73.交渉と言う名の…
いつも誤字報告ありがとうございますっ!
ロクに外出も出来ないお盆でしたが酷暑が続くので体にはお互いに気を付けましょう。
ミズキはその言葉を聞いて、リンクではなく、マイクに話しかける。単純に見た目でマイクの方が力がありそうだからだ。
「んー、マイクさんはこの石柱を折る事は出来ますか?」
「あぁ、折れるぞ。ただ、部屋の中でやっちまうとエライことになっちまうが…」
「それって、打撃とかそんなんって事ですよね?んー、それじゃ、その石柱が倒れない程度にハイキックでもして貰えますか?」
そういうと、マイクは石柱を軽く蹴っとばすが揺れはするも石柱がそのまま佇んでいる。
「じゃあ、危ないんでちょっと離れてもらえますか。」
と、ミズキの言葉でマイクは石柱から少し離れる。
そうしてミズキは本来であれば特に仕草など必要ないのだが、それらしく石柱に手をかざして、腰位の高さで石柱を切断する。
次元収納を石柱の直径を少し上回る長さの細い物差し位に設定し、取出口を下に発現させたものを…石柱を通り越す位置まで水平に伸ばし、その後石柱から離れる。
「何やってんだ?」
「あぁ、今これ、切ったんでもう一回蹴とばして貰えますか?」
その言葉に、その場にいるエリザベスを除いた3人は狐につままれた様な雰囲気に包まれ、互いに顔を合わせたかと思うと、互いに顔を横に振って「解らない」事を互いに伝え合う。始めに声を発したのはマイクだ。
「何かしたのか?」
「蹴れば多分わかるので、蹴り飛ばして貰えませんか?」
訳も解らないが、蹴り飛ばさなければ話が進まないと理解したマイクは先程と同じ用に軽くハイキックを見舞うと…真ん中を切断されている石柱の上半分が倒れて落ちる。
…
……
「…なぁ…おい…どんな手品だよ?」
「これもスキルですよ。」
マイクはしれっとそう答えるミズキに対して恐怖を覚える。
スキルを使ったと言うものの、手をかざした程度で大げさな動作が無かった事が非常に怖い…これがレベル1のする事か…との感じ方は、犬猫のミズキに対する変なものを見る様な感覚に近い。
「リンクさん、見せましたよ?他にもありますけど、必要以上に他人に見せるなと運営から言われてるんで。」
「お前も運営絡みじゃねぇか…」
「まぁ、だから貴方達もそう何じゃないかと思ったんですけどね。で、どうですか?」
「…私たちのメリットは何ですか?」
「そちらが労力なく、私がエリザベスちゃんの返却とエディンとの和平交渉、貢献値は運営と交渉しますけど最低でも通常最大値の3分の1って処ですかね。」
「デメリットは?」
「仮にコークに戦火が及んだ際には、私が今後、貴方達を敵と認定して暇つぶしに嫌がらせをし続けます。」
「子供かっ!」
ミズキとリンクの会話の最中にマイクが突っ込んでくる。
そのマイクに冷たい目を向けて低い声で簡潔に説明する。
「解ってませんね…ひたすら貴方達を狙って倒す事が出来ない訳じゃないんですよ?」
「あぁ?今度はキッチリ返り討ちにしてやるよ?」
「さっきの謎は解けたんですか?まぁ、仮に100回倒されようが、1回倒せば私の勝ちですからいいですけど。」
「あー…マイク…ミズキさんはレベル1なんですよ…」
「あぁ!?だから何だってんだ?」
「ミズキさんは倒されようとペナルティが無いんですよ…登録した教会が近いなら何度でも向かって来るって事なんじゃないかと…」
「あ、因みにさっきの石柱切りですけど、幅10mで放てるんで。」
「「……」」
その言葉に絶句する二人…それでも止まらずミズキ的にはどんどんトドメを刺しに行く。
「ついでにエディンの教会に再生ポイントを移すのも良いですね。」
「わかりました、わかりました…停戦に同意しましょう。」
「リンク、てめぇ…裏切んのかぁ!?」
「いやいや…この人を敵に回すと、今後DREAMを楽しめなくなりますよ…」
その言葉に合わせて、ミズキが妙な話を男の口調で被せてくる。
「あー、めんどくせぇ。素に戻るぞ。別に話し合いなんか必要無いんだが、好きな事をやってるお前らに共感を感じてわざわざ足を運んでんだよ?多人数のプレイヤーと戦うとか面白れぇ事やってはいるなと。NPCの扱いは別だったけどな。でもよマイク、お前このまま運営のつかいっ走りをし続けるつもりかよ?」
「…ぅ…ぁ…てめぇ、男かよ…」
「俺はな…静かに米が食いてぇんだよ。」
この男は空気も読まなければ、途中の説明もすっ飛ばして結論だけを言ってしまうが為に相手の理解が追い付いてこない。
「は?米?何の話だ?」
理解できない相手の為に、自分が何のためにDREAMを始めたのか、なぜ人形なのか、なぜ女性アバターなのか、米に関しての話、現状マヨネーズを作り始めたり、その為の泡だて器の話、そして…ワールドレイドへの話等を説明する。
「はっはっは!面白れぇな、お前。何でわざわざDREAMで米食うんだよ。」
「ホントですね…理解できません…」
「よく言われるけどな。でもやっと形になって来たのに、それぶっ壊したら…キレるだろ?」
「まぁ…切れる理由はそれぞれでしょうけど…争う気は消えましたよ…」
「俺もだな…こんなので狙われ続るとか、馬鹿馬鹿しいわ…」
「っし、さんきゅーな。これ、借りで良いぜ。あっ、そうだ!北側で国でも作っちまえよ。で、あんたらの誰かが王になっちまえ。」
「はぁ?国?俺らが?」
「そうだよ?現実で出来ねぇ事をするのが楽しいだろ?」
「それは…戦争になるんじゃねぇのか…?」
「んー、そっか。なんとなく面白いと思ったんだがな。まぁ、今まで通りにエディンで共存でいいのかもな。」
「何となくで国作るとかねぇわ…そもそも交渉だって難しいと思うんだが、出来んのか?」
「お前らがこれ以上争う気が無いなら、約束は出来ねぇけど交渉してやるよ。そうだな…ここに来る前に街を見てきたんだが、冒険者ギルドは返さねぇとダメかもな。でも別口で水産物ギルドでもつくりゃいいんじゃねぇか?水産物は喜ばれてたぜ?俺も魚食いてぇし。あ、海鮮丼もいいんじゃ…って、醤油がねぇな…」
「じ…自由ですね…」
ミズキの思い付きをガンガン突きつけられて、特に考える時間もないままに勝手に話が進行してしまっている感じに、リンクも呆れ果てつつも思う存分DREAMを楽しんでいるだろうミズキに多少同調する部分を感じていた。
交渉と言う名の脅し…ですね。




