27話 カーッ! 戻らんでよかったわい!!
→→→→→兄ターン
「よしっ、入れ! レイワのキッズどもっ!」
促され、地下の部屋に入った俺達。
令和を知らなかった先輩来訪者の部屋は精油と木屑のニオイがして、妙に明るかった。そこそこ高価な照明器具『持久蝋燭』を使ってるらしいカンテラが無造作にいくつか吊るされていた。
魔力が籠もってるらしい謎の猫の置物もあった。
作業場らしきスペースもあり、工具と材木、小家具類、それから日本的な仏像もいくらかある。
「おい、大きいの、そこらの物を踏み潰すなよ?」
「い? ウチ、踏まへんよっ」
そう広くない地下室で窮屈そうなノッコ。
「そこに座れ」
昭和っぽい? 卓袱台が1つ。
「あの猫ちゃんの置物と精油のニオイはなんですか?」
鼻をひくつかせながら猫に関心を示すカズネ。
「猫はネズミ除けの魔法道具。精油は虫除けだ。貧民区の地下だからな」
「へぇ〜」
「カズネ、どちらもそこそこの値段の物だ。持久蝋燭も。爺さん敢えてここに住んでんのかよ?」
「敢えてもなにも、あちこち動き回るのが面倒になっただけだ。今更地球に等帰らんしな」
簡素なキッチンスペースでお茶を淹れてくれるらしい先輩。ナンクゥーがスッと手伝いに行くと、ぶっきらぼうに指示を出していた。
全員で行っても邪魔だろうし、他の俺達は落ち着かない感じ(ノッコはそうでもなかったが)で卓袱台の周りに座った。
で、出されたお茶はこの世界ではお初の緑茶と煎餅だった!
「「緑茶と煎餅!」」
「東方風だなぁ」
「緑茶は冷たい物をストレートのエルフがよく飲みますよ? 蜜を入れますが」
「小さい滋養円盤!」
頂いてみるとちょっと風味は違うがまさしく緑茶と煎餅だった。地球にいた頃、意識したことなかったけど、ジャパ〜ンっ。て感じだ!
「ヒロ兄、この歳でお茶と煎餅が沁みちゃうよ」
「ああ、まぁ」
「ザネルに日系来訪者のコミュニティはないが、ツテはある。煎餅はぼったくられるわ質は悪いわで、知り合いのパン屋にレシピを渡して作ってもらってるがなっ」
自身も座って煎餅をバリバリ食べる先輩。シンイチさんとタイプ全然違うな。
「「ほぉ〜」」
ノッコは煎餅もお茶も気に入り、ナンクゥーは煎餅は一口齧って、残りはノッコに渡しお茶だけ啜ってる。ボルッカは普通に齧って茶も飲んでるが、特段思うところはなさそう。
···茶と煎餅はともかく、さて、どっから話すかな?
→→→→→妹ターン
お茶しながら、日本語を交えてこれまでのことや令和のことを色々話したんだけど、
「カーッ! 令和、終わっとるなっ。戻らんでよかったわい!!」
先輩義憤に駆られまくりだったよ。
「なんか色々先送りにしたりしてたことが、あとになって大変になってきたかも??」
「多数決が変なことには、なってるかなぁ」
「断片的にしかわかんねぇけど、結構ハードな世界からお前ら来てたんだな」
「アイスが手軽に買える文明力は評価したいですね」
「ヒロシとカズネの世界もお腹一杯になるの大変そうやな〜」
なんか···地球の皆が逆に心配になってきた!
「あの···お名前は?」
こちらは全員名乗っていたけど、そういえば聞きそびれていた。
「ワシは吉田だ。もうヨシダとしか呼ばれておらんし、名乗っておらん。チートスキル『超魔法家具職人』の吉田だ!」
「「「超魔法家具職人?!」」」
チート持ってる人だった!
「ふむ。と言っても昔の話。歳を取ったのと、ある時、自分のチートスキルにウンザリして20年程漁師をしておったから、今では『普通程度の魔法家具職人』の吉田だ。面倒だから小物しか造っておらんしな。仏像はただの趣味!」
20年漁師って凄くない??
「チートも衰えるんッスね」
「ヒロシよ、ワシの知る限り、老いたり、怠けたり、力を強く拒絶したり、気質が変わったり、激しい損耗を経ると衰えるようだ。···でだ。お主らのような『無能力者』は、成長が早い傾向があるはず。まぁ卑下せず気長にやるといいわい」
そこからは悪い来訪者もいる。奴隷商には気を付けろ。さらに、あちらとこちらでは『時間の基準が違う』、『パラレルの地球?』等々、色々興味深い話を聞いて吉田さん家を辞した。
アクは強いけど面白い人だった!
午後からは、アポを取って会いに行ったザネルの村長さんにボルッカに適性ありそうな回転斬りの『エッジスピン』の奥義書を餞別にもらい、そして翌朝、私達は拠点のギムリーへと出発したんだけど···
「おっほ〜っ! ギムリーまでの護衛頼むぞい!」
布の服、檜の棒、フード付きマントに収納鞄の吉田さん、急に引っ越しを決めて付いてきちゃったよっ。
おー?? ま、いっか。
私達は一応渡り場は避けて、馬首街道をのんびり南下し始めた。




