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12.一蓮托生

「…何処まで行くの」


平凡な地を、ただただ進む。


「まぁ、ここら辺でいいか」


辺りを見回し、二つの命は立ち止まる。



セリスィが例の組織・・・

ソラトワプロジェクトについて考えるため

一度家を出てからのこと。

カルディアの研究室に閉じこもるメロンは

抜け出すタイミングを伺っていた。

無駄に高いプライドから無闇に出ることは出来ない。

というか、嫌だ。


コンコンッ


頭上からノックのような音が聞こえた。


天井には、正方形の布で何かが隠されている。

そーっと布を外すと、ガラス窓が現れた。


そして、四角の中に映るセリスィ。


「…ったく、何するつもりなのか…」


渋りながらもメロンは、

ゆ…っくりと扉の鍵を開けておき、

窓から白い外へと抜け出した。



「…何?」


「何、って…話したいことがあるんだよ」


まっさらな大地の上で、

穏やかな風に吹かれながら、二人向かい合う。


また二人きりだ。


いつも以上に真剣な眼差しで、

メロンを見つめるセリスィ。


「…メロン、お前の考えを聞かせてほしい」


「ソラトワのことでしょ?」


言おうとしたことを言われ、

おぉっ、とセリスィは目を丸くする。

心が読まれたか、という驚きを顔に表して。

読んだも何も、聞き耳をたてていたんだけど。


「そ、それでメロンはどう思っている?

正直に、考えていることを教えてくれ」


じっ、とメロンの目を見つめながら問う。


どう思うって…そりゃあ加入したい。

というより、加入しなくてはならない。

意思と言うより、使命だ。

そうしないと、いけないのだ…。


だが、思い描くようにはいかない。

またあのプライドが邪魔をして、

「入りたい」という簡単な言葉さえ消化する。


今まで拒否していたのに、

コロリと賛同するのも不自然ではないか。


「……お前は?」


「え、質問返し!?」


とっさに、セリスィに質問を送り返す。

まさか返ってくるとも思わず、

セリスィはへにょりとした声でツッコミをいれる。


「俺が語っちゃっていいのか?先に」


想定から反れた動揺を隠せず、

普段見る、彼の目つきに戻った。


「先に言ってもらった方がありがたいわ」


「そうか、俺は……」


ふぅっ、と息を吐いて、

少し静止してから、彼女に向けて言葉を放つ。


その目は、微かに寂しげに見えた。


「俺はここにいられる意味がほしい」




細長いすらりとした指で、床をなぞる。

指先には、ふわりと灰色の粉がつく。


「この家も長いもんねぇ…。

リフォーム、必要かしらねぇ」


指の粉を息でとばし、ミラは呟く。


ボロついたカーペットは処分したが、

さすがに床はどうしようもない。


「んでも、頑丈だよなぁー。

床も、こんなになったけど普通に歩けるし、

何よりこの研究室の扉なんて傷も凹みもゼロ!」


関心しながらサロスは言う。

彼の言うように、この扉も戦いの場にあったのに

それほど破損がない。


「この扉ねー、カルディアが住み始めたときに

カルディアが新しく変えたんだよね」


「研究に支障が出たら困るからね」


ふと、小さな疑問が浮かんだ。


「いつもさ、何の研究してるんだ?」


率直にサロスが問う。


ふむぅ、と考えてからカルディアは答える。


「宇宙について、かしら」


「おぉおスッゲェ!

