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11.立ち直りからのスキル遊び

あらすじを書き直しました。

 単純…なのかもしれない。


 確かにやりたかった事には時間と金と言う大きな壁が邪魔をした。仮想なんだろ?仮想世界なら何でも出来ると思い込んでいた。そうじゃなかった、現実と似たようなもんなんだ。

 挫折?そんなもん今迄でも幾らでもあっただろ?最終的にやれりゃいい、それまで好きな事やってりゃいいんだ、あそこは珍しい物で溢れてる、好奇心を満たしてくれそうだ、そんな世界を楽しみゃいいじゃねぇか…とミズキは開き直る。

 そうして、牛丼屋から戻ったミズキは、すぐさまDREAMにログインする。


(テンっ!)


『あら、お帰り。今回は早かったわね。』


(おぅ。めし食ってきたぜ。)


『早いわね…で、新しい目的でも出来た訳?』


(いいや、料理もやるぞ。でも、まずはこの世界を楽しむ事にした。)


『そう…まぁ、いいわ。それで何をするのよ?』


(色々なんかねぇ。戦闘とかはあんま興味無いけどな。)


『単に生活でもするの?』


(まずは、卵の仕入の為に色々調べるかぁ。)


『何を?』


(この町での卵の値段とか、ムーノでの卵の値段とか、ムーノまでの交通費を調べる事とか、どれだけ仕入れるかの想定とか、必要なら運搬用の道具を買ったりとか、利益を出さないまでも損をしない程度の算段を付けないとな。トントンなら、ムーノに旅行しに行ったと思えるだろ?借金は残して置きたくないしな。)


『あら、真面目ね。でも、運搬用の道具は必要ないでしょ?』


(ん?ムーノ迄の交通費ってそんなに安いのか?それとも卵は現地だとめっちゃ安いのか?それとも収納スペース程度の卵の仕入れで事たりんのか?)


 現実世界で牛丼をかき込みつつ今後の算段と色々と考えていただけに、拍子抜けするテンの言葉に自分の想定していたハードルが高すぎた可能性を考慮して、原因を羅列して問いまくる。


『何言ってんの?あんたの固有スキルは収納系でしょ?名称的に。』


(固有スキル?あぁ、ガラポンしたやつか。なんだっけ?)


『「次元収納」ね。プレイヤー全員が持ってる収納スペースの上位版かしら。「拡張収納」ではないみたいだからレアスキルみたい…ちょっと待って、詳細を確認してあげるわ。』


・初期状態で1㎥(1m×1m×1m)の収納容積を有する

 縦・横・幅に最低・最大サイズの制限はなく、容積の範囲内なら自由

 形は直方体のみ、レベル上昇に伴い収納容積は大きくなる


・自身を中心に半径1mの範囲内の好きな場所に収納口を発現可能

 収納口のサイズは、箱の面を超える事は出来ない


・容積の変更は随時自由だが内容量以下にはならない。

 但し、収納口が空いている時に、内容物を押し出す事は可能


・空間毎に時間経過の有無を設定可能 


生物せいぶつを収納する事は出来ない。

 死体は生物と認識されないので、肉などは収納可能


 そんなこんなでテンが懇切丁寧に自分の能力を説明してくれた。物を腐らせずに運ぶにはいいスキルって事なのかね?今回のお使いの為の御都合主義的なスキルなんじゃないかね…とか思っていたら…


『御都合主義って訳でもないのよ。アバター作成時に意識内の希望を読み取っているの。だから、冒険者をしたいという想いで始めたら、戦闘に有利なスキルが付与されるはず。』


(もれてた?)


『基本的にいつもだだもれよね?』


(…かもな。時に戦闘に有利ってのはどんなんがあるとか教えられるか?)


『アクティブ系だと、一定時間身体能力を上げたり、一定時間敵の攻撃を無効にしたりかしら、大体は効果に比例して、リキャストも長くなるスキルね。』


(アクティブとか、リキャストってなんだ?)


『アクティブ系っていうのは、意識して自分で使う瞬間を決める事が出来るスキル。リキャストっていうのは次に再度使うまでに掛かる時間ね。』


(系って事は、他にも種類が有るのか?)


『えぇ、他にはパッシヴ系。常時発動しているスキルの事。こちらも能力上昇もあれば、気配察知とか、罠感知とか、勝手に発動し続けるスキルの事。同じ効果のスキルだとアクティブの方が時間制限があるので強力な事が多いかな。ミズキの収納は…その他…って感じね。』


(まぁ、やりたい事を補助してくれるってのは親切だな。)


『とりあえず、試しに使ってみたらどうかしら?』


(これもあれ?念じればいいのか?)


