表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある夏の  作者: ミツキ
2/2

通学路

サマースクールの初日は7月下旬にしては涼しく感じたことを覚えている。

そのためか珍しく目覚めのよかった私は、予定より一本早い電車で会場である大学に向かうこととなった。



私の通っていた大学は山に囲まれており、最寄り駅からあぜ道を歩いて15分という場所にある。

先輩の話では数年前までは今私が通学に使っている駅は存在せず、当時の最寄り駅は大学から20km離れたところにあり、車のない学生および教員は実質的に大学の寮に入る以外の選択肢がなかったらしい。


私は今でもこのあぜ道の通学路が気に入っている。

田畑やその傍で焼かれる枯れ草から上る煙が構成する長閑な景色は美しかった。

特に秋は棚田いっぱいに広がった稲穂に夕暮れがかかって金色に輝き、その絶景を写真に収めようと他県から人がやってくるほどだ。


その日も変わらず穏やかな田舎道で、私はいつものようにとりとめもないことを考えながら道を進んでいた。

前方にサマースクールの参加者と思しき小学生が見えてくる。時折立ち止まって周りを見渡している。

小柄でやせた男の子のようだ。キャップに白いシャツ、青いデニムのハーフパンツという組み合わせが小学生の夏らしい。

私はなんとなく気まずく感じて男の子を追い越すことのないよう歩みを遅らせた。

だがそれでもジリジリと私と男の子との距離は近づいてき、大学の門に着く頃にはほぼ並ぶことになった。


---


時間を確認すると集合時間まで少しあったので昼食と飲み物を学内のコンビニで買っておくことにした。

コンビニを出る頃にはギリギリの時間になっていたので小走りで広場を横切る。


ふと視界に子どもの姿が入ってくる。

先ほどの男の子だ。キャンパスマップを見上げている。

しかしそろそろ会場に着いていないと遅れる頃だ。今からキャンパス内を迷っていたら開講した後に会場に入ることになるだろう。

それは気まずい思いをしてしまうかもしれない。私ならいやだ。

少し逡巡した後、私は彼に声をかけることにした。


「あの、もしかしてものづくりサマースクールの参加者ですか?」


小学生相手でも敬語になってしまう癖は抜けない。別に問題はないはずだけど堅苦しすぎるきらいがあることは自分でもわかっている。


男の子はパッとこちらの顔を見上げる。


「はい、そうです。けど会場の情報科学研究科C棟というのがわからなくて困ってて」


くりっとした猫目がこちらをまっすぐに私を見上げてくる。

これは将来美少年に成長するな、とどうでもいいことを考える。


「案内するからついてきて。私もチューターとしてサマースクールに参加するの。ミツキね。よろしく」


これが私とハルとの出会いだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