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魔人の嫁

 ライガスのタバコを咥えながら、シェルスは二人の遺体の前で祈る様に膝まづいているリエナを後ろから見ていた。


次第に二人の遺体が光と友に消えていく。魔術師による祝福、死した魂が無事に星へと帰れるようにと。


リエナは、二人の遺体が消えても祈りながら、後姿のままシェルスへ話しかけた




「私は……15歳で大戦に参加したわ。今のラスティナと同い年ね。レインセルの魔術師として敵国の騎士を次々と殺した。中には自分よりも年下の子すら居たわ。子供を徴兵するほど……コルネスには余裕が無かったのね」


『それを貴様が言うのか。レインセルとて15の貴様を徴兵していたのだろう?』


魔人はどこか同情するように……


「私は当時ナハトだったのよ。参加しない理由なんて無かった……」


リエナは立ち上がり、シェルスを見る


「貴方も……15歳で拉致され……一年間に渡る拷問を受け続けた……」


シェルスはリエナの言葉に俯く


「なにかしらね、15歳になると不幸になるのかしら?」




リョウギによって刺されて傷からは、今だ血が流れ出ている。


「リエナ様……貴方は……」



「私はね……ファラクと呼ばれる魔人の父と……人間の母の間で生まれた子なのよ」



『やはりか……お前は常に死にながら生きているのだな』


魔人の言っている事が理解できないシェルス。どういうことだとリエナを見つめ


「この魔人の言う事は正しいわ。ファラクという魔人はディアボロスのような巨大な……神に等しい魔人よ。何かの気まぐれだったのか……それとも本当に母と恋に落ちたのか……今となっては確かめようもないけど……母はファラクの子供を妊娠した。そして子供を産むと同時に母は死に……そのあとファラクも討伐されたわ。ウォーレンとゼシル……二人を中心としたレインセルの大部隊に……数年がかりで……」


リエナは血で汚れた服を脱ぐ。その体には夥しい……一年間の拷問に耐えたシェルスすらも超える傷が刻まれていた。


「り、リエナ様……その傷は……」


「この傷は興味本位に私を実験に使おうとした魔術師達が付けた傷よ。魔人と人間の混血種が何処まで体の損壊に耐えれるのか……とかね。ゼシルに助けられるまで、随分好き放題にされたわ。でも私も自分がどんな体を持っているのか……良く理解できた……たとえ心臓をえぐられても……私は死なない……死にながら生きてるっていうのはそういう事よ。心臓をえぐられて生きてる人間なんて死体同然だもの」


『まさに魔人ファラクと同じ体だな。だが……かの魔人はとある方法で討伐された。先程二人の遺体を消し去った魔術。すなわち……』


「魂の祝福、と呼ばれる魔術よ。騎士達がファラクを取り囲んでいる間に、何百万という魔術師が祈りを捧げ、生きている死体の魔人を消し去った。数年がかりで……」


リエナは、脱ぎ捨てた服を魔術で燃やす。


「ごめんなさい……シェルス。変な話に付き合わせて……申し訳ついでに、服を買ってきてくれないかしら……流石に血まみれの服や裸じゃ戻れないもの……」


シェルスは黙って目を伏せ、頷くと廃屋の外へ……そのままアルベイン家の店へと向かった。



その途中……リーン・レーヴェンが、待ち伏せするように立っていた。


「すまないと思ったが……途中から盗み聞ぎしてしまった、人の忠告を無視したんだ、そのくらいは許せ」


シェルスは、リーンの佇まいからイリーナを思いだす。


「貴方は……私の母に似ていますね……」


突然なんだと、リーンは怪訝な顔をするが


「あの女と……似てるといわれてもな……」


「貴方と……母はどんな関係なんですか?」


リーンは少し考え……


「聞きたいか? くだらんぞ」


シェルスは頷く


「私は元々コルネスで盗賊まがいの事をしていてな……そのまま……バラス島に移った後にも盗賊をしていた」


バラス島、と聞いて……シェルスは


「まさか……貴方は……」


「そうだ……お前を助けたイリーナに雇われた盗賊の一人だ。もっとも……あのあとすぐに金を受け取って他に移ったがな。正直、お前の母親は頭がいかれてると思ったぞ。たかが小娘一人助ける為に、いきなり観衆を皆殺しにしろと指示を出してきたんだ。だが……まあ、自分の娘だったとはな……私に子供は居ないが……自分が腹を痛めて産んだ子が、あんな仕打ちを受けていれば……まあ、キレるだろうな」


そのままリーンはシェルスに軽く手を振りながら


「じゃあな、早く服を買ってやれ、あのままじゃ風邪ひくぞ」


「あ、あの、もう一つ……いいですか」


呼び止められたリーンは、まだ何かあるのか、と腕を組みながら


「あの時……騎士殺しは濡れ衣だと言っていましたが……」


「あぁ、濡れ衣だ……まあ盗賊だからな、別に構わないんだが……子供に絡んでるバカな騎士が二人居たんでな。かるくシメてやったら、いつのまにか咎人になってただけだ」


それを聞いてどこか……シェルスは納得してしまう。リーンがイリーナと似ていると思う理由に


「じゃあな」


それだけいってリーンは去っていく。



アルベイン家の店に向かい、服を買う。


リエナの元に戻り服を渡し




「ありがとう、シェルス……貴方……可愛い服の趣味してるわね」




シェルスが居ない間に泣いていたのか。リエナの目は赤くなっていた。



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