序章
人間のアイデンティティとは、いったいどこに宿るのか。
かつて、私はその問いに対する答えのほとんどが、身体という一点に書き込まれていると考えていた。
名前を呼ばれて振り向くのは身体だ。鏡に映るのも、痛みを覚えるのも、誰かに抱かれて温もるのも、すべて身体である。
私が「私」であることの根拠の大半は、この有機物の集合体が担っている。残るわずかな部分――記憶と経験が織りなす、いわゆる「人格」と呼ばれるものでさえ、突き詰めれば脳という器官の、電気的な明滅にすぎない。
身体は物質であり、有機化合物の集合体である。
物質である以上、原理的には置き換えがきく。炭素も、水素も、窒素も、どこから来たものか区別はつかない。
三年も経てば、私の身体をかたちづくる細胞のほとんどは入れ替わっている。それでも私は、身体というものの連続性を通じて、昨日の私と地続きの私でいられる。
ならば、と私は思う。
もし突然身体そのものが失われたなら。
骨も、肉も、皮膚も、声も、何もかもが別人のものに入れ替わってしまったなら。
そのとき人は、自らのアイデンティティを、いったいどうやって組み立て直すのだろうか。
AIの力を借りて、一つのストーリーとして完結したところで全体をあげてしまいましたが、伏線を回収したり、問いに対する答えを埋めてみたりとかなり加筆(修正)を繰り返しています。
最初にお読みいただいた方には申し訳ありません。




