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20.おねぇちゃん

閑話の話、補足を入れました。

誤字脱字は無くならない様です…(泣


 仕入れを済ませ、お腹も落ち着き、ムーノ村を後にする。


 馬車に乗っている時には気が付かなかったが、道は踏み固められた感じの土の道が南と北に延びている。道幅の端だけが石で舗装されている感じである。

 

「…コークまではいっぽん道だから…迷わないよ…」


「4時間歩くんでしたっけ?」


「…そぅ…それ位だとおもうよ…」


 4時間も一緒に歩くという事は、四時間何をするのかと言う試練でもある訳で、単純におしゃべりをする事を選ぶのだが…共通の話題なんてそうそう思いつかない…と、思いつつ、ふと思い出した事を口に出す…


「そういえば、尻尾「いや」…」


「…いやっ…」


「るぅさん?」


「…ローブめくるの…?」


「…納得しました。」


 尻尾と言う単語が出た瞬間に即拒否される。流石に天下の往来でスカートめくり(ローブだけど)をする度胸も無い。なんとか捻り出した話題を一瞬で潰される。こうなってしまうとなりふり構っていられない。相手の話をただ聞く事に方向転換する。

 

「自分のこっちの世界での話って余り無いんだけど、るぅさんはこれまでどんな事をしてきたとか、話聞かせて?」


「…わたしのはなし…?」


「俺の話もしてもいいけど、すぐ終わるんで。」


「…わかった…みずきちゃんも後ではなすんだよ…?」


「いいですよ。」


 そうして、彼女は自分の事を話し始めた…ゆっくりと。


 るぅの当初のこのゲームでの目的は冒険をする事だった。多くのプレイヤーは冒険者になる様で、彼女も御多分に漏れずその口であり、性格的に最前線で率先して殴り合いをするタイプでもない為に、回復職的な立ち位置目指して成長させて、戦って、レベルを上げて、ダンジョンに潜り、強くなって、強い装備を集めたりしていた。


 自分では色んなものを見たい、体験したい…そんな感じの進め方がしたかった。色んな所に行くには強くなるのが必要だった。回復職と言う立ち位置のお陰でパーティーを組むのに苦労もせず、ただ誘われるがままに色々な処で戦って、治した、強くはなった。けれど、効率的に強くなりたい人達と上手く馴染むことが出来ずに、徐々に戦う事が嫌になって、色んな所に出向いて景色を眺めたりする様になり、そんな際にミズキと出会ったのだと。

 辞めようと思っていた事は口にはしない。

 

「じゃ、るぅさんは休憩中って事だね。気分転換すればいいさ、何でも出来るんでしょ、この世界。」


「…きゅうけい…そうだね…」


「前に俺に聞きましたけど、るぅさんは今、何がしたいんです?」


「…んー………ミズキちゃんの観察…?」


「はぁ!?」


「…ミズキちゃんは…へんだから…おもしろい…」


「変はもういいって…助かりますけど。」


 何でも出来る…と言うこの言葉。

 ミズキはそのまま受け取り、料理をするなんて言っている。

 自分はゲームの主人公になる…位にしか捉えていなかったのだけれど、きっと冒険者以外にも、冒険以外にも、何をしようとしても良いのかな…と、固定観念を取り払う。今すぐ何かしたい事がある訳では無いけれど、目の前のプレイヤーを見てみたいとういう感情が口に出た。


 現実世界の常識と仮想世界の常識が近くあるミズキからすれば、るぅがほぼ初対面の自分に何故こんなに親切にしてくれるのか、今更の疑問でもある。観察したいから手伝ってくれるのだろうかと。


