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悪役令嬢と呼ばれた四姉妹はどうにも納得がいかないようです  作者: ゆうひかんな


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17/24

王妃パトレアの偏見


「交流会に参加するという名目で愚弟と共に皇国へ乗り込み、接触を禁じられたエルザに再婚約を迫るなど、恥知らずにもほどがある。母上はラングレア王国を潰すつもりですか」

「そんなわけがないでしょう、私ほど国を愛する王妃はいないわ!」


 血を分けた実の息子のものとは思えない冷ややかな眼差しに、王妃パトレアは青ざめた。

 王太子であるライアンを残して、ユーザ・ロ・バルディアス皇国の交流会に夫とアルバートと共に参加したパトレアは、たしかにエルザを口説き落として再婚約を結ぶようにアルバートをけしかけた。それは絶対にうまくいくという確信があったからだ。


 傲慢で権力欲に取り憑かれた悪役令嬢、エルザ・カレンデュラ。ドレスのセンスも最悪の、道化のような娘が私のかわいいアルバートの申し出を断るなんて無礼にもほどがある。パトレアは口紅で美しく彩られた唇をぎりりと噛んだ。


 アルバートが運命のお相手となる令嬢を連れてきた、あの日。幸せそうに微笑み合い、真実の愛を貫きたいと願う二人の姿に感動した私は思うところもあって、ちょうど一週間後に行われる祝賀会でエルザの悪事を暴き、婚約を破棄するという舞台を整えた。劇的な演出は成功し、悪役令嬢から王子様を救い出すことに成功したのよ!


『私を不要とおっしゃるのですか……!』


 あのエルザ・カレンデュラが澄ました顔を歪ませて震える声でそう言った瞬間、パトレアは勝ちを確信した。悪役令嬢は、王子に惚れ抜いている。醜く愚かな女が家の権力まで使って分不相応にも頭良し顔良しのアルバートを望んだのが間違いだったのよ!


『王子妃教育を受けておきながらみっともない。所詮はその器ではなかったということですわね』


 よく通る自身の声でエルザをさらに追い詰めたのはパトレアに思惑があったからだ。貴族の娘として致命的な婚約破棄をされたとはいえ、エルザの身分は公爵令嬢。どうあがいても貴族の義務からは逃れられない。そして、あの娘は母親を亡くしてからどういうわけか父親である宰相に疎まれている。父親からも嫌われる悪役令嬢に次の縁談はこないだろう。修道院に送られるか、侍女や女官として自活するしか生き残る手段はない。とはいえそんな娘を雇う貴族はいないから困り果てているところを私が拾ってやるのだ。そうすれば愚かなあの娘は心から感謝して私へ尽くすに違いない。


 自分が誰にはめられたのかという真実を知らずに――――!


 侍女や女官にして手元に置けば、あの娘が王子妃教育で培った語学力や教養、揉め事を仲裁し事業を円滑に進める調整能力、そして決裁書や予算書を作成し、問題点を洗い出す事務処理能力も全て私のものになる。あの娘は絶対に表へ出してはならない。エルザ・カレンデュラは悪役令嬢のままでいてもらわなくてはならなかった。

 ところがだ。うろたえたのは一瞬のことで、エルザは忌々しいことに劣勢をあっという間に立て直し反撃してみせた。そのせいでアルバートのありもしない悪評が流されて、運命のお相手にも逃げられた。ああ、アルバートはなんてかわいそうな子かしら! 


「だいたい王が悪役令嬢如きに気を遣いすぎなのですよ! あのときだって婚約破棄のままでよかったのに、あとで双方に瑕疵のない婚約解消などと弱腰な態度を取るからエルザがつけ上がるのです。おかげで善良なレオニス侯爵家がまんまと騙されてエルザと婚約を結んでしまったではないの」