『そうよ。そう言えば収納も使った事が無いわよね。一緒に使ってみたら?』


(そうだな。うしっ!「収納」)


 慣れて来たもんである。多分そうだろう…で、念じてみると、小学校の机位の大きさの空間とでも呼ぶべきか、箱の様な物?…が、目の前に現れる。パソコンを使う時のキーボードが有る位の位置に。おそるおそる手を伸ばすと触る事が出来た。現状、何も持っていないし、当たり前だが何も入っていない。仕舞う時にはそう念じれば片づける事が出来た。


『普通に「収納」は使えたみたいね。』


(あぁ、じゃあ次はこっちだな「次元収納」)


 ---


『サイズを設定して下さい。』


 念じた直後にテンとは違う声が頭の中に響くので考え込んでしまう。

 ぱっ…と、数字が思い浮かばず、ついさっき出した「収納」を思い出したからか、目の前に先程の「収納」と同じ位の大きさの箱…但し透過色と言うのか、あってないような箱が現れる。


『位置を確定して下さい。』


 さっきと同じようにイメージをすると、その箱が色んな場所に動き始める。3Dモデルの箱を動かす様に上下左右奥手前とイメージ通りに360度回転するので遊びながら、洗面台で言う鏡の位置に、先程使用した「収納」の箱の底面が正面になる位置で止め、決めるとを念じると、次の指示が出される。


『取出口を決めて下さい。』


 同様に正面を見開きの鏡台の様にイメージした処、右半分のサイズだけの真っ黒な板?が現れた。 先程同様に半分の大きさの黒い板に手を差し込んだ処、手首位の処で指先が何かに触れ、それ以上に手を進める事が出来ない。そのまま触れる部分をずっと伝って触り続けると、イメージした大きさそのままにそこに箱が存在している事を自覚する。只々黒いがために奥行などが分からないのだが、奥が目視出来ずともイメージ通りの大きさの空間がそこには確かにあるし、力強く押しても動かない空間がそこにはあった。


 それ以上声が聞こえないので、これで確定なんだと理解する。実際に物を入れてみたいので、手近に手頃な物が無いかと見回すとベッドの上の枕が目に入った。

 ミズキはその枕を手に取り、そのまま枕を入れてみると不思議な事に枕は下に落ちずに、空中?…と呼ぶのか、その空間内で固定された感じだ。また、闇をも思わせる空間であるにも関わらず、枕はクッキリ目視出来る。取出部が半分なので枕を左側奥に差し込むと、隠れた部分は目視出来ず、枕の右半分だけを目視する感じとなっている。また、そーっと指先で触ると力をそんなに込めずとも枕を動かす事が出来た。そして片づけるイメージをすると箱が消えた。次に「次元収納」を発動しようとすると…


『既存の収納を取り出しますか?新規作成しますか?』


 …と言う言葉と共に枕に入った箱のイメージが頭に浮かぶ。

 こんな感じで、習うより慣れろ…と、大雑把にスキルを理解していく。


 ---


(これ、全然1㎥に達してないよな…新規作成ってんなら幾つか作れるのか?)


『とりあえず、試してみたら?』


 確かに思ったことは試してみないと気が済まない系である。二つ目の箱を出そうと試みた処…


(出来たな。)


『そうみたいね。』


 更にもっと作ろうと繰り返しすと、4個目の空間を作ろうとした時に、、


 ---


『現在のスキルレベルで同時発現可能な収納空間は3です。』


…と、注意されたが、レベルが上がればもっと出せるんだなと期待を膨らませる。


 ---


 そして、まだまだミズキの好奇心は止まらない。面白がっていろんなことを試しだす。


 まずは直方体以外の形を作れないかと試してみたが出来なかった。要はきっちりした箱に準じた形しか作れない訳である。

 次は取出口の形に三日月をイメージした処、こちらは簡単にくりぬけた。ついでに、三日月の横に星の形も一緒にくりぬく事も出来た。取り出し口の形は自由なんだろう。

 今度はバスルームに移動して鏡の前で目の前に出してみた。ミズキから見た場合に次元収納の向こう側を観る事が出来なかったからだ。しかし、鏡にはミズキがそのまま写り込んでいた。そのまま今度は側面に作り出して手を入れた処、手首から先を目視出来なかった。面白がって棺桶の様な形の空間を作り中に入った所、入って振り向けば外を見る事は出来た。鏡を使っての疑似的な第三者視点の実験は他にも試したかったのだが、一人ではこの辺が限界だった。

 ミズキは気が付いていないが、まるっとノーリスクで中に入る事が出来る事自体が条件的にレアだったりもするのだ。


 ここで再び疑問が湧く…


生物せいぶつは収納出来なかったはず…オートマタが生物せいぶつ扱いではないのか、もしくはスキルを持っている人は除外されるのか…テン、わかるか?)


『え?オートマタは生物せいぶつか…人形だけど魂がある扱いなのね…、厳密にどういう設定になっているか調べるわね…ちょっと待って。』


(頼む。)


 …


 ……


生物せいぶつ扱いみたいよ。今回の件は次元収納利用の関係上、スキル所持者本人はその枠から除外されるみたい。マトモに使用する為の除外事項ね。』


(なるほどねぇ…このスキル、色々面白いな。もっといろいろ試したいけど一人じゃ限界があるから、まぁ…またの機会に遊ぶわ。)


『で、色々と楽しんでたみたいだけど、収納問題に関しては問題なさそう?』


(だな。こんな便利なスキルなら、別に背負子だのリヤカーだのは必要なさそうだし。これなら卵の価格別の損益分岐点なんか事前に叩かなくてもすぐにでも出発出来るな。)


『結構、細かい事ことやろうとしてたのね。』


(まぁ、本職でも雑貨の仕入とかやるしな。鮮度以外は似たようなもんだろ。)


『そんなもんなの?』


(そんなもんだろうよ。んじゃあ心機一転、ムーノまで出掛けるかねぇ。)


 こんな調子で散々スキルで遊んだ結果、事前に調べる必要も、運搬具の購入すらも必要が無くなり、さっさとムーノに向かうべく乗合い馬車の発着場に向かおうかという事になった。

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