「でも、どうして俺に付き合ってくれるんです?」


「……初心者には…やさしくするもんだよ…?」


「そういうもの?」


「…そうだよ…おもしろいし…?」


「そっか。」


「……ひまだし…気にしないで…」


「じゃあ、気兼ねなく甘えるかぁ…ありがとね。」


「…ミズキちゃんの話は…?」


「んー、まだログイン2回目だから、面白い話もないけど…」


 …と、思い出しながら話を始める。


 仮想世界に興味がない事で現実で揉めた事、そんな時に機器一式を貰ったので始めた事、料理をしようと思ったら調理設備にたどり着くまでが大変だった事、米がめちゃくちゃ高かった事、頑張ったら商業ギルド長が米やら仕入れてくれそうな事…自分の中の結論は、お金を稼いで作業場の確保がひとまずの目標で、その最初としてムーノまで卵仕入のおつかいをしてる時に、るぅとであった事を伝えた。


 驚愕である…自分の思考とはまるで違う思考のみならず、初めて2日でギルド長に会ったとか、商業ギルドがそういうモノなのか…冒険中心だった自分の行動にはなかった出来事に好奇心も湧いてくる。


 何かが違う。


 一度は自分に合わないと思ってしまった世界。同じ世界に居るのにどうしてこうも違うのか。ミズキの目には何が映っているんだろう?菜の花畑の風景で共感できるなら、自分にもミズキと同じ世界を観る事が出来るんじゃないか…もっともっと楽しめるんだ。そう思ってポロリと口に出る。


「…みずきちゃんは…何がみたいの…?」

 

「んー?米?」


「…ぷっ…っっっっ…っ…」


 自分の意図するモノとは見当違いの返答に噴き出し、笑いを堪えられない。

 でもこの人はこれでいいんだ。変わらずにこのままでいてくれればいいな…一緒に居たら面白い物を見せてくれそうだし…そう思う。

 今迄の会話を思い出すだけで、危なっかしい感じはする…この世界の事を何も知らない。頼り甲斐がある様な部分を持ち合わせていそうな気はする…が、何かとトラブルを作ってしまいそうな雰囲気を持ち合わせている気がするのだ。


「米食べたいのって、そんなに変な事です?」


 ミズキは相変わらずのマイペースである。


「…少なくとも、わたしは考えたこと、無かったよ…?」


「じゃ、今から考えればいいだけなんじゃ?米、欲しくないです?さっきのデザートも旨かったけど、やっぱり米でしょ!」


 現実世界で満たしていれば、極論こちらでは睡眠も食事も必要ないのだ。米だって、現実世界で食べればいいだけなのに。

 必要のない事なのだから、考える事を放棄していただけだ。何だろう…思考の視点を変えるだけで世界がいきなり広がった。明るくなった気もする。


「…みずきちゃんは、つよい子なんだね…」


「…?…るぅさんの方が強いでしょ?」


「…つよい…か…そうだね…じゃあ、強いわたしはおねえちゃんになるっ…」


 るぅの言う強さとミズキの言う強さは全く違う。でも、るぅは訂正もせずにミズキに話を合わせる。そして、どうせやる事は無いんだ。色々手伝ってあげようと、小さな両手を握り締めて決める。

 何がどうしてそうなったのか理解できない「おねえちゃん宣言」に今度はミズキが目を丸めて驚く。


「おねえちゃん…?るぅさんが…?どう見ても…いも「おねえちゃんだよ…?」…」


「…おねえちゃん…だよ?」


「先輩位になりません?」


「…やだ…」


 るぅは一度言い切った手前、意固地になってしまって引かない。

 この二人も二人で考え方が違い過ぎる上に、互いに思い込みも激しい。


 ミズキはミズキで思考を巡らせる…どういう事なんだ…おねぇちゃん…どういう意味だ?そうして何とか無理やり結論を出した。あぁ…姉御あねごとかあねさんとか、そう言う感じなのかなと。そして、これを材料ねたに過去に却下された事の再交渉に入る。


「おねえちゃんとは呼べないんで…るぅねぇ…って、呼んでも良いです?」


「…いいよ…♪」


「じゃあ、「ちゃん」付を止めません?」


「…それは、呼び捨てにしたら…だよ…?」


 満足そうな顔をして、提案も即時却下…るぅの完全勝利である。

 頼まれると絶対防衛ラインに届かなければ中々断れない半面、先に言った事はそうそう曲げない…そんな、るぅであった。

るぅは、おねえちゃんになりました。早く呼び捨てにすればいいのに(他人事)


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