第一話 無駄にしない三分間
カップラーメンの袋を剥がし、蓋を点線まで開ける。
ポットのお湯を注ぎ、蓋の上に軽い重しと僕専用のお箸「小二郎」を乗せる。
――よし、これでバッチリだ。あと三分。だが僕は時間を無駄にはしない。
カップラーメンをテーブルの上に置くと、普段着に着替えるため自室に向かう。
――三十秒経った。そろそろ、麺達がお湯に気づき始めた頃だ。
自室に着いたと同時に制服を脱ぎ、ハンガーに掛ける。
――一分経った。麺達も暖かさに慣れてきたはずだ。
普段着を取り出し、上着とズボンを広げる。
――二分経った。まだまだ、時間には余裕がある。
普段着を着て、カバンの中身を机の上に放り出す。
――残り三十秒。そろそろ、麺達も最高の状態に近づいている頃だろう。
自室を出ると、ラーメンのあるテーブルへ向かう。
――もうすぐだ。……だが焦るな。カップラーメンは最後の三十秒で完成する。
着替えも終わったし、最高の状態で、ラーメンの元に辿り着くぞ。
リビングにたどり着くと、テーブルの上に置いておいたラーメンを探す。
――あれ、おかしいな。ここに置いたはずなのに。
テーブルの下を探すが、見つからない。
――どこだ。ここに置いたはずなのに……。
……静まり返ったリビングに、かすかにラーメンの匂いが漂っている。
――台所を見てみよう。
台所に行くと、そこには、とんでもない光景が浮かんでいた。
「おうっ、おかえり。」
そう言うと、兄は当たり前のように僕の箸でラーメンを食べていた。
――僕のラーメンが……。
……思考が追いつかない。
「いやー、丁度、腹減っててよ。これ、貰っとくわ。」
兄は、商品名すら知らない。
――それは、僕のラーメン。スーパーラーメンだ。
……それでも、何も言えなかった。
ラーメン記録帳
出来事
ラーメンの側を離れていたら、兄に食べられた。
教訓
ラーメンの側を離れるな。
命名
兄ラーメン強奪事件