…ってだからソラトワに誘ったんだよなっ」


両手拳を握りしめ、サロスは興奮する。

どんなことしてるのか詳しく分からなくとも、

宇宙、という単語を聞いただけでワクワクする。


そんな様子を見つめながら、少女は考えた。


カルディアが自分達に語ったこと。

宙を知れば、世界を知れる。

世界を知れば、全てを知れる。


その言葉が、他人事ではない気がした。


「会えるといいな」


顔も名前も分からない、

ある存在を浮かべて願う。


優しい笑みを並べ、少女…イレモは願う。




「意味って…どういうこと?」


分からなかった。

イェスかノーとも言えない、曖昧な言葉。


はっきりしろ、と言おうとしたが

何か訳ありと見て、話の続きを待つ。


「んー、上手く言えないけど…

このプロジェクトに入んないと、

皆と一緒に居られない気がして…」


「つまり何なの?」


「お前らと一緒にいたいんだよ」


え、とメロンは動揺する。

宙のことを考えて出したのではなく、

仲間のことを考えて出した答え。


複雑だった。

宙を取り戻す意味を知った自分からすれば、

宙を重視してない気がして少し心配だ。

だが、仲間という素直な考えも否定出来ない。


「宙を変える…それが出来ると思ってるの?」


じっ、とセリスィの目を見つめて問う。



見つめられたセリスィは、言葉に詰まる。

鋭い眼差し、悪く言えば疑われているだろう。

俺にそんな大きな仕事が出来るのか、と。


だが、良く言えばメロンは本気だ。

その目つきは少々怖いものの、

メロンの真っ直ぐな意思が伝わってくる。


真剣な問いには、真剣な答えを。



「俺一人じゃこの世界は変えられない。

だから…、一緒に手を取りあおう。

そして…



世界を変えて見せよう



…一緒に。」



上手く言えてるだろうか。伝わってるだろうか。

そんな心配もすぐに消えてった。


「ふぅ、純粋なのね」


ため息をついた後、セリスィを直視する。


「こちらこそ、よろしく」


軽く会釈をし、メロンの口元が微かに緩んだ。


初めて笑うのを見た気がする。


でも、笑った…とカウントしていいのだろうか。

カウントできなくとも、今までで一番笑顔に近い。

それに、メロンもソラトワに入ること確定か。

拒否の可能性も考えていただけに、

拍子抜けというか、安堵だ。


「これで、お互い答えは出たでしょ?

さっさと帰るわよ」


あれこれ悩んでるうちに、

メロンはひとり家へとすたすた歩いていた。


その後ろ姿は、いつものメロンだ。


まだまだ素直じゃねぇな、と思いながら

小走りでメロンの横に並ぶ。


その後は特に会話を広げることもなく、

ただただ、歩いて帰った。


あの心地よい静寂に包まれながら。




「あんれ~?あんな自信満々だったのに、

どうしちゃったんだよぉ?」


わざとらしい口調で煽られる。


「途中までは順調だったの!」


丸い顔の頬を膨らませ、不満を表す。


「インフィニティの名に泥を塗るなよー」


「あたしだけじゃないでしょ!?」


洞窟の中、幼稚な言い争いが響く。

感情的に言葉を吐きあい、止まりそうにない。


「うるさいわよ、プリクスィ、クレヴォ!」


叱りの怒鳴り声が続いた。

発したのは、人魚オモルフォだ。

闇ガラスのプリクスィと、

悪魔の容姿をしたクレヴォに怒りをぶつけた。


クレヴォは彼女らと同じインフィニティの一人。

プリクスィくらいの背丈と年で、

コウモリのような羽が背中から生えている。


「何だよオモルフォ、お前は関係ねーよ!

…あ、いや、嘘だ、関係あるな。どうして負けた!」


「ムキー!

負けたことある人に負けたこと責められても、

不快でしかないわよっ」


今度は、クレヴォとオモルフォが対峙した。


「余計うるさくなったし」


壁にもたれかかりながら、エルピダが嘆く。

彼女を囲むようにチリリと輪っかが廻っている。

どうやら電気を充電しているようだ。


チッ!


「お前らいい加減にしろ」


氷柱のように冷たく鋭い言葉が、

その場にいたものの行動を止める。


「今回殺れなかったことはもういい。

だが、この調子でいくと必ず殺る時がくる」


もちろん、殺るターゲットというのは

不老不死勇者フォーエバーのことで、

殺るというのは、心を殺す、ということだ。


「俺は、自信がある。

最低で、そして確実に一人は殺る自信がさ」


「一人…?」


ニヤリと口を上げ、淡々と話す少年。

彼の言葉からは熱など一切感じない。


「グリ…その一人って…」


「決まっているだろ?



セリスィ・セルモクラスィア…



アイツの心を殺せるのを、俺は楽しみにしてる」


冷酷なことでさえ、楽しげに話す少年。


グリ・パゴス。インフィニティのリーダー。


そして、フォーエバーを一度絶望に陥れた、

冷たき氷の戦士。




「フォーエバー、ソラトワの誓い!!

一つ!宙のように広き心であるべし!」


「…いきなり何?」


セリスィとメロンが玄関のドアを開けたら、

目の前にミラが立っていた。


「フォーエバー、ソラトワの……」


「どいて」


二つ目以降も続けようとしたミラに、

メロンはピシャリと毒を吐く。

はいはい、とミラは二人を家の中に入れる。


「おぉーお帰り!セリスィ、メロン!

