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魔法使いと私  作者: りきやん
私の師匠を紹介します

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【閑話】暑くてたまらないです

「あーつーいー」


「うるさい」


「そーんなこと言ってー。本当は、師匠だって暑いんですよねー?」


「君は僕の服装を見て物を言うべきだな」


 ふざけるな! こんな暑い中、師匠がずるずる長いローブ(しかも冬と同じ素材)を着てるなんて、絶対に認めない! 私なんか、暑すぎてタンクトップに短パン一枚の姿なのに。


「師匠、どうしてそんな服着てられるんですか」


「水魔法を応用すれば、自分の周りだけ気温を下げることもできる」


「ちょっと! 師匠! それずるい! どうして私には掛けてくれないんですか!」


「面倒だ」


「可愛い弟子がこんなにへばってるのに、師匠ってば血も涙も無いんですか!」


「可愛い弟子というのは、僕の弟子にはいない。役立たずの弟子はいるけどな」


 師匠ってば、暑いのに相変わらず口はまわるまわる。あ。暑いのは、私だけなのか。


「もう、師匠が掛けてくれないなら、自分で掛けます」


「ほう。君に出来るのか?」


「馬鹿にしないでください! 命の危機に直面した今なら、きっと出来ます!」


「出来たら、ご褒美にケーキを買ってやろう」


「……出来なかったら?」


「お仕置き」


 これはハードルが上がったぞ。是が非でも、成功させねばならない。


 背中を大量の汗が伝っているのを感じる。これは、冷や汗ではない。断じて、冷や汗などではない。


 あ、なんか、涼しくなってきた。


「え、あ、や、やっぱり、我慢しよっかなー……」


「何を言ってるんだ。あれだけ大口叩いたのだから、君の素晴らしい魔法を見せてもらおうじゃないか」


 もうダメだ。こうなったら、師匠は何が何でも私に魔法を使わせる気だ。私に、『後戻り』なんて選択肢はない。


 仕方が無いので、師匠のお仕置きが軽くなるように御機嫌取りをするしかない。って、失敗前提に考えちゃいけない!


 見ててよ、師匠! 私だって、魔法は使えるんだからね!


「え、えっと……水魔法の応用だから、空気を冷やすだけにするには、えっと……」


 考えろ、考えるんだ。師匠がすごい意地悪い顔でにやにやしてるけど、そっちを見てはいけない。


「空気の温度を下げるんだから、自身の周りを水蒸気で覆って凍らせる……とか?」


「そう思うなら、それでやってみるといい」


 相変わらず意地の悪い顔だ。私が失敗するのを心の底から望んでる。


 師匠ってのは、普通は弟子の成長を喜ぶものではないのだろうか?


 どちらにしろ、魔法を使わなければ師匠はそれを口実に私を虐めるだろうから、こうなればヤケだ。やってやろうじゃないか!


「流々たる潤の恩恵、散ざめく凍よ貫け」


 途端、私の周りにドサッと氷の粒が落ちて来る。


「わっ……! ちょ、いたっ! し、師匠ー!」


「はは、本当にそのままの詠唱だな」


 だって! 水蒸気を凍らせるんでしょ!


 ま、まぁ、私の言った通りの現象が起きてるのかもしれないけど、これはちょっと違う。っていうか、出て来た氷がこの暑さで溶けて、床が水浸しになってるし!


 師匠は私の失敗見て大笑いしてるし!


「あーもー! 床も掃除しないといけないし、最悪じゃないですか! 師匠の馬鹿!」


「馬鹿はどっちだ。まぁ、そんな馬鹿な君でも分かるように解説してやろう」


 師匠は雑巾を私に投げると、説明の間に床を拭くように促す。


 えぇ、えぇ、知ってますとも! 師匠は魔法で片付けてくれたりしませんものね!


「水蒸気の発想は良かったけどね。凍らせるのが間違いだ」


「えー? どうしてですか?」


「直接、自分の皮膚に水蒸気を纏わせるのが正解」


「そんなの、びしょびしょに……あ! そうか! 蒸発熱!」


「その通りだ」


 考えれば、すごく簡単だ。身体についた水分が気化するときに発生する蒸発熱を利用するわけか。


 肌についている水分は、蒸発するときに身体から熱を奪う。それで、涼しくなるように感じるのだ。


 けれど、言っておくが、そんな細やかな魔法を使うのはすごく難しい。


「ちなみに、水温も自分の体温と同じになるように調節しないといけないからな」


「そんな難しい魔法、私には使えないじゃないですか」


「そうだな」


「そうだな、って……」


「いや、もしかしたら、他の方法で涼しくなるように考えるかと思ったが、まさか、あそこまで愚直なことをするとは思わなかった」


「愚直ですみませんね!」


 床の水を拭き終わった雑巾を師匠に投げ返せば、師匠はその雑巾をどこかに消した。ちょっと、そこで魔法使うなら、私のためにも使ってくださいよ。


「さて、リザ。そこでだ」


「なーんでーすかー?」


 師匠はソファに座り直し、私を手招きする。私はまた暑くなってきて、動くのすら億劫なのに。


 座っている師匠の前に立てば、それはそれは、もう真っ黒な笑顔で師匠はこう言った。


「約束通り、お仕置きだ」


「ぎゃぁああああああ!」


 そうして、私がまわれ右をして逃げる暇もなく、師匠は魔法で私を引き寄せる。無言詠唱っていうのは、本当に厄介だと思う。いつ魔法を使ったのか全くわからないなんて!


 私は為す術もなく、師匠の上に倒れ込む。この暑い中、ローブなんて着てる師匠の上に倒れ込むなんて、本当に遠慮したい。ていうか、暑苦しすぎて死んでしまう。


 幸い、身体の自由は効くので、私は逃げようと暴れるが、師匠は何でもないと言うように、私をそのまま腕の中に閉じ込めてしまう。


「ちょっと! 師匠! 暑い!」


「僕は涼しい。寒いくらいだ」


「はーなーしーてーくーだーさーいー!」


「そんなに嫌がるなら、これをお仕置きにしようか」


「嫌です! 暑いです!」


 ぎゅ、と師匠が腕に力を入れたので、私は更に逃げられなくなる。


 しまった、この人は、嫌がれば嫌がるほど喜ぶんだった。この場合は、抱きしめられて嬉しいですー。くらいに言っておけば解放されたのに!


 しかし、そう思っても後の祭り。


「今日はこのまま過ごすか」


「ちょ、師匠! 無理です!」


 と言っても、聞く耳持たず。このまま夕飯の準備まで過ごしたのは言うまでもない。


 ◆


「ししょー、のどかわいたー」


「ん」


「ごはっ……ちょ、水魔法を口に直接かけるのやめてくださいよ!」


 ははは、抱きしめられて暑苦しいだけだと思ったら大間違いですからね。


 こうやってちまちま虐めてくるんですよ。


 師匠の馬鹿!

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新作「グレーテルと悪魔の契約
ちょい甘コメディファンタジーです。
よろしくお願いします〜!
by りきやん

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