26.契約提示
呼び出しを喰らい、商業ギルドに向かう事にする。
本当はこの血まみれの服を買い換えたい処なのだが、ログインポイントを足しても5000ちょっとしかない。商業ギルドに行けばお使い代金も入るだろうから…と、仕方なしに。
エマに頼んでいた事もあるので足を運ぶ予定ではあったものの、自分の意思で赴くのと、呼び出されて行くのでは足取りも異なる。呼ばれる理由もわからないが、結局は行くしかないのである。
「こんにちわ。」
「あぁ、ミズキさん。お待ちしてました、あちらでお待ちください。」
エマに促され、応接室に通される。部屋に一人ポツンと残され、下座に座りどれだけ待つのかもわからないので、テンに話し仕掛けることにした。
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(なぁ、何だと思う?)
『解らないから来たんじゃないの?』
(だよなぁ…嫌な予感しかしねぇ…)
『そうなの?』
(この手の流れで、いい話になるか?)
『解んないわよ。そんなの。』
ミズキからしたら結果は解らないが不安しかない。黙っていると悪い方に考えが向かうので落ち着く為に話しているのだ。そんな捉えどころのないやり取りを繰り返して居るとお声が掛かる。
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エマがリチャードを連れてやってきた。
見た感じ、怒られる様な雰囲気ではないが、いまいち状況も掴めない。
「おぅ、ミズキ。ちゃんとお使いしたらしいな。」
「しましたよ?けど、なんで呼び出し受けてるんですか?」
「お前、解ってんだろ?エマに鑑定依頼出したんだし。」
「良い方だったんですかね?」
「まぁな。」
リチャードの話す内容にミズキも納得する。ミズキの予想は当たっていたのだ。
「で、これはお前の仕業か?それとも、先日同行した冒険者の仕業か?」
「俺ですかね。多分。」
「多分…なのか?」
「確信は無いけど、それしか考えられないんで。」
ミズキは前回のウサギでの実験と、パブのスタッフの会話から、なんとなく今回の話の予想をしていた。ただミズキ自身で確認する手段を持ち合わせていなかったので、おそらく確認手段を持つであろう商業ギルド側にエマを通して依頼を出したのだ。
「で、どうすんだ?」
「そのまま売ればいいじゃないですか。」
「お前…馬鹿だろ?頭使えよ…っつーか、初心者のお前の仕業ってなんなんだよ?」
返答する代わりに、目の前に黒い板を出現させ、中から枕とウサギの死体を取り出して見せる。
「これ、次元収納か?珍しいな。」
「知ってるんだ?きっと、こいつのせいですよ。」
「はぁ?」
ミズキは取り出したウサギが3週間位前の物だという事と、今迄に試した(遊んだ)実験の結果、自分の予想等を話すとリチャードが身を乗り出して威嚇する様な命令口調で話す。
「これ口外禁止だ。今の予想も含めてな。」
「はぁ…」
怪訝そうな表情のミズキにリチャードは説明をし始める。
今回ミズキが持ち込んだ卵と同等なものは存在もしているし問題も無い。ただ普通の卵の10倍の価格でも売れる。貴族のお偉いさんや美食家なんかが好んで食べる為に買うからだと。
しかし、現在普及しているその卵の制作方法と言えば、高位の光魔法キャスターが卵1個1個手作業で手当てして作った代物だと言うのだ。
レアスキルとは言え「次元収納」を持っていたプレイヤーが居ない訳ではないが、普通の拡張収納と似た様な使用法でしか使われていないか、配達物を詳細に鑑定する等と言う発想を持たなかったのではないかと言う。導かれる結論は「手間が掛からない高級品の製造方法の発見」である。
ただ、そうした発想が生まれなかっただけで、気が付いてしまえば余りにも簡単な方法である為に、アッと言う間に話が広まって真似をする奴であふれるのではないか…スキル自体がレアなので一気にではないにせよ、ライバルが居ないに越したことは無いと…そう言うのだ。