待ってたぜー」


中で待っていたサロスが歓喜する。

満面の笑みを浮かべ、ニコニコと二人を見ている。


「メロン、お腹空いてるでしょ?これ食べて」


スッとイレモがメロンにパンを差し出す。

用意されていることは聞き耳たてて聞いていたが、

今改めて渡されて、少し嬉しかった。


「ありがとう」


両手でパンを受け取る。

普段は素っ気なく気だるそうな態度だが、

今回は誠意を感じた。


いつもよりやわらかいメロンに、

サロスとイレモは驚きつつも何かを察した。


「食事の前に、皆に話がある」


セリスィが話を切り出す。

決まったことは早めに伝えた方がいい。


「ソラトワプロジェクトのことだ。

俺とメロンで話をしたんだが……


俺ら二人とも、加入するつもりだ」


意思表示を周囲の仲間に示す。

メロンも、うん、と頷いている。


「宙の事なんてよく分かんないし、

俺らが力になれるかも分かんない。

けど、俺は…


フォーエバー四人の力があれば変えられる。


そう思ってる」


本当の気持ちを、さらけ出した。


沈黙が流れた後に、

サロスとイレモが言葉を紡ぐ。


「こんな死ななくて老けない珍しい命、

何かの役に立てたら良いよな。

俺も、まだ出会ったばっかりだけどさ、

このメンバーが好きだぜ」


「不老不死勇者となって、戸惑うことも多いけど

それよりも皆と過ごせる時間が楽しくて…

宙を知って、何かを変えれたら嬉しい」


二人は目を合わせ、うん、と息を合わせる。


「俺も」


「私も」


「「ソラトワプロジェクトに参加します!」」


やった!口に出さずともセリスィは喜ぶ。

これで、フォーエバー全員参加が確定した。


「ありがとうねー皆!」


拍手しながら、ミラが四人の輪に入る。

その後ろを、カルディアがついて行く。


「これで安心だわ!

てことで、ソラトワプロジェクト始動ね。

みんなよろしくね!」


「はい!」


最初はあんなに疑問があったのに、

今では清々しく、やってやろうという表情だろう。


「やっぱり思ってた通りになったねー」


イヒヒとミラはカルディアに笑いかける。

カルディアは、

勇者達をじっと見つめ何も言わなかった。



このプロジェクトの

本当の意味が分かっているのは、

多分メロンだけだ。


他の勇者は真実を知らない。

真実が知れることも知らない。


その真実を知った時、彼らは何を思うのか。


そしてメロンは、何を叶えるのか。


カルディアはそのことを頭の中で、

ただただ廻していた。




「…愛してるわ」


ひとりで、とある場所で愛を捧げる女性。


そこは、神秘的な空間だった。


パステルカラーの可愛らしい花が、

心地よいやわらかな風が、

空気中に浮かぶ無数の光が、


小さな泉を囲っていた。


その上の空間には、

暖かな炎の明かりが吊るされている。


ポトンッ


「永遠に…」


泉に石のようなものを投げ、祈りを捧げる。


彼女はまだ知らなかった。

その愛が、その祈りが叶うことを。




「さぁ、まずは特訓よ!

どんな敵にも勝てる強さを磨かないとね!」


スパスィを華麗に振り回しながら、

ミラはフォーエバーに呼びかける。

彼女は、やる気満々のようだ。


「さぁさぁ皆、外に出て!」


「おっしゃ、特訓だー」


サロスも気合いを入れて、外へ跳び出す。

その後ろにイレモも続く。


「メロン、俺らも行こう?」


セリスィがメロンに手を差しのべる。


「面倒臭いけど、仕方ないわ」


そう言って、セリスィの横をするりと通り、

外に踏み出した。


苦笑しつつ、セリスィも踏み出す。

伸ばした手を引っ込めて、スパスィを握りながら。


手を繋げない意味を知らぬままに。




ここは曖昧な白い世界。


勇者達に託された全ての運命。


誰が知っているか。

何が目的なのか。

何をするべきなのか。


今、分からなくても、いずれ知る時がくる。


謎で囲まれた物語。


今始まったように見えて、

本当は既に始まっている。



永遠に白い宙の下。

物語は静かに狂いを加速する。

フォーエバー ~ソラトワの誓い~


 完結。


次回作をお楽しみに。

ありがとうございました。

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