17.新しい申請と仕入
この思い付きが可能なのかを確かめたく、るぅをほったらかしにしてテンに声をかける。
(テン、ちょっといいか?)
『女の子をほったらかしてていいの?』
(るぅさんにも関係あるから…大丈夫じゃね?)
『…どういうこと?何の話?』
(テンと、るぅさんと俺で話出来ねぇか?)
『はぁ!?』
(いや、前にテンは俺にしか見えない、聞こえない…って言ってたじゃん?なんとかなんねーの?なんでも出来るんだろ?頑張れば。)
『話がおかしくない?それ、あんたが頑張らないよね?』
(テンが頑張ったら、すぐできねーの?)
『で・き・ま・せ・ん!』
(そこを何とか…なっ?)
『…今は出来ないけど、どうにかなるのか調べるわ…』
(さっすがテンだな。)
『出来る前提っぽい話にしないでよね。』
(テンは出来る子だっ!期待してるぜっ!)
相変わらず突拍子もない事を言い出すプレイヤーである。
もう少し事前に熟考してくれれば、何となく思考が流れてくるはずなのだが、いかんせん考えた事を思いつきで話しかけてくるミズキは、事前に考えを漏らさないやっかいな奴なのだ。
それでもプレイヤーの意見の一つとして上申をする律儀なテンではあるが、そもそもヘルプボットが皆テンの様に話す訳ではないのだ。こんな申請をしたとして…そして、仮に案が通っても使うのはミズキだけに違いない。そんな仕組みが果たして通るだろうか…それでも、テンは申請してみる。
ミズキがるぅだけでなく…ちょっとだけテンの事も考えてたから。
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「おまたせっ」
「…あぁ、おかえりなさい…」
「駄目だった、ごめんっ!」
放置されたと思ったら突然声を掛けられ、かと思えば一体何に謝っているのだろう?理路整然とした話し方をすると思えば、いきなり黙ったり、ヘルプボットと話すとか、やることなすこと一貫性が無くて読めないのだ。
「…なんのこと…?」
「あぁ、るぅさんがテンと話せないかって思ったんだけど、駄目だった。」
「…そ、そう…」
「じゃ、卵、卵っと。」
基本的におっとりとした口調のるぅは、思考もゆったりとしている。
なので、るぅにはやたら切り替えは早い、話題はすぐ移り変わる、そんなミズキは非常にせっかちに映る。でも、歩いていても特に引き離されることはない。
「…それで、どれくらいの卵がいるの…?」
「んー、幾つでも良いって言われてる。」
「…おかね…稼ぐんだよね…?」
「そうだよ、だから収納に入るだけ買ってくかなって。」
「…けっこう、てきとうだね…?」
初回は仕入代金をギルドが立替えてくれるので、仕入代金は心配しなくてもいい事。なので持って帰られるだけ持って帰る予定を話す。それを聞いた上でるぅが的確なツッコミを入れてくる。
「…たかい馬車…のっちゃダメだったんじゃ…?」
「まぁ…安全だし?馬車は。」
「…だめ…かえりは歩こう…?…いっしょに行くから、きっとだいじょうぶ…」
「それ、駄目でしょ?るぅさん、あの景色好きなんでしょ?」
「…もう、ミズキちゃんがいいばしょで見せてくれたから…いつでも見られるし…」
「それじゃ、コークに帰るの付き合ってくれる?」
「…ん……いいよ…」
「一人で4時間なんてする事ないし、ありがと。」
「…はやくたまご買おう…」
「だねぇ。」
現実の金銭感覚が、この世界の金銭感覚と上手くリンクしていない。事、取引に関しては事前に色々考える事が出来ていたものの、安全な現実世界と比較して、危険を伴うこの世界では安全を優先してしまったのである。
徒歩での移動に危険が伴うのかすら判断出来ないが、経験者が大丈夫と言うならそんなに問題はないのだろう。来るときは馬車だった、色々な体験を望むミズキからしたら、その提案は渡りに船以外のなんでもないのだ。さっさと卵を買って帰りたくなっていたりする。
養鶏場の前に居る二人は、卵を買うべくとりあえず近くの建物に入って声を出す。
「すいませーん!」
…
「はいはーい。いらっしゃいませー。どのようなご用件ですか?」
叫んだあと少しの間を置いた後、作業員らしき人が声を掛けてくる。
商業ギルドからの依頼で卵の購入に来た事と、今回は商業ギルドが立替える為に連絡が来ているはずなので確認して欲しい事、購入数は特に決まっていない為に購入数で価格が変わるのかを知りたい事、そして、あれば注意事項を教えて欲しい事を伝えた。
返答として、立替えの件は連絡が来ているので問題ない事。
購入は1単位=10個・1ダース単位=120個・1パレット単位=10ダース=1200個…という感じで希望の購入単位を伝えれば用意してくれる事。
価格に関しては1単位なら小銅貨12枚・1ダースなら単位当たり小銅貨11枚・パレットなら1単位小銅貨10枚…になるという事。
気を付けねばならないのは、卵を収納するダース箱・パレット箱を壊さ無いようにする事。 卵の価格とは別にはこの箱の代金をデポジットとして徴収し、納品時に箱のデポジット代金を返金して貰うのだ。軽度の損傷はお目こぼしがあるそうだが、大破した場合は程度に応じて罰金を払う事となるそうだ。
ビール瓶を酒屋に返しに行くと、瓶代金を返してくれるのと同じイメージである。
とりあえずは、ダース箱、パレット箱のサイズ等を聞いて検討する。
1単位 (12×30× 7cm) 小銅貨12枚/10個
ダース (72×60× 7cm) 小銅貨11枚/10個
グロス超(ダース箱×12で1組) 小銅貨10枚/10個
ざっと考えると3000個弱位は運べそうだったので、、キリの良い処で2グロス(2880個)の購入をサクっと決めて伝えると、少し待機する様に伝えられた後、ギルド証を確認してもらい清算し「次元収納」卵を片付けることにする。
「さて、片付けますかね。」
地面より少し浮かせた高さに、80×130×90の次元収納を出現させる。
るぅから見ると、突然空中に黒い板が現れた様に見えて少し驚くが、その黒い板に卵をダース箱を一個ずつ片付け始めると、それが収納用の空間であると理解するが、今までに見た拡張収納とは少し違う。
「…黒いんだね…しゅうのう…」
「普通の引き出しみたいのは、なんか白っぽいねぇ。」
「…てつだうよ…?」
「助かるよ。ありがとね。」
そんな調子で卵を収納に収めていく。レベルも高く、力も強いるぅは、バケツリレーの要領でどんどんミズキに渡して行き、ミズキがどんどん重ねていくのだが、その途中でトラブルは起きた。
ほのぼのな話が続いています。
200622
卵1パックの大きさを、12×30×8→8の部分を7に変更しました。
1㎥を超えてしまうと言う…1グロスを10ダースで計算していた様です。
それに伴って、前後の文章を少し削りました。
200713
るぅの口調の調整




