66話 柚子みたいな木
→→→→→妹ターン
行き掛け、時間差で私はべしょべしょ泣いちゃい、ノッコはそんな思い入れないと思うけど「カズネ凄い泣くやーんっ」もらい泣きされちゃったけど、ゆっくり感傷に浸ってる間も無く、私達は姫将軍様達とトルチャさんとミリーも一緒に心臓を封印する為に『ジャバウォックの墓所』に向かった。
心臓は既に『矢に縫い留められて苦しみ続ける不定形の小さなジャバウォック』の姿になってる。姫将軍様付きの魔法使い達が球形魔法陣に一先ず閉じ込めて移送していた。
一度壊されらしい祠は封印の間までルートが取れるくらいには復旧されていた。ここの担当の騎士団がキッチリ守ってる。
封印の間の台座には新調された真新しい大きなオーブが据え置かれていた。空だから気配はないね。
「ジャバウォックの魂を封じます。シトリーさんと···カズネさんとナンクゥーさんもお願いします」
「大丈夫?」
「やる!」
「今、猛烈に眠いですがやりましょう」
私達は姫将軍様達が組んだ魔法式に乗っかって、矢と化したヴォーパルの剣から暴れる小さなジャバウォックの魂を引き剥がし、台座のオーブへと封じ込めた!!
ジャバウォックの魂はオーブの中で足掻いたけど、すぐに眠りに就いていった。
私とナンクゥーとシトリーさんは一息ついて、ネオ山梨的な肘タッチし合った。
「これで遠雷の主の封印も強固な物となりました。本当にありがとうございました。皆さんの活躍は『勇者の戦い』として語り継がれるでしょう」
「お前ら正直、ヴォーパルの剣のオマケと思ってたけど、大したもんだ!」
「妖精界を守ってくれてありがとねっ」
「ああ。その···犠牲は出てるけど、ぶくぶくのことも悪く伝えるばかりにしないでやって下さい」
ヒロ兄が切り出してくれたから私も続いた。
「あと、困ってる来訪者を見付けたら保護してあげてほしいです!」
同じことの繰り返しは嫌だよ···
「ええ、遠雷の主の恨みや策謀も避けるべきでしょう。異変を見極める、王国内を探索する部署を設けましょう」
「その前に王位継承だぜ? アイツらまだ踊ってるだろうけどなっ。イヒヒ」
「はい···」
困り顔の姫将軍様。
「で、どうする? 仕事も済んだしもう帰っちまうか?」
「そやな〜、吉田ジジの焼き魚定食食べたくなってきたわ」
「ま、今から王宮に戻っても大袈裟な式典と面倒な政争しかないしな。トルチャ! ミリー! 当分姫将軍を守ってやれよ?」
「え? まだ働くんですか? 俺??」
「勿論だよ!」
「よしっ」
ザセウ王はレプラコーンキャビネットの光の渦を起動させた。
「じゃ、俺様達は外なる世界に戻るぜ? ヨレヨレの、妖精王によろしくな〜」
「はい。ナンクゥーさん、流れ星のワンドは差し上げます。光のラカ共々大事にしてあげて下さい。それから、手形のフェアリーコインも皆さんが持っていて下さい。また、いつか!」
「元気でな〜? またワイン飲もうぜ? ナハハっ」
「ディノ」
「ぎゃーっ?!」
爆破。
「それじゃあ、失礼します!」
「失礼しまーすっ!」
「ほなな〜」
「ね、眠いです···」
「でもいい絵が描けそうだわ!」
「飛行絨毯ボロボロだな〜···」
「こっちで拾ったジェム原石とか売っとけ」
私達は光の渦に飛び込んでいった。
ま〜〜た〜〜だよ〜〜お〜〜うぅっっ!!
私達はぐるんぐるんして光の渦を越えていった。
→→→→→兄ターン
···休日2日目。
吉田ハウスに帰った途端発熱して寝込んだカズネとナンクゥーだったが、取り敢えず午後にはカズネは回復したので、ナンクゥーの介抱はノッコど土器ゴーレムに任せ、日が暮れて涼しくなると俺とカズネは平服で吉田ハウスの庭地の一角に出ていた。
シトリーさんはなんかスィッチ入ったらしく、賃貸の自宅で画を描きまくってるらしい。
ザセウ王は「働いたらバカンスだ!」とまた地下室にビーチなんかを作って手下達と連日騒いでる。
バターナイフの戻ったヴォーパルの剣の本体は地下室の箪笥の『どこか』にしまわれたようだ。
仔猫の牙は俺が預かることになった。
吉田さんは帰った当日こそ、ブツブツ文句言いながら焼き魚定食なんかを作ってくれたけど、翌日からはさっさとアトリエで自分の仕事に戻ってしまった。
ボルッカは妖精界のクエストの完遂証明に昨日まで掛かりきりで、「今日はなにも働かねーぞ?」と2階で好きなツマミを用意して、午前中から飲んだり昼寝したり、長風呂入ったりしてるな。
「ここにしよ? この木、柚子みたいでトゲがあるから、好きそう」
「そういうもんかな?」
虫除けの香を焚いて『モグラ鋤』(シャベルと鋤の中間みたいな農具)で穴を掘る。最近、凄いのとばっかし戦ってるから豆腐を崩すみたいに簡単に掘れる。
すぐに程好い深さになった。
「こんなもんじゃないか?」
「うん」
カズネは抱えていた、ぶくぶくの日記の表紙にキスをしてから俺に渡した。
「いつか、地球には持って帰らないんだな」
「あの子は向こうに生まれ変わる、て言ってた。今の気持ちはこっちに置いてゆこうよ」
「···そだな」
俺はそっと、穴の底に日記を置いた。土はカズネが念力で被せて、それからしゃがんで手で押し固めた。
「最後、変なことになっちゃったけど、がんばったね」
また涙ぐんで、汚れてない手の甲で拭うカズネ。
「ヒロシー! カズネー! ナンクゥー起きたでぇー! ボルッカもまた風呂あがったし、アイス食べる言うてるから、吉田ジジとザセウも呼んで食べよ〜!!」
窓からノッコが呼び掛けてきた。もうすぐ夕飯だが、まぁいいさ。
「行こう、手も洗わないと」
「うん!」
香も拾って、俺達は家に戻った。




