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55.違いの分かる犬娘

 エマの手配と紹介状を手に、テンの案内でマヨネーズ工房に向かう3人。

 ミズキを覗く二人は一応、この世界のマヨネーズを口にした事が有るらしい。


「でも、こっちのマヨネーズって何だか薄い感じがするんだよね。」


「…うん…うすい…」


「道具もそうだけど、料理も旨いよねぇ…現実世界。」


 そんな話をしながら、さほど遠くはない場所にその工房に到着する。

 工房とは名ばかりと言うか…見た目は普通の一軒家にしか見えない。こんなものなのだろうか?そんな感覚で中に入ると、白衣姿で白い帽子を被った女性が出迎えてくれた。


「いらっしゃい。あなた達がリチャードの手伝いをしている人達かしら?私はロッタよ、宜しくね。」


「宜しくお願いします。」


「…よろしく…」


「宜しく…です。」


 出迎えてくれたロッタと挨拶を交わし、マヨネーズの作り方に関して話を聞く。

 本来なら大して高価なものでもない代物なのだが、フレッシュ志向とでも言うのか、新鮮志向というか、保存した物をありがたがらない貴族文化とやらのせいで、作って直ぐのマヨネーズがありがたがられる風潮と、とにかく人力作業だと手間が掛かるとの事で高価な代物になる事を教えてくれた。


 人力作業の手間…に関しては、企業秘密らしい魔法を用いた道具…ミキサー的な何かが存在するらしく、後で実際に目の前で作ってくれるそうだ。


 また手間を惜しまなければ作る事が出来るし、保存する前提であれば魔法で滅菌処理していない卵でも比較的安全なマヨネーズを作る事は出来るそうだが、いかんせん、卵の価格しかり、作業に魔法…しかも、細かい作業が関わってくると値段が高くなってしまうそうだ。

 そこまで手間やお金を掛けずとも、サワークリーム等の代用品は存在する為になかなか一般的に普及はしていない…と言う処らしい。

 ミズキが安価なマヨネーズを普及させたい…という話をすると、ミズキの思惑通りに品質が劣るものを普及させる分には市場も被らず問題も起きないだろうと言う考え方だった。


 因みにマヨネーズの分量の1割程を酢が占めて、かつ、作ってから1日も置く余裕が有るならば、現状の卵でもまぁ、安全だと教えてくれた…次なる敵は手間なのか…?


 そんな貴重な話をありがたく聞いた後に、ロッタに連れられて広めのキッチンの様な場所に連れて来られると、アイランドキッチンの様な台の上に、材料と思われる品々と、ガラスの筒が付いた何か…が置かれている。


「じゃ、実際につくって見せようか…と、言っても、材料をこの筒に入れて、魔力を流すだけなんだけどね。」


 そう言って卵を割って入れ、お酢、油、塩、水を入れて蓋をする、そして蓋を抑えると…薄く緑色に光ったその筒の中に入った材料は少し間を置いて…筒の中でドロドロに混ぜ合わさった…きっとマヨネーズなのだろう。

 蓋を開け、スプーンにすくい、手の甲を出す様に促される。各自の手の甲に少量のソースをたらされ、味見をする。


「マヨネーズですね。」


「そりゃそうだよ。マヨネーズを作ったんだからね。」


 味見をしたマヨネーズは確かに薄いが、この味がこの世界の標準なのかもしれない。


「その筒は…魔道具ですか?」


「そうだよ、魔力を流すと風の魔法で中を撹拌するんだよ。これが無しで人力でやろうとすると…まぁ、時間も掛かるし大変なのさ。昔はフォークなんかでひたすら混ぜてたらしいよ。まぁ、この魔道具のお蔭で、御貴族様の目の前で作るマヨネーズが流行りになったんだろうねぇ。」


「なるほど…」


「それで、商売にはなりそうなのかい?リチャードがワザワザ寄こしたんだ。そう言う事なんだろ?」


「道具次第…でしょうか…魔力の無い一般人が簡単に使えそうな道具を考えるか、自分達が労力を掛けずに済む方法次第…ですかね。それを考えますよ。」


「あんたらも、大変だねぇ。」


「いえいえ。でも、助かりました。特に酢の話はありがたかったですよ。」


「あー、でもねぇ…この辺の連中は、生で卵を食べる習慣がないから、そっちの習慣をどうするかの方が大変だよ。多分ね。生卵は危ないって思っているから。」


「はぁ…そうなんですねぇ…まぁ、いろいろ考えてみますよ。試作品が出来たら、味見とかって…お願い出来ますか?」


「いつでもおいで。」


「因みにその魔道具って…高いんですか?」


「高いよぉ…下手したら、家が買える位に。お貴族の道楽が生んだ嗜好品だね。」


「うっへぇ…ともあれ、また相談させて下さいね。」


「あぁ、またおいで。」


 そうして、御礼を言って工房を出た三人はロッタの前では口に出さなかったマヨネーズの感想を口に出し始める。


「なんか、とてもあっさりした感じ…でしたね。」


「あんなもんだよ。こっちのマヨ」


「…こっちのマヨネーズ…きみだけじゃなかった…」


「…ん?」


 ミズキとメグミが感想を口にする中、るぅが作り方…いや、材料の事を口にしたのだ。

 マヨネーズを色々と調べていたら、サルモネラ菌をお酢で殺菌する事で普通に口に出来ると知りました。(作成直後に食べたらダメらしいです。)それで、どうしたものかと無理やりこんな話を入れた次第…ダメダメですね…


因みに日本の卵だけは、そう言うの関係ない環境の様です。

更にマヨネーズの話が続きます。


200730 誤字など訂正


200909 (注意書き)本来のマヨネーズの作り方は油を数回に分けて攪拌して乳化の安定を図るので、全部いっしょに混ぜるのは分離の原因にもなります。魔法で凄まじく攪拌したから大丈夫と言う事あたりでご容赦を。

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