56.違和感と進捗と
るぅが言うには、先程ロッタが作ってくれたマヨネーズは、自分の知っている作り方と違うと言う。細かい分量や使っている材料云々ではなく、卵を全部使っていた事に違和感があったらしい。
るぅの知っているマヨネーズのレシピは、卵の卵黄だけを使うとの事だが、先程ロッタが披露してくれたマヨネーズは黄身と白身を分けずにそのまま使っていて、そこに違和感を覚えたと言うのだ。
この世界に好まれる味と、自分たちが美味しいと思う味に開きがあるなら、それはそれでありがたいのかもしれない…と、ミズキは思う。自分では美味しいと思う物をそのまま普及させることも出来そうだから…と、考える。
白身を取り除かない事での大きな味の変化に関しては、ミズキもメグミも想像の域を出ない。とりあえずは現状でマヨネーズを作るためにも、泡だて器を作って貰ってからになるだろうと、るぅにはその時に頑張って作って貰えるようにお願いした。
…と、言う事で次に目指すは鍛冶ギルドだ。
先程目にした魔道具の様に簡単に作る事は出来ないにせよ、フォークに比べればはるかにマシになるであろう泡だて器。あれ位であれば、この時代でも比較的容易に作る事は出来るだろうと鍛冶ギルドを訪れる。
結果はと言えば…
作る事が出来そうだ…と言うのが結論だ。
リチャードの紹介状の御蔭だとは思うのだが、突然の訪問・相談・依頼にも関わらず丁寧に対応をしてもらう事が出来たのが非常にありがたかった。
当初、ミズキとメグミが口頭のみで説明しようとしても埒が明かなかったのだが、メグミがイラストを描いて見せる事で職人が理解してくれ、作成の目途がついたのである。メグミ様様だ。
針金に同じ曲線を描かせる為に溝を掘った弧を描く型などを依頼する為に木工ギルドにも協力を取り付ける必要があるという話があったが、剣などの武具、フォークやナイフをはじめとしたカトラリーなど、金属部品に木製の柄を付ける木工ギルドとの共同作業は普段から多いと言う事で、ミズキたちが直接やり取りをする事無く鍛冶ギルドが直接交渉してくれる事になった。
形を再現するのは比較的簡単と言う事だが、実用に耐えうるかは別の話らしく、鍛冶ギルドで幾つか試作品を作った上で納得するものが出来上がったら納品する事となった。
その際に面白い提案が出された。
この完成予定の泡だて器が出来上がった際に、商業・鍛冶・木工ギルド共同で製品の登録を行えないかと問われたのだ。これは特許の登録申請の様な物らしい。
売れるかどうかもわからない道具でもあるし、ギルドが絡むなら、これに関しては即断する事が出来ないので、リチャードに問い合わせて貰う様にお願いした処で鍛冶ギルドを後にした。
そんなトントン拍子に話は進む中、ミズキはテンにリチャードへの報告を入れてもらう様にお願いした後、往来でミズキはメグミに礼を伝える。
「メグさんのお蔭で助かりましたね。ありがとうございました。」
「えっ、あ…どういたしまして。役に立った?」
「とっても。言葉で伝えるって難しいですねぇ…それにしても絵が上手かったですね?」
「そっちはリアルのスキルだけどね♪」
ミズキが珍しくメグミに感謝を含めて話をしていると、ミズキの服の裾が引っ張られる。
何もしていない自分が不安なのか、るぅが淋し気な表情でミズキに問うてきたのだ。
「…わたしは…なにすればいい…?」
「そりゃ、るぅねぇには、マヨネーズを作る仕事が待ってますよ。」
「…わかった…がんばる…」
自分にもやる事があってホッとした様子が見てとれる。
現実世界であれば、ハンドミキサーも無いのに、泡だて器一本でやる作業は男性に任せられたい処かも知れないが、如何せんDREAMに於いてのミズキの腕力は最底辺なのである。ひたすら撹拌する持久力なんかありやしないのだ。
「そう考えると、俺、何も役に立ちませんね。」
「いやいや、今、こうなってるのは君の行動力の賜物でしょ?」
「しかし…何というか、なんでDREAMの中でまで、働いてる感じがするんですかね?」
「…おもしろいよ…?」
「まぁ…そうかもね。でも、僕はこの世界でこんな事をしている事が楽しいよ?」
「二人が楽しんでくれてるなら…いいんですけどね。」
自分ですら呆れつつある状況を、二人は楽しんでくれている事がありがたい。
やりたい事をやるだけなのだが、何故かこうなってしまっている。自分自身は楽しくはあるが、二人が楽しくないなら、どうにもバツが悪くはあるのだから。
そんな話をしていると、テンが「商業ギルドに寄れ」とのリチャードからの返事を教えてくれる。そうして3人は報告がてら商業ギルドに向かう事にした。
メグミさんが活躍。ミズキは役立たず。るぅの影が最近薄い…
200731 抜けている文章の補填、改行の調整。
200909 (注意書き)本来のマヨネーズの作り方は油を数回に分けて攪拌して乳化の安定を図るので、全部いっしょに混ぜるのは分離の原因にもなります。魔法で凄まじく攪拌したから大丈夫と言う事あたりでご容赦を。




