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8.はじめての依頼

 誤字・脱字の報告とか貰えるんですね。

 ご指摘くださった方、ありがとう存じます。助かります。

 名前で呼びあう様になり、改めてエマを眺める。

 カウンターの向こうに座って応対しているので上半身しか見えないが、襟付きシャツを着て、合わせて着るベストも適度な大きさの胸を覆う。きれいな金髪は編み込んで巻き上げ、頭の上でお団子にして纏めている。そして丸眼鏡。完全に制作スタッフの固定観念で作られたのかと思ってしまう。


 ともあれ、こうして商業ギルド員になる事になったミズキにライセンスが発行される。

 証…とは言うものの用紙やカードではなく、片面に名前が表示され、商業ギルドのマークが刻まれた、白いコイン状のメダルをあしらったペンダントである。


「こちらが商業ギルドの身分証になります。首からかけてお持ち下さい。紛失すると再発行には手数料をいただきますので大事にして下さいね。」


「わかりました。ありがとう。」


「では、商業ギルド員としてのノルマや特典をお伝えしますね。」


 そうしてエマが目の前で簡単に、商業ギルド員をしての、権利と義務に関して説明してくれる。


・月々のノルマとして

 ランクに応じたギルドからの依頼の納品が必要

 もしくは、ランクに応じた金銭を納める

 感覚としては会員月額費用として考えればいい


・販売には許可証が必要

 行商・露店・市場・店舗等での販売には規模に応じた販売許可証が必要

 それぞれの許可証の費用は初回発生するが、無期限で利用可能

 但し、ギルドから脱退すると無効に、再加入時は要再取得

 ノルマ不達成・未収納時にも無効になるので要注意


・Eランクだと、行商や露店販売が可能

 ギルドからの依頼は随時可能


・売買をするにあたっては、事前にギルドに連絡をする事

 既存のギルド員との不当な競争を事前に調整が可能

 また独自商品の販売に関してのライセンス登録等も可能

 販売代金に対して、一部をギルドに収める。割合は事前相談。

 事前協議なき品物の売買は、全て自己責任での対処をする事 


…と、こんな感じで伝えられたが、案の定ミズキは聞いてる風でアバウトにしか聞いていない。そんなミズキの理解度は「納品して、何かする前にはギルドに聞く」…これである。丁寧に説明してくれたエマさんは不憫ではあるが、それを知る由もないので本人はそのまま続ける。


「このような感じですが、今月は初月になりますので納品義務等はありません。また来月の納品量・収納額は今月のログイン状況に比例します。極論を言うと、ログインしない月があった場合の義務はゼロですので、翌月のノルマもゼロという事になります。」


「要は前月はギルド員でもないから義務も無いと。」


「そうですね。また、長期間ログインしない場合のギルドからのペナルティもありません。ただ、月をまたぐ場合の長期間ログインができない場合に関しては事前にご相談ください。労働・対価の前払いで対応します。」


「なるほど。現実での絡みでログインできなくても大丈夫なんですね。」


「そういうことです。処で今月のノルマはありませんが、来月いきなり納品を始めると混乱する方も多いですから、実際にやってみませんか?」


 ここで突然のミズキはカウンターに乗りあげ、両手をバンと叩きつけ返事をする。


「やりますっ!」 


「はい!?」


 提案を受けてミズキのテンションが突然上がり。大きな声で返事する。

 今までに同じ会話を何度も繰り返したにも関わらず、このタイミングでの大声の返答のパターン経験が無かったエマは意表を突かれ驚き、そして、つられたのか大声で反応してしまい、意図しない応答に対してか顔を真っ赤にして話始める。


「ありがたいんですが…なんで…そんなに異常に乗り気なんですか…あと、顔近いです…」

 

「えっ?あ…すみません…やっとゲームみたいな体験出来るかと思うと興奮してしまって…取り乱してしまいました…」


「戦闘体験ではなく、おつかいみたいなものですよ?」


「それでも、ギルドに依頼されてクリアするんですよね?」


 会話がどこかかみ合わない。

 エマの履歴には単なる初期の納品依頼でここまで感情をあらわにするプレイヤーは見たことがない。ミズキはミズキでDREAMで初めて依頼を受けるという事に好奇心が暴れまくっており、互いの感覚に温度差がありすぎるのだ。


「では、北のムーノ村に養鶏場がありますので、なるべく多くの卵をこちらまで持ち帰っていただけますか。」


「はいっ!」


「売買代金に関しては、取引数に応じて価格を交渉して下さい。ギルドでの買取は卵1つにあたり小銅貨2枚ですので、安く買うことが出来ればその差額は利益となりますので頑張ってみて下さい。割れた卵は買い上げることが出来ませんので注意して輸送して下さいね。」


「安く仕入れて、高く売れば利益が出るんですね。当たり前ですよね。」


「あと、今回の購入代金はミズキさんのギルド証を相手のギルド証と接触する事で仕入代金を商業ギルドとして立て替える対応を準備します。」


「…それはギルドにとってリスクしかないのではないですか?」


「立て替えた金額は、そのまま、ミズキ様への貸付けになります。要は借金ですね。ですのでギルドにリスクはありませんよ。金利は今回に限り取りません。」


「毎回ではないのですか?」


「初回のは練習の様なもので、ギルドとしてギルド員の育成の為に与えられるサービスだと思ってください。次回以降は、この後ろ手にある品物の価格表を見て、自分に合った品物の納品を自己資金で行ってください。」


「そういうことなんですね。理解しました。期限はありますか?」


「期限はありませんが、納品に関しては鮮度的にその日の朝に産まれた卵は遅くとも翌日までに納品してください。また、納品数に上限はありません。」


「わかりました。では、折を見てムーノに向かってみようと思います。時に納品は卵以外の価格表に載っている品物でもいいのですか?」


「構いませんが、代金の立て替えが出来るのは卵のみとなりますので、他の品物に関しては自己資金で行ってください。


「ふむ…了解です。」


「ほかに質問が無いようであれば、納品を楽しみにしていますね。こちらで受付いたしますので。」


 商業ギルドの説明の時とは異なり、納品関連の話は自分の興味のあることだからなのか集中して聞き、疑問を持てば随時質問し、疑問の解消をしつつ自分を納得させていく。エマは初めの暴走したミズキを見て当初は心配していたが、言葉を重ねるにつれて、その心配は解消していく事となり、終わる頃には特に不安はないと言える程にまでなった。

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