67.〇〇散歩
意図的な勘違わせで潜り込んだのは水棲人の本拠地手前。
どこまで何ができるやら…と観察するテンを内に秘めながら、ミズキは水棲人のプレイヤーを見つけようと考えている。NPCと会話をしても話は進まないと思っているから。さて、ここからどうなるのかと思っていると、現地のスタッフが現れる。
「コークの商業ギルドの方がどのような御用ですか?」
ミズキの思惑通りに勝手に勘違いされている。嘘は言っていないのだから。
「エディンと商売でも出来ないかと事前の交渉に伺わせて戴きました。」
「それは…この先の事を知られた上での交渉なのですか?」
「えぇ、事前にしなければならない、大事な案件ですので私が参りました。」
ハッタリも良い処であるが、前に進む為にはとりあえず動くのだ。
「…と、言いますと?」
「私なら水の中でも活動出来ますから。」
その言葉を聞くや否や怪訝そうな顔をするが、理解してもらう為に
「少しお手を拝借しますね。」
その言葉を言うや否や、席を立ち、相手の横まで移動した後に相手の右手を掴んで自分の胸にあてがう。
「なっ…?」
と、照れる様な驚く様な態度を取りはするが、その手がミズキの胸に当たるや否やミズキと目を合わす。
「解りましたか?私はオートマタ…人形なんですよ。呼吸は必要ありません。」
「それで…」
「えぇ。それで、私です。」
完全に古典的な詐欺の手口である。思わせぶりな事しか言わず、相手に勝手に都合の良い事を思って貰う。だからと言って進展があるかは解りはしないが、何とかプレイヤーと話をしなければ…思う事は出来ないのだから。
「よくご存じでしたね。」
「ギルドと言う組織柄…ですかね。商人に取って情報は命にも等しいのですから。」
「ここでは判断出来かねますので、少々お待ち頂けますか?」
「えぇ、良いお返事をお持ちしておりますよ。」
第一段階はクリアした様だ。
無下に扱えば不利益になると感じさせる事が出来れば、責任者が出てくるのは現実世界でもよくある事だ。それでもテンの様なAIが存在する事も考えると絶対に上手くいくとも思っていなかった。
それでもここまで来てしまうと…「ちょろい」…と感じていたりもする。
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待つ以外の事が出来ない現状でする事は…例の会話。
(どーなると思うよ?)
『あんたの思惑通りじゃないの?』
(はー、んじゃ、後は交渉次第かねぇ?)
『恐喝と言うか、脅しになりそうなもんだけど。』
(んなこと言うなよ。俺なりに頑張ってるんだぜ?楽しめよ。)
『楽しんでるのは、あんたでしょ?』
(んだな。違いねぇ。)
テンはミズキが何をしようとしているかを現状知っている。
何の為にしようとしているかも、結果がミズキにどんな影響を及ぼすのかも知っている。それはミズキが既に考えていた事だから。それに対する妄想も知っている…その妄想を現実にしようとしているのも知っている。
それに対して何を言うわけでも無い、ただテンは見守るだけ。
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そんな会話をしていると、先ほど対応してくれた水棲人らしき人が戻ってくる…蜥蜴人と魚人の違いは当たり前のようにわかっても、正直言って同じ種族の水棲人の違いなんてわからないのだ。
「お待たせしました。では、ご案内いたしますが…お着替えになられますか?」
「いえ、特に水中用の服装の用意はありませんので、このままで。」
「そうですか。では、ご案内しますね。」
そう言われて後をついて行く。
はてさて、どんな手段で水の中に存在するであろう拠点なのか楽しみにしている処、目の前に用意されたのは、楕円形の板にT字状の手すり用の棒が垂直に突き刺さった奇妙なそりの様な代物だった。
部屋の中の存在する小さなプールに浮いているそれに、沈むのではと心配しながら二人で乗るが沈むことはない。足元にはつま先を入れるような形で穴が開いているのでそこに爪先を入れて、手すりをしっかり握るようにと言われた指示に従うと、徐々に沈み始め、足元から水に浸り始める…頭まで浸かると視界は暗くなり、感覚的に沈んで行くのはわかるが視覚ではわからない。
そして、底に着いた処で…明るくなり始め、海底の世界が目の前に広がった。
とは言っても湾の中では言うほど深くもない様である、それでも念願の海底移動だ。呼吸をせずとも問題は無く、水中眼鏡なんてなくとも視界はそれをかけた時の様にクリアな視界…そんな状況にミズキは興奮している自分を抑え、今はただ海底散歩?を楽しんでいた。
歩きたかったけど、歩くことはできませんでした。




