68.誰とでも、誰にでも
ある意味で念願の水中散策を楽しむミズキ。
地上に比べて水の抵抗は大きいものの、思った程でも無いのは魔法か特殊な何かなのだろうか。推進力だってエンジンが付いてる訳でもなければ、後方に泡の様なモノが出ている訳でも無い不思議推進なのだから、どっちも考えるだけ無駄なのである。
解らなければ聞けば…と、一瞬頭をよぎるも、聞いたところで多分原理など理解も出来なければ、聞く事で変に勘繰られるのも面倒だと思いとどまった。
風を切って…ではなく、水を切って…ぐんぐん進む。
水着ではなく洋服を着ている為に、胴や脚の部分は余計に抵抗を感じるので、キッチリと踏ん張り、手すりにもしっかりと捕まってはいた。
それに対して、目の前の魚人は服は着てもおらず、全身がウロコ肌でキラキラと光っていたりもして意外と綺麗に映る。別方向に目を向ければ、日の光は海面を輝かせ、側面にはいろいろな魚が泳ぎ回り、今迄に見た事の無い景色が流れていくのだ。
その内に大陸棚的な浅い部分から、急に深くなる様な坂を下り始める。
そうして深海と言うほど暗くは無く、2段目とでも言えばいいのか次の棚を少し進んだ処に大きな岩礁群が目につき始める。そして、その岩礁群の一部に門の様な物が見え始めたと思えば、その門の前で降りる様に指示された。
そして気が付く。返事をしようとしたが声を発する事が出来ない。
さてどうした物かと考え始めるも、そんな事は意にも介さない様に魚人は付いて来る様に促すので、さも水中専門だと感じさせた手前、仕方なしに手で漕ぎつつ門をくぐり何とか前に進むが、苦労を見かねたのか魚人がミズキに手をかざすと、急に行動が楽になる。恐らく何かしらの魔法でも掛けてくれたのだろう。
そんな事を体験しつつ、岩礁の中に入り階段を上ると…驚く事に空気のある部屋に通された。
急に重く感じる体に、膝を付きそうになりながらも堪えると声を掛けられた。
「我々以外には、水中とこうした空気の中の往来はきついかも知れませんね。」
…と、気遣いまでくれた。そして声が出せる事にも改めて気づく。
「水中ですと、会話もままなりませんので助かります。」
そして、会話当初からの違和感に気付き、問題無いであろうと問うてみる。
「失礼ながら、魚人や蜥蜴人の方は会話が流暢ではない印象が有ったのですが、お上手ですね。」
「あぁ、正式な対応に関しては、会話の流暢な物が選ばれるのですよ。私には会話以外の特技は無いんですけどね、ははは。」
「でも、先程、私に魔法をかけて下さいましたよね?あれも充分特技なのでは?」
「あれ位は、水に携わる亜人なら子供でも使えますから、特技とは呼べませんよ。」
「皆さん、凄いんですね…」
「…」
「どうされました?」
「貴方は…不思議な人ですね?私達を気味悪がる気配がまるでないどころか、上に見る様にさえ見受けられました。」
「あぁ…私は自我は存在すれど、人形ですからね。見た目は人間でも。」
「そうでしたね。それでも…ですよ。」
「貴方も私も人形だと知った後も、自然に対応してくれたじゃないですか、それと同じですよ。」
ミズキの感覚からすると、プレイヤーだろうが、AIだろうが、自我を持っている者は誰にしろ扱いを変える気は無いのだ。体を持たないテンに対してでさえ変わらないのがその表れでもある。
「なんなら、友達になりませんか?私はミズキと申します。」
「…本当に変な人ですね。でも…あなたの友達になるのは楽しそうですね。」
「「宜しく。」」
そう言って、ミズキの差し出した手を握り返して名前を教えてくれる。
「私はフィーナと申します。友達…と、言ってもそうそう交流が出来るかはわかりませんけどね。」
「すみません…もしかして女性の方…ですか?」
「ふふっ。地上の方からするとわからないかも知れませんね。お相手が女性でしたので、こちらも女性が対応させて頂いたのですよ。」
「なるほど…」
「おっと…あまり長話もしていられません。この砦の責任者にお会い頂きます。」
「私、意外と信用されているのでしょうか?」
「いえ、お一人でいらっしゃったからだと思いますよ。」
「そうですか。」
なんだかんだで魚人と友達になってしまい、責任者と面談できる機会も得られた。
さて、ここからが勝負だと、心の中で気合を入れていると…ボソッと…声が聴こえる。
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『死ぬんじゃないわよ。』
(ん?いや、今日は最終的には死ぬけどな。)
『は!?』
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短いやり取りの中、たった一言でテンを驚かせ終わった処で、責任者の待つ部屋に通される。
まぁ…何と言うか、御都合主義的な話でしょうか…
魔法…って言葉が便利過ぎるのが怖いです。
そして、フィーナの名前はフィッシュからの連想…安直すぎます(笑)




