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29.勝負

 ミズキが一通り用件を話した後は、飲みつつ食べつつ何となしに雑談が始まった。


 二人は現実世界の同級生で、昨年の夏DREAMのリリースされた直後位から始めた初期組だそうだ。メグミが入ったボーナスを使って購入、るぅも誘って二人で一緒に始めたらしい。

 インドア派のるぅは他のVRモノは経験済で、尚且つ興味はあったらしく、一人では不安だったものの渡りに船と誘いに乗った形で基本的には多くの時間を二人で行動してるとの事だが、たまたま一人で行動していたら、面白いプレイヤー…ミズキの事だが…が釣れたそうだ。


 るぅの話を聞いた上でのメグミの主観での話ではあったが、大体は把握できた。基本的には冒険主体だけど、観光と言えばいいのかDREAM世界を見て回ったり、戦闘ばかりではなく、この世界を楽しんで体験している様が感じられた。


 その上でメグミはミズキの「手品」に非常に興味を持っている事をストレートにぶつけてくる。


「さっき話してた実験台の話なんだけどさ、僕を実験台にしないかい?」


「んー、もう大体解ったんでしません。」


「ノリ悪いなぁ、もう。」


「1対1なら、俺負けないと思うんですよね。勝てもしませんけど。」


 始めたばかりの初心者に上から目線で語られ、カチンと来る。


「はぁ~!?レベル1が何言ってんの?僕が負けるわけないじゃん。」


「ぃゃぃゃ、だから勝てませんよ?でも、負けもしません。」


 負けない癖に勝てないって何なんだと…ミズキの言う事が理解出来ず、理解出来ない事が頭に血が昇る事に拍車を掛ける。そして大人げない言葉を紡ぐ。


「僕と勝負しなよっ!」


「嫌ですよ、面倒臭いし…何の得も無いのに。」


「るぅにはしたんだろっ!」


「あの時は実験だったので、知るって言う意味があったんですよ?」


「あー言えばこー言うっ!じゃあ、負けたら何でも言う事聞いてあげるよっ!これでいいだろっ!」


「女性が何でもするなんて、言わない方が良いですって…俺、これでも男なんですから。」


 ミズキは意識してやっている訳では無いのだが、メグミ視点ではやたらに余裕のある態度が鼻について仕方がない。どうしても降参させてやらないと気が済まなくなるのだ。そして、さらに他から油は注がれる。


「…おとなげないよ…?」


「るぅ…あんたまでそいつの肩を持つの…?」


 るぅににじり寄り、睨みつけ、二人の間に険悪な空気が流れるが、空気を読まない犬娘は続ける。


「…めぐも…逃げられなくなるよ…?」


 トドメである…その言葉はるぅ自身がメグミが負ける可能性があると思っていると言う事と同義だ。メグミはプルプルと震え、怒りの捌け口を捜している状況なのが見て取れる。

 原因は自分が勝負を受けない事なのだと結論付けて、ミズキは仕方なさそうに提案する。


「はぁ…じゃあ相手しますから、るぅさんへの威嚇はやめましょ?」


「言ったなっ!逃げるなよっ!」


「ただ、お願いがあるんですけど、人目につかない場所でお願い出来ます?」


「じゃあ今すぐ、冒険者ギルドに行くよっ!」


 何が「じゃあ」…なのかは理解できないが、人目に付かない場所を提供してくれるなら問題ないので言われるがままについていく。そうして到着するなり冒険者ギルドの扉を開けて入り、スタッフに興奮した声で依頼する。


「プライベートPvPのフィールドを貸して下さいっ!」


「今すぐですか?」


「ですっ!」


「かしこまりました。では端末から17番フィールドをご利用ください。利用者は…3名ですか?」


「うん、3名でお願い。」


 知らない言葉が飛び交うが、フィールドと言うなら戦闘用の練習場みたいな処が有るのだろう。案の定、ギルドの片隅には例の巨大飴玉が鎮座しており、触れるように指示されるので言われるがままに触れると、だだっ広いフィールドに飛ばされた。


「ただの草原ですね?」


「他人に見られず戦闘の練習する為に、冒険者ギルド員が借りられるんだよ。」


「要は練習場なんだ…これは便利だね。」


「これならいいだろっ!じゃあ、勝負だ。」


「ぃゃぃゃぃゃ…普通じゃ相手にならないですってば…ルールを決めさせて貰えませんか?」


「言ってごらんよ。」


 そうしてミズキが提示したルールは1つ。どれだけ有利な条件を言い始めるのかと身構えていたのに出した条件は拍子抜けする位にシンプルだ。


 ---相手が「まいった」…と、言えば勝ちだと。---


「始めてすぐの降参は認めないよ?」


「言いませんってば。メグさんに言って貰いますから。」


「…言うじゃん…けど、何でこんなルールなのさ?」


「俺が殴った処で、ダメージを与えられると思います?」


 相変わらず、相手を煽る様な言葉ばかり発し、理解出来ない事ばかり言うミズキに対して、ルールにも問題も無いのでメグも承諾し模擬戦は開始される事になる。

 互いに5メートル程離れた位置に立ち、準備も互いに終わっている。


「るぅねぇ、開始の合図貰えます?銅貨を落とすとかでいいから。メグさん、地面に落ちたら開始でいいです?」


「いいよ。」


 メグミもシンプルに了承する。

 るぅは銅貨を取り出し、指で弾くでもなくそのまま掌から落とした…戦闘開始である。

天然なミズキとるぅ、苛立つメグミの構図です。

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