王妃パトレアの失墜
悪役令嬢が幸せになってはいけない。
あの娘の存在がパトレアの不幸の始まりなのだから。
「恐れてなどいません。ですがあの娘は人を不幸にする存在なのです。誰かが導いてやらなくては、気づかず人を不幸にします」
「何を根拠にそんなことを言うのだ?」
「エルザ・カレンデュラは白々しい顔でアルバートを貶めたではないですか! 勉強や仕事ができないと嘘を並べて、優秀で聡明なあの子の価値を地に落とした。あの子の婚約がまとまらないのはエルザ・カレンデュラが流した悪評のせいですわ!」
あの娘は、素知らぬ顔で不幸を振り撒く。だから閉じ込めて、決して表に出してはいけないの。
「アルバートが優秀……本当にそう思うか?」
「えっ?」
「君はどういうわけかアルバートが優秀と信じているが、婚約がまとまらないのはアルバート自身に問題があるからだ。だいたい学生時代の学業の成績は平均以下だぞ? 仕事を任せてもできないもののほうが多くて困っていたのだ。そのうえ余計なことにばかり手を出しては後始末の手間を増やす。そんな第二王子の婚約者になれば仕事の代行と後始末をすることが決まりきっているのに誰が結婚しようと思うか?」
「そんな、嘘ですわ! あの娘ですら婚約者が務まったのですよ、他国の王女やご令嬢方なら問題なくこなせる程度の仕事量だという証拠です!」
「馬鹿を言うな。書類仕事をさせるためにあの娘とアルバートの婚約を結んだようなものなのだぞ? 他の人間ではあの量であそこまでの質を保つのは無理だろう。たぶん、アウローネでも無理だ」
「は、え?」
「優秀で聡明というアルバートの評価は全てエルザがお膳立てした結果だ。彼女がいなくなったせいで我々がアルバートの仕事を肩代わりせねばならなくなった。危なくて、あいつには任せられんからな」
「本当にそのとおりです」
どういうことだ。私のかわいいアルバートは仕事ができると皆が言っていたではないの。与えられる大量の仕事を要領よく器用にこなしていると。それはいつのことだったか……そう、二、三年くらい前……。記憶をさかのぼってパトレアはようやく気がついた。それはエルザと婚約していた時期と同じだった。
「嘘、でしょう?」
「アルバートはエルザに全てを丸投げして決裁のサインだけをしていたそうです。さすが母子だ、やり方は違ってもやっていることは同じだな」
「それはサビーナだって一緒でしょう! 王太子妃のくせに書類仕事が苦手だと恥もなく言い放って、周囲の女官に手伝わせて決裁をする姿は有名ですわよ! ああ、まじめに取り組んだせいで使い捨てられたアウローネはかわいそうに……いいですか、騙されてはいけません。サビーナは怠け者ですよ、私から回された決裁書類に手もつけないなんて王妃としての資質に欠けています!」
「ああ、彼女から聞いていますよ。母上から回されてきたという王妃の最終決裁が必要な書類のことでいいですよね。以前からアウローネにも回していたし、全く関係のないエルザにもやらせていたとか?」
「そうよ、それの何がいけないの? 王妃の仕事をしてもらうのは将来のための勉強の一環なのです!」
「では、そのあいだ母上は何をされているのです?」
「……それは、議会の準備とかでいろいろと忙しいのよ!」
私は何をしていたかしら? さまざまなことに手を出していたから、あまり記憶にないの。するとライアンは察したように深くため息をついた。
「母上、自分のすべき義務をおろそかにしてまで、レディ・カンファを開く意味はあるのですか?」
「……」
「ですがご安心ください。母上が王妃の地位をかけてまで守ろうとしたレディ・カンファの伝統は守られます」
場の空気にそぐわないライアンの明るい声。一気に不穏な空気が漂った。弾むような口調でありながら、目が全く笑っていない。ライアンも、夫である王もだ。
