おどおどメイド、オレリア
「ありがとうございます、アイーナ様」
「ふん!お兄様に言われたから来てあげたの!勘違いしないでよね!」
素晴らしいほどのツン。
もはや微笑ましく思えるほどだわ。
「なによ……ニヤニヤして……」
「コホン……失礼しました。そちらが紹介していただけるメイドさんですか?」
「そうよ。挨拶なさい」
「は、はい……オレリアと申します……」
アイーナ様にそう言われて返事をした彼女はおどおどした様子で名前を口にした。
懐かしさを感じさせる黒髪は肩までで切り揃え、前髪で瞳を隠しているのでよく見えないけど黒い瞳のようね。
日本人のような風貌というか、私の前世と似ていてまるで自分のように思える。
「初めまして、私はディフェルナです。それと」
「サリナと申します。いろいろと教えてくださいね?」
「は、はい……」
うつむき加減の頭をさらに下にして礼をすると、再び口を閉ざした。
「こんな感じだけど仕事はちゃんとできるから心配しないでよね」
「うふふ、お優しいのですね」
一メイドをかばう様子を見て、アシュ様がおっしゃっていたことを把握した。
「べ、別にそんなんじゃないから!変な子をあんたにつけてお兄様に怒られたくないだけ!」
「そうなのですか?」
「そうよ!」
ふん!
そうやって鼻息荒く腕を胸の前で組んだアイーナ様は、慌ただしくドアを開けていく。
そしてくるりとこちらを振り返った。
「じゃあね!この泥棒猫!」
「はい、ありがとうございます。アイーナ様」
またしても舌を出してからドアを静かに閉めた。
妙なところで礼儀正しさが出ていて笑ってしまった。
「あの……姫様を嫌いにならないであげてください……」
おずおずと言い出したオレリアに視線を向けると、彼女は先ほどよりも深くうつむく。
「ふふっ、大丈夫ですよ」
「あ、あの……敬語もその……やめてもらっても……」
「そう?それじゃ改めてよろしくね」
「は、はい……私なんかが担当でごめんなさい……他の方は嫌がって……あっその!」
「否定しなくてもいいのよ。わかっているから」
敵対国から来たよそ者よりも自国のお姫様の方が仕えている名誉は上だものね。
「そのような中でも私のところに来てくれてありがとう」
「いえ……とんでもありません……」
「ところであなたいくつなの?私は17!」
サリナがフレンドリーに話しかけると彼女はうつむきながらも、
「17です……」
そう答えてくれた。
「わぁ!同い年だ!よろしくね!オレリア!」
「うぅ……ま、まぶしいですぅ……」
陽なサリナと陰のオレリア。
相性はあまり良くはないような気がするわ。
どうなることかしら?
そう思っていたのだけど……
「お洋服を手配するために、洋品店の者をお呼びしておりますのでサイズなどを測定させていただきます。その後は城内をご案内させていただきますがよろしいでしょうか?」
仕事モードとなると超有能。
先ほどまでのおどおどとした話し方ではなく、ハキハキとしたものだった。
「ええ、よろしくお願いするわ」
「それではまず、汗を流しに参りましょう。貴賓室には備え付けのお風呂がございます。サリナはディフェルナ様の後で」
「別に一緒でいいわ。時間がもったいないでしょう?」
「ですが……」
「いいの。別に他の方が入ってくるわけではないでしょう?」
「……わかりました」
「よかったらあなたも入る?」
「ふぇ!わ、私は遠慮しておきます!」
「ふふっ、そう?残念ね」
「私がしっかりと髪やお身体を洗わせていただきますので!」
「お願いね、サリナ」
「仲がよろしいのですね」
「ええ、小さな頃から一緒だったから」
「……失礼ながらオルフェリアの方ですので粗野な方だと思っておりましたが、ディフェルナ様はとても穏やかな方なのですね」
「そう思ってくれるなら嬉しいわ。ありがとう」
「私はどうかな!?」
「サリナは……えっと……」
「なんで口ごもるのかな!?」
二人のそんなやり取りを見て私が笑うと、二人も釣られるように笑った。
きっと彼女とは仲良くなれるだろう。
そう思うひと時だった。




