクは安堵と感動を味わった。


「シズクさん、そりゃーフィーナ様はファバーダの中でも『大賢――』」


 ――目に見えない超高速でアルバラードの腹部に一撃を与え黙らした!……白目を剥いている!?


「アルさん、私のことはフィーナさんと呼んでくださいと何度も言ってますよ?そろそろ……判っていただけませんか?」


「ア……ハイ……判りました……フィーナさん」


 フィーナの一撃に屈服したアルバラードであった。


「親衛隊の皆さん、ここまでありがとうございました。ここから先はアルさんと私、そして……」


 賢者フィーナが親衛隊に会釈をし……

 聖戦士アルバラードが『鍛冶士シズク』に深々と頭を下げ……


「ここから先は聖域、スフィアがある階層です。鍛冶士シズク殿よろしくお願いします」


 親衛隊の20人が最深部の『扉の前』に整列をして「シズク、フィーナ、アルバラード」を見送った。


 ――そして最深部へ――。


「フィーナさん、どうして親衛隊の皆さんは最深部の扉の前で待っているのですか?」


 シズクは最深部へ続く回廊を降りながら不思議そうに尋ねた。回廊の途中にはモンスターやガイコツ兵などとは遭遇しなかった。レリクスではスフィアに近づくにつれ、モンスターなどもすくなくなるらしい。


「シズクさん……何ともないのですか!?」


 フィーナは若干ではあるが『ストレスに近い』感じを出している。同様にアルバラードも『体が重そうな表情』をしていた。シズクは二人と違い『ただの歩き疲れた』ようだ……!精神的苦痛やストレスは感じていない。


 ……フィーナとアルバラードは……少し『冷や汗』をかいているようだ……!


「ええ、特に……お二人共少し疲れが出てきているのですか?」


「……ここは……水のスフィアがある最深部です。精神の泉の中に飛び込んでいるような場所です。私もですが、フィーナさんは特に影響が大きいと思われます」


 アルバラードはシズクの問いに対して、先ほどのバーサーカーとの戦いの勇ましさは無かった。シズク自身は『鍛冶士の加護<水>のブローチ』で護られているのだろうか?


 ……シズク達は大きな扉の前まで来た!


「シズクさん、私達二人はここまでです。ここから先……『最深部の扉』の先は鍛冶士さんのみが入れる世界です……よろしくお願いします」


「あ、あのう!この先で守護精霊とか出るのですよね!?あとあと……加護の再付与うちなおしもする必要がありますよね!?」


 シズクはとても不安そうな表情を見せた。無理もない、ここまでに大型モンスターの『バーサーカーデーモン』、雑魚とはいえ『ガイコツ兵』も相手してきた。しかし彼女自身は『一緒に行動していただけ』だ!不安が先行するのも当たり前のことだった。


「ええ、シズクさん……アルさんと私はここから先へは行けないのです。『鍛冶士』のみが『入る事が出来る『世界』です」


 不安と恐怖の中……シズクはフィーナが言った一言……『世界』……どういうことなのだろうか?不安と共に『疑問』も湧き出してきた!この先の最深部にはシズク一人で行くことになる。


 最深部の扉は意外とこじんまりしていた。丁度、鍛冶屋のドアくらいの大きさだった。まるでレリクス内部に部屋のドアがあるようだ。


「では、フィーナさん、アルさん行ってきます!」


 シズクが挨拶をすると、二人は第二階層へ戻って行った。最深部の近所で待っていると、精神力を吸い上げられアルバラードがバーサーカーデーモンになりかねないとの事だ。


 そしてシズクはドアを静かに開けると、『ドアに付けられている鈴』が鳴った。中に入ってみると……。


 アトリエのような落ち着いた雰囲気の空間だった。道中のモンスターとの戦いの雰囲気を忘れさせる穏やかな空間が広がっていた。


 ――部屋の奥から物音が聞こえる……キッチンだろうか?


 ――お湯を沸かす音と、ガリガリと何かをすり潰す音と……とてもいい香……『コーヒーの香り』だ!そして『香ばしいクッキー』の香りも漂ってきた。


「あら……いらっしゃい……これはこれはお若い鍛冶士さんね……そろそろ来て頂けるとお待ちしておりました」


 柔らかい優しい声をした『美しい老婆』が、ティーセットと疲れが一瞬で吹き飛びそうな『美味しそうなクッキー』を持って部屋の奥から現れた!


 ――シズクは勝手に思い込んでいた……『精霊の姿を……』可愛い姿をしているが、とてつもない天災を起こしそうな……空を浮遊するような『いかにもラノベ的精霊』を期待していた。


「あ、あのうノックもしないで入ってすみません……私……鍛冶士の『シズク・ヒイラギ』です!」


「……ようこそ浄水釜へ。浄水釜の番人『ナキサワメ』です……道中お疲れでしょう、まずはお茶とお菓子を楽しみましょう『異・世・界の鍛冶士、シズクさん』」


 ――ナキサワメはシズクが異世界から来たと知っているようだ……シズクはナキサワメの『もてなし』を受けることにした。

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