「まずは今回の処罰をお伝えいたしましょう。ユーザ・ロ・バルディアス皇国とも調整がついている決定事項ですから覆りません。まず今回の件の責任をとって父上は退位されます。それに伴い、母上も同様に王妃の位を退いていただくことになるでしょう」
「なんですって!」
「次期国王には私が即位します」
寝耳に水とはこのことだ。王妃の地位とは、こんな簡単に失われるものであってはならない。
「そんな決定はおかしいでしょう!」
「おかしいのは母上のほうです! 条約違反ですよ、場合によっては戦争になってもおかしくないというのに!」
「条約違反だと言うけれど、たかが平民に会いに行ったというだけのことでしょう? それなのに王を退位させるなんて普通ではないわ」
「国籍法に基づいて四カ国間で取り決めがあるからです。許可なく出身国の人間に会ってはならないと。親兄弟ですら許可が出ないのが普通です。法は守られるべきだということは、レディ・カンファを開催してきた母上ならばよくご存じでしょう?」
そこでハタと気がついた。そうよ、レディ・カンファはどうなるの? 王妃が召集しなければ、議会は開かれない。そして先ほどライアンはレディ・カンファは守られると言った。もしかしてそこに活路があるのではないかとパトレアは気を取り直し、微笑んだ。
「では私にレディ・カンファを主催する権利だけを残すつもりなのね。つまり議長ということかしら?」
名誉職だが、仕方ない。それよりもむしろ好都合だと思った。王妃の仕事をせずに、レディ・カンファを開催することだけに注力できる。内心でひっそりとほくそ笑むパトレアを、ライアンは冷ややかな眼差しで観察する――――世の中、そんな都合よくいくことばかりではないというのに。
「いいえ、レディ・カンファは王妃が主催するものです。ですから私と共に新たな王妃となる者が引き継ぎます」
「まさか、アウローネにやらせようというの⁉︎」
「彼女を追い詰めた一因は私にもある。だから言い訳はしませんが、彼女にはもう王妃は務まりません。ですので、私が即位すると同時に、サビーナを諸外国へお披露目いたします。今後は側妃サビーナがアウローネの代わりに正妃の役目を果たすことになるでしょう」
サビーナからも了解を得ているというライアンの言葉にパトレアは呆然となった。まさか正妃を差し置いて他国から輿入れした側妃を王妃とするなんて、そんなことが許されるわけはない。
「では、レディ・カンファは」
「必要に応じてサビーナが召集し、開催いたします。構成員は皇国から連れてきた女官を加えるだけで、そのほかは変わりません」
「許しません!」
パトレアは、なりふりかまわず叫んだ。あの素晴らしいノートに他国の人間が触れることは許せない。そしてそれよりも、もっと許せないことがあった。
「献策にユーザ・ロ・バルディアス皇国の意向が反映されてしまったらどうするのです!」
他国の人間が関わるというのはそういうことだ。皇国の息がかかった人間が混じってしまえば、この国のためになることばかりを提案してくれるとも思えない。
「レディ・カンファの名誉を穢すことは許しませんよ!」
「あなたにそれをいう権利はあるのですか?」
「何が言いたいのです⁉︎」
「今まで母上とアウローネが提出した議案は、ほとんどがエルザのものでしょう。エルザさえ黙っていればバレないとでも思っていたのですか?」
「……え」
「我々にエルザの案ばかりが評判がいいと不思議に思っていましたよね?」
「……」
「彼女は我々の持つ案件と被らないものを事前に選んで献策していたからですよ。国にとって本当に必要な内容はそういうものだと彼女は気がついていました。だから事前に文官と調整していたのです。この内容を献策するが問題はないか、と。このことはアウローネにも伝えましたが、想像以上にショックを受けまして、ベッドから起き上がる気力もないらしい。レディ・カンファとは、なんとも罪作りなものになってしまいましたね」
