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SF紹介、サイボーグ(ハードSF寄り)編

 今回はサイボーグ(義体)が出てくる作品について紹介していきたいと思います。しかし、著者は超人的能力を持つ人間を越えた怪物というような意味のサイボーグ(「ジョジョ」のシュトロハイムとか、「紅」の星噛家みたいな)ではなく、義体化や一部義肢化を行った機械(もしくは人間の物ではない臓器など)と人間の狭間の者たちを描く作品を紹介していきたいと思います

「人獣細工」


<メディア形態>小説


<物語>

 幼少期から重い病気に罹り、臓器移植なしでは生きていけなかった主人公。ある日、自分に移植されていた臓器の大半がヒトブタ(後述)の物だと知る。それによって、主人公は自分が何者であるか悩む……私は人なのか? それとも豚か? それとも……


<紹介文&感想>

 いきなりサイボーグ=強化人間みたいな図式を破ってみました。この「人獣細工」はSFであり、サスペンスであり、ホラーなので、全能のサイボーグは出て来ません。主人公は豚の臓器を移植されただけの一般人です。

 ヒトブタとは「攻殻機動隊2」や「感染」に出て来ましたが、その名の通り人に「ヒトに臓器を敵供するために人為的に遺伝子を操作されたブタ」のことです。実際に研究が進んでおり、ある程度は実用化に向けて進んでいるそうです。「豚の臓器を人間に?」と言う人はこの作品の説明文を読んで頂ければ納得いただけると思います。かなりハードSFですね。

 この小説、かなり癖が強いんですよ。どこがって言ったらネタバレになるんで辞めますが。それは読んでお楽しみなんですが、非常にサイボーグ作品であると思います。オススメ!


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「ライトジーンの遺産」


<メディア形態>小説

<物語>

 謎の現象で臓器が崩壊し、寿命を終えるまでにその使命を果たさなくなった世界。それにより誕生し多人工臓器制作企業であるライトジーン社で誕生した実験用人造人間のコウ。彼は生まれながらにして、サイファと呼ばれる超能力を使うことが出来た。

 人類の命を一企業に託していい物か、と解体されたライトジーン社だったが、その技術を受け継いだ臓器制作企業が多数存在していた。ライトジーン社が解体後、三十代になったコウは何でも屋のような仕事を行いながら、ウィスキーを飲んだり古本を読んだりする生活を楽しんでいた。そんな彼の元にある臓器制作企業の廃棄物から生まれた怪物の排除が依頼される。それはコウを臓器制作企業の大きな陰謀へと導いていく事件群の始まりに過ぎなかった……


<紹介文&感想>

 神林長平さんの初期作品ですね。「青い口づけ」と同様に超能力を扱っており、初期神林作品の臭いがとても強い一作です。しかしながら人工臓器描写はかなりの物。コウの物語をまとめた短編集なのですが、各作品に出てくる人工臓器の説明や造形が素晴らしいのです。コウがかっこよくてですね……いやぁ~ウィスキー買っちゃいました。どうして「劇場版PSYCHO-PASS」のデズモンドといい、サイボーグの渋いおっさんはウィスキーを飲むんでしょうかねぇ。コウの飲んでいる酒は分かりませんが、デズモンドの飲んでいるのはジョニーウォーカーブラックラベルの12年ですね。これは「ブレードランナー」のデッカードも飲んでいるお酒です。かなり、香りと豊潤な渋みが良くて美味しいです。オススメ(当たり前だけど、お酒は二十歳になってからだぞ!)

いやぁ~私もウィスキーで肝臓をいじめていますが、ぜひとも高性能の物(豚は嫌だ)に変えてもいいかな、なんて。しかし、驚くのは「人獣細工」の主人公が自分は人なのか、豚なのか、とか言って悩んでいるのに対し、こちらは全く悩んでいないのです。どこか達観した口調は微かに哀しく強く、こういうサイボーグもあるんだなぁという感じですね。

後半は超能力バトルになったりしますが……根幹は探偵ものですね。一話完結で読みやすいです。

初期の神林作品の中では読みやすいですし、神林作品入門としてもおすすめですが、神林作品の中ではあまり完成度が高い作品ではないですね。神林作品でオススメなのは「雪風」シリーズですね。


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「GUNSLINGER GIRL」


<メディア形態>漫画・アニメ・ゲーム


<物語>

 近未来のイタリア、五共和国派と呼ばれる組織(似た社会問題は実際にイタリアに存在している)によるテロが社会問題となっていた。五共和国派に対抗するために作られた政府組織「社会福祉公社」は身寄りのない少女を義体化し、条件付けと呼ばれる洗脳を行って暗殺機械として利用していた。



<紹介文&個人的な感想>

 物凄く大好きな作品ですね。アニメは台詞を覚えるくらい観ましたし、ブルーレイBOX&漫画も買っちゃいました。

 イタリアの美しい風景、リアルな銃器描写、義体を巡る陰鬱な物語、復讐に燃える大人たちの闇、短い生涯を生きる無垢な少女たちの日常……それらが絶妙に混ざり合い、素晴らしい物を作りだしています。一時期、パスタにはまったなぁこの作品のせいで。

