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その96 どうやら二アは脱獄してきたようです

「シオンさんならきっと魔王を倒すことが出来ますよ」


「二アは俺が魔王を倒すことが嫌じゃないのかい? 二アからしたら同族じゃないか」


「シオンさんがそれを望むのであれば、私は応援しますよ」


 一瞬二アが寂しそうな顔をした気がした。


 人間を傷付けることすら嫌がる二アが、同族である魔王を倒すと言っている俺を応援するとはおかしな話しだ。


 人間は嫌だけど、魔族が傷付くのは良いなんて、二アが思っている筈がない。


 今の俺は二アのことを何も知らな過ぎる。


「今度は二アの話を聞かせてくれないか? もちろん二アが言いたくない話は、言わなくても良いからさ」


「私は...」


 それから二アは今に至るまでの話を俺に話してくれた。


 もちろん全てを話してくれた訳ではないと思うが、今の二アの現状を知るには充分な話だった。


 二アの親は魔族の中でもそれなりの地位にいる魔族らしく、人間と戦うことを良しとしない二アは、親に人間と和解をするように提案をしたらしい。


 もちろん聞き遂げられることはなく、親と言い合いになった末、家を飛び出してしまったと言うのだ。


 そして二アはタリアの国王にも魔族との戦争を止める様に言いに行った所、捕らえられてしまったと言うことだ。


 隙を見て逃げ出したは良いが、体力が尽きてあの道に倒れていたと言うことらしい。


 魔族の身でありながらタリアの国王に直訴するとは、余程勇気がある少女だ。


 もちろん無謀と言う者も居ることだろう。


 おそらくマーカス達が追っていた牢から逃げた少女と言うのは二アのことで間違えないだろう。


「二アは家に帰る気はないのかい?」


「はい。今は帰る気はありません...」


「そうか...」


 二アが帰る気がないなら、今は無理に帰すこともないかも知れない。


 二アが帰りたくなったらいつでも俺が連れて行けば良い。


 二アの話が終わると辺りは薄暗くなっていた。


 時間も経ちお腹も空いてきたことだし、夕食にするか。


 自分が空腹になり気付いたことだが、二アは水さえ飲めずに逃げてきていた。


 当然、食事も取っていない筈だ。


 今までこんな単純なことにも気付けなかったとは情けない。


 俺はリュートの身体から袋を外し、袋の中から干し肉と水筒を取り出した。


「二ア。気付かなくてゴメンな。お腹空いてただろ? これを食べな」


「良いんですか...?」


「ああ。まだまだ一杯あるからお腹一杯食べると良いよ」


 俺はそう言ったが、一杯あるのはリュートの分が大量にあるからだ。


 ジェシカ達に上げてしまったので、数は減ってしまったが、元々多めに買ってあったのでリュートの分を少し減らすだけで足りるだろう。


「ありがとうございます」


 二アは余程お腹が減っていたのか、凄い勢いで干し肉を口の中へと運んでいく。気持ちの良い食べっぷりた。


 二アに合わせて俺も干し肉を食べ始めた。


 俺の方が先に食べ終えると水筒の口を開け、自分の口に近付けた。


 干し肉によって渇いた喉に一気に水を流し込むとゴクンゴクンと音を立て水を飲み込んでいく。


「ニアも喉渇いただろ?」


 そう言って水筒を渡すと二アも水筒に口を付け水を流し込んでいった。

  

 二アの喉からはコクン、コクンと可愛い音がする。間接キスに全く意識はないようだ。


 恥ずかしがっている俺がまるで子供みたいじゃないか。


「ご馳走さまでした!」


 二アはそう言って笑顔で俺に水筒を返した。


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