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ラングスへの旅路

 狩祭が終わり、町にはいつもの静かな朝がやってくる。シェルス達はそれぞえ着替え、宿屋の主人に挨拶をして外に出る。


「さて……どうする? 馬車で行く? それともクエレブレで……」


と……シェルスは二人に尋ねるが、ステアが暗い顔をしている。


「あの……ステア? まさか……」


また二日酔いか、と。


「ごめん……昨日調子にのりすぎうぇぇぇ……」


その場で口を抑えながら顔を真っ青にするステア……再び馬車に乗ってラングスへと向かう事に。


ラスティナに簡単な暗示をかけて貰い、少しは気分が良くなったステア。


3人は馬車の中で昨日の狩祭に付いて語り合った。主にリーンの活躍についてだったが……。


とくにラスティナはリーンを高く評価し、それに対しステアは元騎士の大男を評価していた。あの空気の読み方は絶妙だと。


「それって、狩の腕前どうこうって話じゃなくない……?」


ラスティナのツッコミにステアは頬を膨らませながら、馬車の外へ目を向ける。


「ん? あれ、なんか行列……なんだあれ」


シェルスとラスティナも馬車の窓から外を見ると、マントを被った集団が街道から外れたあぜ道を、シェルス達とは逆の方向へ向かって歩いていた。明らかに武装しているその姿に、シェルスは怪訝な顔をするが……


「ラングスの魔術師……にしては物々しい雰囲気ね……」


シェルスは、その集団の中に騎士らしき人間が居ない為、ラングスからの集団だと思った。しかしあの集団が向かう先は、自分達が今まで居たシャル・マーゼだ。


……集団は行列を作り、軽く1000人を超えている。


「恐らく、レインセル経由で魔人の討伐でも行くのではないですか……? 今朝、すこし耳にしたのですが……何かが暴れてるみたいな事を……まあ、私達に声は掛からなかったので……気にしてませんでしたけど……」


「暴れてるって……魔人か?」


ラスティナへステアが質問するが、ラスティナは首を振る。


「分からないけど……それにしてもラングスから魔術師の応援を呼ぶなんて……ちょっと気になりますね」


確かに……とシェルスは怪訝な顔をするが、今は剣に封じられてるリュネリアの魂のほうが重要だった。ラングスへ赴き、魂の専門家に意見を聞くために向かっているのだから。


「一応……ここからならレインセルへ通信できるはずです。ゼシル様かナハト様に通信で……」


ラスティナが通信魔術を使用する。その通信にゼシルが応答した。


『なんじゃ、問題でも起きたのか? こんな朝っぱらから……』


眠そうなゼシルの声に、ラスティナは苦笑いしつつ……


「すみません、ゼシル様……今ラングスへ向かう途中なのですが……ラングスの魔術師と思われる集団がそちらへ向かっているようなのですが……」


『ああ、気にせんでいい。』


あまりにあっさりした物言いに、ラスティナは違和感を覚える


『お前達も、ラングスへの旅路気を付けてな。ではな』


それで通信は切れた。首を傾げるラスティナを見てシェルスは何かあったのかと尋ねる。


「あ、いえ……ゼシル様に気にするなとだけ言われて……」


ゼシルがそういうのだから、気にする必要もないのか……と思いつつも、シェルスとラスティナはその集団の事が頭から離れなかった。





そのまま馬車は進み、揺られること数時間、時間は昼時になっていた。小さな農村に到着し今日はここで休息を取ることとなった。ラングスまでまだしばらくある。


「ステア、お酒はダメだからね」


「わ、わかってるよ……クエレブレで飛べばすぐだしな……」


ステアは自分が二日酔いになったせいで、馬車を使った事を気にしていた。クエレブレで飛べばラングスまで、さほどかからないだろうと。


「いいのよ、気にしないで。私も楽しいわ、こうやって3人で旅をするのも……」


シェルスはステアとラスティナを可愛い妹のように思っていた。そんな二人を両手に手を繋いで歩きたい……という妄想をするが、そんな事出来るはずもなく……


(な、何考えてるのよ……恥ずかしい……)


顔を赤くしながら自分の妄想に赤面するシェルス……ラスティナとステアは、わいわいとシェルスの後ろで仲良さげに会話していた。


「ぁ、美味そうな果物作ってるな、ここ」


「たぶん料理のメインもあの果物のパイとか……楽しみね~」






 二人の会話を羨ましいと思いながらシェルスは、農村の小さな宿屋を見つけて部屋を取った。主人に挨拶し、今日一日だけここで休むと告げると……


「あんたら……ラングスへ行くんかい? なら……ちょっとお使いを頼まれてくれんかの……」


主人の老婆は置くから手の平ほどの瓶を持ってくる。中には果物で作ったジャムと思われるものが入っており……


「ラングスには儂の孫がおってな……クラリスという名で……甘い物が大好きでの。ぜひ持って行ってほしいのじゃ」


シェルスは快く承諾する。老婆は嬉しかったのか、


「ならお礼にご馳走させておくれ、金はいらんよ。この農村で獲れる果物をふんだんにつかった料理じゃ。楽しみにまってておくれ……」


そのまま老婆は奥のキッチンへと消える。あの老婆一人で宿屋を切り盛りしているのだろうか……とシェルスは疑問に思うが……奥から若い女性の声も聞こえてくる。


「なんだか優しいお婆ちゃんですね……孫の為にジャム作って届けてほしいなんて……」


ラスティナは瓶を荷物と一緒に袋へ丁寧に入れる。


「そうね……ラングスのクラリスさんへ……と」


シェルスは忘れないようにメモを取り、それから3人は部屋の中で数時間過ごした後、老婆の手料理を堪能した。






 月が農村を照らす頃……盗賊風の男が農村へ侵入する。マントを被り顔を隠している。


男はシェルス達が休んでいる宿屋の様子を伺う


もう就寝に入っている……と判断した男は、宿屋の鍵を針金で開錠し静かに中へと侵入する。


男が向かう先……2階建ての宿屋の階段を上った先にシェルス達は休んでいた。


男は息を顰めながら、シェルス達の部屋へと侵入する。


部屋に明かりはないが、月明かりで十分だった。すぐに目的の物が見つかる。


それは英雄ナハトが封印された剣。


男は息を殺しながらその剣に手を伸ばす。




ガッ、と男の手を掴む手。


男は驚きながら短刀を抜き、その手を切りつけようとする。


だが短刀は短刀で防がれた。


「起きろ!」


その声にシェルスとラスティナは起こされ、シェルスは剣を取って抜こうとするが……


男の姿はもうない。


「ステア……ごめん……」


シェルスはベットに座りこむ。ステアは短刀を仕舞い


「その剣狙ってたみたいだったぞ。私達の事追いかけてきたのか? シャル・マーゼから……」


「そうね……少し不用心すぎたかもね……ステア良く気づいたわね……」


と、ラスティナがステアの体をクンクン匂いを嗅いでいる




「ステア……隠れてお酒飲んでたでしょ……」


「え?! いや……月が綺麗だし……ちょっとだけ……」





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