エルザは王妃やアウローネに知られないよう、こっそり素案や図面を渡すなどして根回ししていたらしい。そんな……それでは王や文官は皆、議場で自分やアウローネが得意満面で話していたことが実はエルザの案だと知っていたのか。羞恥でパトレアの顔が、かっと朱を帯びる。
「母上、今回あなたとアルバートがしたことは戦争の引き金となってもおかしくなかった。それを皇国は条件さえ飲めば内々に収めてくれるという、なぜだと思いますか?」
「……」
「サビーナのおかげですよ。彼女が皇国に取りなしてくれたからこそ、父上が退位して私に譲位するという条件で戦争は回避され、母上とアルバートの命は救われたのです。レディ・カンファとアルバートのことしか頭にないあなたにこんなことはできませんよね。こうして比べてみると母上とサビーナのどちらが王妃にふさわしいか、一目瞭然です」
「サビーナが……」
「あなたとアルバートが罪を犯したせいで皇国における現時点での私の価値はサビーナの伴侶というだけです。それでも多少は価値があるからこそ見逃されて王位を継ぐことが許された。今一番勢いのある皇国を敵に回すということはそういうことなのですよ」
「そんな、私はそんなつもりでやったのではないのよ……」
「エルザが新たな国籍に皇国を選んだことで皇国との繋がりができた。そしてそのわずかな繋がりをたどってサビーナは王国へと嫁いできたのです。今回はその繋がりが功を奏しました。今後、私達の間に子供ができれば、皇国の血を引く王が立つことになるでしょう。今までのように皇国と距離を保つことは難しくなる。関係が深まれば皇国の出身で語学に堪能なサビーナを中心にして人の輪が広がっていくことになるでしょうね。これからは王国だけを優先するようなやり方では、国が成立しないのです」
新たなやり方についていけない人間は王家に不要ということか。パトレアは喉元に剣を突きつけられたような気がした。それからハッとして、彼女はライアンの手を掴む。
「アルバートはどうなるのです!」
「それが一番難しい問題なのですよ。愚かなままで育ちきったあいつに変われというのはもう無理でしょう。臣下にして爵位を与えても先ほども申し上げたとおりに成績が悪く領地経営なんてできません。うっかり土地でも渡せば、身包み剥がれて土地ごとむしり取られる未来しか見えませんしね。ですから王位継承権の剥奪はもちろんですが、まずは世間を知ってもらうための強制労働に送ることにしました」
「なーんですってー! そんなことをすればか弱く繊細なあの子は死んでしまうわ!」
「でしたらひとつだけとてもよいお話が来ているのです。そちらにしましょう」
ライアンは、にこやかに微笑んだ。パトレアの背筋にぞくりと悪寒が走る。
これ、絶対にいい話ではない気がするわ!
「とある国から王妹殿下の結婚相手にという話がきているのですよ。相手国で暮らすことになりますが、若くて健康であれば誰でもいいということでしたのでお受けしようと思います」
なんでだろう、とてつもなく嫌な予感がした。
「相手の方はおいくつなの?」
「父上より歳下ですよ。……母上より歳上ですが」
「はっ? 初婚の男性に親より歳上の結婚相手を薦めるなんてどういう了見をしているのですか!」
「失礼ですよ、相手の方も初婚です。それにおおらかで気質も穏やかな方であると聞いています。母上と歳も近いですし、意外と上手くいくのではないでしょうか?」
「それでもあの子の意志を無視するような結婚をさせたくないわ!」
「ですが地獄のように厳しい環境で強制労働するよりはマシ、なのですよね?」
自分がかつてエルザにしようとしたことはそういうことなのだ。
盛大にあて擦られて、パトレアは言葉を失った。
「お、おまえは弟がかわいくないのですか⁉︎」
「ええ。国を滅ぼすようなことを平気でする弟を、かわいいとは思いませんね」
「ライアン……もう、いいのではないか? どうせ何を言っても無駄だ」
ようやく王が口を開いた。暗い表情をして、瞳には何の色も浮かんでいない。