「ご丁寧にどうも。それで、どうしたいんです?」
「お前と契約したい。」
「はぁ…何のです?」
「秘密保持と定期的な作成作業に関してだ。」
「俺のメリットとデメリットは?」
「メリットは作成方法の互いの隠匿、そして隠匿しながら商業ギルドの流通網を使っての収入の確保。デメリットは作成方法を使ってお前独自の商売が出来ない事と定期的なギルド出向の義務付け位か。」
「んー、いいですよ。」
「軽すぎるな…理由は?」
「俺が受けなきゃ、他のスキル持ち捜すんでしょ?そしたら俺は儲けられないじゃないですか。逆になんで俺なんです?そもそも黙っときゃその内に御自身で方法見つけたんじゃないですか?」
「一つはお前が方法を見つけた事。一つはお前を外したら口止めできない事。そして儲け話は関わった全員で一緒に儲けてぇのが俺のやり方ってこったな。」
「へぇ…もっと悪どく稼ぐのかと思ってましたよ。ギルド長なんて言う立場の人は。」
「お前なぁ…あと、俺、一応ここのトップな?人が居なきゃまぁいいが、人前では自重しろな?お前最低ランクのギルド員なんだからな?」
「はーい…」
この後、リチャードは当件に関する中長期的なプランを簡単に話してくれた。
稼げるのは間違いないが、一気に供給が増えると怪しまれてしまう為に徐々に供給を…しかも既存の先行業者よりも安く広く普及させて行きたいらしい。最終的には製造方法が広まり、普通の卵よりは高くなるにせよ、一般市民でも手が届く値段に落ち着かせたいと言う。
その為に自分が使用する分は問題ないが、商売として使わない事。使う際には事前に必ず相談をして欲しい事を詰められる。ギルドが指定した量を指定した時に造り、徐々に供給量を増やしていくと。
「流通なんかの商売は本職にお任せします。餅は餅屋ってね。」
「任せとけ。後、お前のランクをDに上げてノルマも免除してやる。お前の仕事は他に商売になると思うもんを考える事だ。いいな?」
「大盤振る舞いじゃないですか。楽でいいですけど。」
「あと、この事を知ってそうな奴はいるか?居たら、とりあえず口止めと、早めに一度連れて来い。」
「フレンドになった子がいて、その子位ですかねぇ…メッセージ入れてみますよ。」
「お前を現場蘇生した奴か?」
「ですよ。」
「じゃあ、契約はその時にそいつも合わせて一緒にするか。時間が分かったらメッセージをよこせ。なるべく時間をあける。あと、今回の卵の仕入れ代金、色付けといてやるから、明日にでも確認しとけ。」
「わかりました。」
とりあえずの今後の方向性は見えてきた。稼ぎ方も決まってきた。今後は決まったお使いも無いとなれば散歩でもしながら、儲けられるアイディアを捻りだせば良いって事だ。
そんなことを考えるミズキを汚い物を見る様(実際、汚い訳だが)な目で見て呆れ果てた上で言い放ってくる。
「お前、その恰好も何とかなんねぇのか…?」
「だって、卵のお使い代くれないから買えないし、服の予備も無いわで洗う事すら出来ないんですよ?」
「エマぁ、スタッフの服をこいつに1セット用意してやれ。パンツで。あとシャワーの準備な。」
「俺、ギルドスタッフとかにはなりませんよ?」
「そんなんじゃねぇが、それはやるよ。服は後で自分の好きなのを買えよ。今の恰好はいただけねぇって。あと、ついでに体も洗ってけ。」
そうしてエマに連れていかれてシャワールームへと連れていかれる。シャワーと洗面台がセットになった個室の様な場所で、内側から鍵が掛かる様になっている。着替えやタオルも既に準備されており、入る様に促されるのだった。
ミズキの結論は殺菌なんですが、上手く繋げられなくて、こうなっちゃった件。
サルモネラ菌?がどうとかで、欧米では現代ですら生卵を食べる文化はあまりないらしい…って事から書いた話。
後書きで説明しないと駄目な辺りが、文才の無さを感じます…