 ただ「身寄りがいない少女に改造を施し、洗脳して、殺しの道具に使う」と言う倫理的にかなり危ない作品ではありますが。


 この作品でのサイボーグは義体と呼ばれているのですが、一応、ここで紹介するサイボーグの中では一番強いのかな、と思います。ロリコンホイホイですしね。それが好きな人はかなり良いと思います。あざとくない程度に可愛くて、魅惑的で、官能的な少女達が非常にたまらないんですね。私はヘンリエッタとトリエラとクラエスが好きですね。


 この作品の義体は福祉公社の助けがなければ生きていけない不幸な少女たちです。全ての少女が暗い過去を背負っています。少女たちの記憶は条件付けと呼ばれる洗脳で消され、公社の命令に逆らうことはありません。しかし、義体化や条件付け(条件付けは義体を扱う上での脳への人為的な操作と言った一面もあります)は肉体に大きな悪影響を及ぼし、記憶障害・味覚障害・薬物依存・寿命が極端に短くなると言った副作用を引き起こしてしまいます。そんな境遇の中、少女たちは戦いながら、自分たちの人生を歩みます。


 この作品のサイボーグは副作用があるのが珍しいんですよね。肉体と心の解離について悩んだり、アイデンティティーについて悩んだりするのは良くサイボーグ作品で取り上げられるんですが、それに副作用があるのは珍しいです。SF的な描写は少ないですが、人工臓器はコウ(ほぼ人間の臓器)や「人獣細工」の主人公(ヒトブタの物)と違って人間に似せた完全な機械ですね。


 初見はアニメから入った方が良いですかね。はまったら漫画も良いと思います。ちなみに劇中(アニメ11話)で飲んでいるお酒はカンパリですかね。私が飲んだ限りだと、ひのき湯のお湯(木の皮の香りが強い)を飲んでいる感じのお酒ですかね。割らないととても飲めない感じでした。


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「イノセンス After The Long Goodbye」


<メディア形態>小説


<物語>

 義体化と電脳化が進んだ世界。高度化した犯罪の根を摘むために設立された特殊部隊・公安九課の活躍を描が……あれ、描かないの?

「攻殻機動隊」の外伝作品であり、哀しい男の、サイボーグの話。公安九課の話はあんまり出て来ません。


<紹介文&感想>

 映画「イノセンス」の前日談で、一応「ゴースト・イン・ザ・シェル 攻殻機動隊(以下、GIG)」と繋がってはいるんですが、別にそこまで重要ではないですね。「GIG」もサイボーグの苦悩を描いてはいるんですが、小説である分、今作の方が描写は多いです。


 サイボーグから見た世界や、サイボーグである主人公・バトーを通じて語られる自身の身体描写が非常に素晴らしいですね。自分の体について、「人獣細工」の主人公が非常に自虐的で悲観的でヒステリックに悩み、コウがある意味で達観的でどうでも良く感じ、「ガンスリ」の少女たちは普通ではないことや自分の記憶について悩んでいる、と言ったように三者三様の価値観があるんですが、バトーは非常に達観していながら実務的で生活的な面でサイボーグである自身の体を見つめているんですね(微かに悲観的、自虐的ではあるが)。ただ、バトーの一人称がニヒルで湿っぽい文体なので、好き嫌いが分かれると思います。ですが、ハマる人はたまらないのではないでしょうか。


 バトーは全身を義体化しているため個がないので、外面では判断しない究極のプラトニックな愛を追及します。サイボーグにも色々居るのが分かりますね。是非とも本文を読むのがオススメなんですが、ちょっと手に入り辛いかもしれません。映画の方は人形の物語で哲学的なんで人を選ぶかもしれません。


 後、この作品のタイトルの元になった「The Long Goodbye」もミステリー作品なんですが、オススメです。


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~おまけ、私の好きなサイボーグ~


 私は「劇場版PSYCHO-PASS」の傭兵部隊が好きなんですよ。あの金髪の白人の巨乳ちゃんとかデズモンドとか凄く好きなんですが、映画本編でもノベライズでも彼らには話の焦点が当たらなかったのが残念です(少しはボーナストラックはありましたが)。

 デズモンドの骨剥きだしの義肢とか、あれを使っているデズモンドの身体感覚はどんな感じなのかとか、それに合わせた脳の神経調整とか、義体のエネルギーとかメンテナンス(前述のヒトブタ&コウは人間の物なんでメンテナンスフリー、ガンスリと攻殻は高度なメンテナンス施設がある)はどうやっているのか、とか柔らかい皮膚組織とか、絶対に生活に必要だと思うんですが、そこらへんが非常に気になりますね。

 読んで頂きありがとうございます。また、記事を追加訂正していく予定ですので、また足を運んでいただけることを心待ちしております。コメント等、待っております。

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