冷めきった彼の視線の先にいるのはパトレアだった。
「おまえは自分のことばかりだな。レディ・カンファだの、アルバートだの。連座で退位させられる私に謝罪もなく、気にもとめないとは、おまえこそどういう了見だ?」
「ち、違うのよ! ちょっと気が動転していて……」
「信じていたのに。エルザを気遣うおまえの優しさは、自分のためだったのだな」
夫がこんなに怒っている姿を見たのははじめてだった。どうしよう、こんなつもりはなかったのに。
「ああ、ごめんなさい! こんな結末になるなんて思いもしなかったの!」
「いまさら謝られても全ては遅すぎる」
「ごめんなさい、ごめんなさい!」
それこそいまさらだから誰のせいとは言わないけれど。
すがるような手を振り払って背を向けた夫の姿にパトレアは絶望して膝をついた。ライアンはふと二度の婚約破棄を突きつけられたエルザの姿を思い出す。王の足元で震える母親の背中は、王妃を務めた人間とは思えないほどに不恰好に見えた。それが王妃でも王子妃でもなかったのに、エルザは涙を流すこともなければ、ここまで取り乱すこともしなかった。
心乱れたのは最初だけ、一度目も二度目のときも揺らぐことなく相手を見据え、決して視線は下げなかった。もちろん、こんなふうにみっともなく縋りついて泣きわめくこともしない。それは自分に非がないことがわかっていたからだろう。これが器の差か……あのときも今も、どちらに正義があるかなんて一目瞭然だったというのに。悪評に惑わされてそのことに気づけなかった私の落ち度だ。
酷使されたことにより肉体はやつれていたけれど、決して輝きだけは失わなかった紺碧の瞳。さすがカレンデュラの名を冠するだけある。取り返しのつかないことではあるけれど、もったいないことをしたな。
「それから、これが皇国の提示した最後の条件です。四年前の客車の事故の件を再調査し、真実を明らかにします。そのうえで事実と違うものについては報告書を訂正したうえで再調査した結果を国内外に公表します」
パトレアはギョッとした。それこそもう終わったことだ。真実を暴いたからといって誰も幸せにはならない。それなのに、どうしていまさら火種を掘り起こすのか!
「その行為はアウローネをもっと深く傷つけることになるのですよ、おやめなさい!」
「たしかに今の彼女は傷ついていますが、それだけのことをしてきたのです。被害者がいる以上、罪は消せない」
「それではアウローネが回復しても王妃には戻れませんよ? まさかそのつもりではないでしょうね⁉︎」
「母上、あなたは先ほどから他人の心配ばかりされていますが、罪に問われるのはアウローネだけではありませんよ。母上、あなたもです」
「なんで私もなの⁉︎」
「当然だと思いますよ。改良された客車の商標登録は母上の名前ですが実際に開発した人間は別にいますよね」
開発者の名称、エルザ・カレンデュラ。
ライアンが握る調査報告書とおぼしき書類の冒頭に記された名前だ。名声も利益も全て取り上げたつもりだったが、最悪の形で自分にはね返ってきた。顔色を真っ青にしてパトレアは両手で顔を覆い、静かに涙をこぼした。
「あの娘は、私から全てを奪っていくのね……」
「いいえ違います。奪ったのではなく全てが本来のあるべき者のもとへと還るだけです」
事故を起こした客車を開発した者は誰か。
本来の開発者に贈られる賞賛と利益を掠め取った者が誰か。
そして無関係にも関わらず被害者の救済と補償に尽力し、改良した客車の開発まで手掛けたのは誰か。
悪役令嬢と呼ばれた少女は、本当に悪役令嬢だったのか?
真実が明らかにされたとき、ラングレア王国は大きく揺れるだろう。
「母上、最後に教えてください。あなたはエルザの何を恐れていたのですか?」
アルバートは母親にそそのかされただけの愚か者だ。わざわざ他国へ行ってまでエルザに手を出したのは母親の意向に従っただけだというのは間違いない。そこまでして、エルザの何が欲しかった?
