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狐の嫁様  作者: 葛籠
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頭にたんこぶが…

「きゃあぁぁ‼︎雫ちゃん大丈夫⁈」

「あぁぁぁぁ!怪我が‼︎薬師の婆さんは⁈」

私は黒狐の雫7歳。桜の木から落ちて、頭を打って、前世の私深月の記憶を思い出した。周りで叫んでいるのは今の私の両親だ。

「…頭痛いけど、大丈夫だよ。」

元々私は記憶を思い出す前から泣かない子だった。いや、両親があまりにも、子供のような人達だったため早くも達観したのだろう。

母は私より料理が出来ない。それ以前に何をしてもダークマターを作るというある意味素晴らしい才能の持ち主だった。洗濯をさせれば、服はボロボロで半乾き。唯一出来たのは掃除と仕事だ。

父は仕事は母と同じで出来る。仕事は。それ以外に関してはヘタレ、へなちょこ、最底辺だ。

二人は美人で性格はまぁ、天然な部分があるが、周りに恵まれていた。じゃないと、私はすでに死んでいた。


前世の記憶を思い出して、今後の方針が私の中で決まった。しかし、先程から私の周りをグルグルと回って心配する両親をなんとかするのが先決であると内心ため息をつきながら思った。

(…それにしても頭いたい。ん、たんこぶが出来てる。通りで痛いわけだ。)





帰宅して母がいつも通り私を着せ替え人形のように可愛い服を着せる。その時、鏡を見ると前世の私とただ色が違うだけだった。それ以外は全部同じだ。髪の色が黒に変わった。目の色が金色に変わった。ただそれだけだったが、私は少し怖かった。なぜ怖いのか私は己の感情が分からなかった。考えてみたが……。

「こっちも良いわね。ねぇ、雫ちゃんはどっちが良い⁈私はね、」

「…母さん。」

「そうよね!たまには親子お揃いの服にしましょう‼︎お父さんも帰ってきたらびっくりするわよ‼︎」

「母さん。」

「あ、そしたらどっちが良いかな?赤も良いけど、紺も良い。ん〜、悩む‼︎」

「母さん。」

「あぁ〜‼︎良いこと思いついたから待っててね‼︎」

右、左、また右へと落ち着かない母がいる。考え事をしたいから、早く決めようと声をかけても人の話を聞かない。何処ぞの五月蝿くて馬鹿な鳥を思い出す。ドタドタと部屋を走って出て行き、階段ですっ転んだ音が聞こえてくる。

(…あぁ、頭が痛くなりそうだ。)








前世の記憶を思い出してから10年経つ。週に4日の仕事をしながら、勉強と力の制御を日々励んでいた。私が死んでから約300年経っていた。多少面影は残っていた。祖父の代より栄えていた。それは心の底から嬉しかったが、300年間ずっと王だったのは友の信であった。頭を金槌で殴られたような衝撃だった。それを知った夜から三日間は高熱を出してずっと魘されていたらしい。寝言で何かを言っていたらしいが、私はその三日間は記憶が無いのだ。ただ、胸が張り裂けそうだった。だから、私は友が窮地に至ることにはないと思うが、何があっても守れるよう、助けることができるようにひたすらに勉強と力の制御に精を出していた。しかし、書物から得られない情報もあるため、居酒屋で働いている。

(情報も手に入り、地域の方々と仲良くなれる。まさに一石二鳥。)


ドアが開き、カランカランと鐘の音が鳴った。振り向くと常連客である銀太郎さんと金太郎さんがいた。

「よう、嬢ちゃん。今日は何がオススメだい?」

「そーですね、鬼殺しの酒と燻製物ですよ。」

「嬢ちゃんがそう言うなら、それで頼むぜ!」

「分かりました。」

店長に注文内容を伝え、他のお客様に料理を運ぶ。いつも通りに仕事をしていると急に銀太郎さんが話しかけてきた。

「知っているか、嬢ちゃん。今の王様はなぁ、ずっーーと独り身なんだぜ。まぁ、嬢ちゃんはお子様だから真実は知らんだろうなぁ。」

「そうそう。あの方は一途だぜ。日々丁寧に仕事を継続して国を良くするけどよぉ、俺は早く幸せになって欲しいぜ。」

「はぁ⁈あの方はあのお姫様以外絶対に認めないよ‼︎あんたも知っとるだろ!」

「悪いとは誰も言ってないだろう‼︎ただなぁ、囚われ続けるのは良くねぇと思うんだよ。」

周りの客も話に混じり、熱が上がる。私は前世の記憶があるが、"あのお姫様"や"囚われ続ける"に関することで少し気になった。前者は私に関係ないとして、後者はもしかしたら私のせいかもしれないと思い、呼吸がしづらくなった。

「一人の女の為に動くなんてロマンチックじゃない!」

「現実を見ろよ、現実を‼︎これだから女はよぉ、ロマンチックとかアホか!」

「はぁ?何、あの方を侮辱するの⁈」

「ばっっか言うんじゃねぇやい。そんなの死にたがりでもやんねぇやい。」

そんな時、カランカランと鐘の音が鳴った。もう終わると思い、安心と残念な気持ちが織り混ざりながらも、接客をするために見てみると固まってしまった。他のお客様全員さっさと会計を済ませているのが分かる。徐々に減って、今来たばかりの客以外いなくなった。向こうも固まって驚愕していた。そう、あの子狐達だった。今では立派になり、国の幹部になる程の実力者になったのだ。金髪の二人は新月と満月だ。一人だけ銀髪でいつもコンプレックスで泣いていたのが弥生だ。そう、三人兄弟と会ってしまったのだ。感動もあるが、それより先に後悔と罪悪感が私を襲う。心が鉛のように重かった。

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