【閑話】その辺に……?
庭で育てていた花をいくつか摘んで、麻紐で簡単に縛る。簡素な花束だけど、供える花としてはきっと十分だろう。
「よし、スノウ。行こうか」
頭の上にいる青い小鳥に呼びかければ、ピュィ、と短い返事があった。
「行ってきまーす」
ついでとばかりに、家の中にいる師匠にも声を掛ける。返事は全く期待していなかったのだが、意外にも師匠本人が出てきた。
「待て。どこへ行く?」
「ルーニーラビットのお墓に、お花を供えてこようかなって」
手に持った花束を見せれば、師匠は思い切り顔をしかめた。
「花を供えたくらいで、ゴーストは消えないぞ。やるなら……」
「こういうのは気持ちの問題なんです!」
情緒の欠片もない師匠の言葉を、私は半眼で遮る。
全くもう! 別に、私はゴーストをどうにかしようとしてる訳じゃないのに。
遺跡の中で感じた、ルーニーラビットたちの無念さは、きっと、勘違いじゃない。取り憑かれたからなのかは分からないけれど、不思議とあのゴーストの気持ちを感じたのだ。
「……僕も行こう」
完全に一人で行く気だった私は、師匠の意外すぎる提案に目を丸くした。
「えっ! 師匠が?! ゴースト退治しに行く訳じゃないですよ?!」
「あの遺跡に残った仕掛けが運悪く発動でもしてみろ。リザだけで何とかなるのか?」
「わーい! 師匠! 一緒に行きましょ!」
ころっと態度を変えた私に、師匠は「現金なやつめ……」とぼそりと呟く。でも、気にしないもんね!
「そう言えば、師匠はゴースト怖くないんですか?」
あの巨大なルーニーラビットを思い出しつつ、師匠に聞いてみる。師匠が怖がる姿なんて、想像できないけど、一応ね。
案の定、師匠は鼻で笑った。
「僕が?」
その一言だけで、私の質問に全く意味がないことが伺える。
「あんなものをいちいち怖がってたらキリがない」
「そんなに言うほど、ゴーストと出会うことないですよね?」
「……何を言ってるんだ?」
師匠がふと、真剣な表情になる。思わず、私の背筋が伸びた。
「その辺にたくさんいるだろう?」
「えっ……」
「ほら、リザの後ろにも」
「ぎゃーっ!」
慌てて師匠の後ろに逃げこむ。なんなら、ずるずるしたローブの中に逃げ込もうとした私を見て、師匠は意地悪く笑ったのだった。