すると涙を流しながら焦点の合わない目で大理石の床を見つめていたパトレアが弱々しい声でポツリとつぶやいた。
「……だって、あの娘は私にないものを全て持ち合わせているのよ。あの娘がいなくては賢妃になれない」
自分にはできないことが、あの娘ならできてしまう。
だからあの娘の存在がパトレアの不幸の始まりなのだ。
つまり嫉妬か――――。母が執拗にエルザにこだわる理由はとても単純で、だからこそ母は賢妃になれなかったのだと納得した。諦めた顔でライアンは深く息を吐いて、視線と手の動きで王妃付きの女官に合図を送る。女官に支えられ、兵士に伴われながらパトレアは執務室を出て行く。母はこのあと、アウローネの暮らす離宮に隔離される予定だ。これもまた、彼女達に与えられた罰のひとつ。
部屋に残された男二人は、顔を見合わせて深く息を吐いた。王の視線の先にはライアンが握りしめた報告書の束がある。
「だから皇国には手を出すなときつく言っておいたというのに」
四年前に誰が何をして、何をしなかったのか。驚くほどの精度から調べ尽くしたことは明らかで、この報告書そのものが皇国は全てを知っているという警告なのだ。今後の調査で真実が明らかになればエルザが悪役令嬢と呼ばれてしまった理由も明らかにせねばならなくなる。
汚名を背負わされながらも国に尽くした悲劇の元公爵令嬢――――そんな華々しい肩書きとともにエルザの名誉は回復し、皇国での彼女の立場は強固なものになるだろう。皇国はそれを狙ったのだろうな。そうでなければ四年前に決着がついた他国の案件をわざわざ掘り返したりなどしない。ある男が、報告書を手渡しながらライアンにこう囁いたのだ。
『この程度で済んだことを彼女に感謝すべきでしょう』
眼前には、全てを知り尽くしたような不気味な光を湛える灰青の瞳があった。顔には出さなかったけれどライアンの背筋は一瞬凍りつく。終始穏やかな口調で話しているのに、向かいに立つ男からは恐ろしいまでの圧力を感じていた。ひたすら静かに待って、隙を見せれば高く跳躍し一気に獲物へと飛びかかる――――まるで狩りをするときの狐のようだ。
男の名はレナルド・マストリーク。マストリーク公爵家の長子であり、皇族への忠誠と有能であるという評判の陰に、狡猾で敵には容赦しない冷酷非情という陰口も混じる。そんな男がエルザの味方としてそばにいるらしい。今回、王国側が飲まされた条件は全て彼の指示だという。正直なところ、腹立たしいくらいに効果的だった。
「あの男はエルザこそが我々の弱点であることを見抜いていたのだな」
王の言葉に、ライアンは眉を顰めてうなずいた。今のところ、サビーナの周囲を固める女官は皇国の息がかかった者ばかり。そこから王国の情報は筒抜けなのだろう。だがエルザの抜けた穴を埋めるにはサビーナに頑張ってもらわねばならず、サビーナを補佐する立場の彼女達を排除することもできない。
……まさかこれもあの男の策ではないだろうな? ライアンの脳裏に口角を上げてほくそ笑むような男の顔が浮かぶ。
「ですが、これ以上皇国を刺激するのは得策ではありません。せめてエルザの関係者の動向くらいは調べて把握しておくべきでしょう。そのついでに目ぼしいものがあれば情報を与えて、こちらが不利にならないように立ち回らなければ」
「我々の知る情報などすでに把握しているかもしれんが。まあ、何もしないよりはマシだろう」
狡猾と評される彼が最も得意とする戦場は各国の水面下で密やかに行われている情報戦だ。その最前線に立つ彼ならば王国の情報くらい片手間に収集できるだろう。
ああ、厄介な狐に目をつけられた。
王と王太子は途方に暮れたような顔で深くため息をついたのだ。