 パトレアの思惑を裏切るように、エルザと侯爵家子息の婚約が整ってしまった。さすがに侯爵家の妻を侍女に召し上げることはできないと、ひどく落胆したことを覚えている。


「あたりまえではないですか。王家から申し入れた婚約だったのに、こちらから破棄するわけにはいきません」


 何馬鹿なことをとばかりに、ライアンにそっけなく言われてパトレアは固まった。

 王家から婚約を申し入れていた、ですって⁉︎


「当時の母上はレディ・カンファの準備に忙殺されていたようですから、覚えていないかもしれませんが。元々、エルザは他国に嫁ぎ先を見つけるという目的があって両親と共に皇国の交流会へ参加していたのです。案の定、優秀なエルザには他国から婚約の釣書が殺到しましてね。それを知った父や国の上層部は外国語に堪能で書類仕事も得意なエルザを手放すのが惜しくなったのですよ。だから都合よく婚約者の決まっていなかったアルバートと婚約を結ばせ手元に置いた。ただ、もともと婚約者がいないという触れ込みで交流会に参加したエルザに婚約者がいたというのはさすがにまずいので、釣書を寄せた家には、王子であるアルバートが見初めたので急遽婚約を結んだと回答したのです。ですからアルバートは最悪の状況で彼女との婚約を破棄してくれたわけだ。あの馬鹿は、本当に余計なことを!」


 ライアンは憎らしげに虚空を睨んだ。諸外国の人間がいる前で大々的に婚約を破棄したから、もみ消すわけにもいかない。しかも申し入れた王族側から破棄したとなると、今後外交に影響が及ぶという懸念もあった。国家間の交易や条約の締結には信用が必須だからだ。


「ですから双方に瑕疵のない婚約の解消としたのですよ。だいたい、アルバートのあげつらったエルザの悪行の数々とやらのレベルの低さは何ですか? 運命の相手という娘も、あの程度のものを受け流せないようでは社交界でやっていけませんよ?」

「それは……そうだけれど」

「しかもアルバートは浮気相手の娘のドレスを国庫から振り分けられた婚約者用(エルザ)の予算を使って買い与えていたではありませんか。カレンデュラ公爵家への義理を欠いたばかりか、国家予算の流用です。どちらに非があるか明らかだと、祝賀会に参加した他国の人間が失笑していましたよ!」


 これでは、どちらが婚約破棄されたのかわからないな。


 他国の人間が王家を揶揄した声をライアンは今でも覚えている。ついでにアルバートのアレが暴露されたわけで、本人の努力だけでは結婚相手を見つけるのは無理だろう。するとパトレアの顔色がさらに悪くなった。

 ちょっと待って、王家がカレンデュラ家にエルザとの婚約を申し入れたなんて聞いていないわ、いいえ、もしかすると聞いていたのかしら……。レディ・カンファの議題を精査するのに忙しくて、そのほかのことはあまり記憶に残らないのよね。


「レオニス侯爵家との婚約破棄もそうです。現当主夫妻と子息による散財で家計は火の車だった。だからカレンデュラ家から融資を受ける名目で結ばれた婚約だったというのに、何をとち狂ったのかオスカー・レオニスは浮気相手を堂々と自宅に連れ込んでいたそうですよ。そのうえ、自分より格上なのにエルザを婚約者として扱わず使用人を巻き込んで冷遇した。それを侯爵は咎めないばかりか、借金返済のために支出を減らそうと動き出した彼女を疎ましく思い、逆に愛嬌があってそこそこ実家に金のある浮気相手の伯爵令嬢と再度婚約させようと目論んだのです。それがあのカレンデュラの悲劇の発端ですよ」


 最高に盛り下がったカレンデュラの悲劇の夜。こんなバカバカしい理由であの悲劇が起きたとわかって、後始末に翻弄されたライアンは二度と関係者の顔を見たくないと避けていた。だからようやく今になって、国に災いをもたらした元凶はエルザではなかったという真実に気がついたのだ。だがエルザを疎むパトレアの発想はライアンの予想をはるかに越えていた。


「それなら、いっそのことエルザ・カレンデュラに罪を負わせればよかったのに」

「というと?」

「察しが悪いわね。レオニス侯爵家の私財を食い潰したとしてエルザ・カレンデュラを処罰すればよかったと言いたいの。そうすればカレンデュラ公爵家の支払う賠償金によってレオニス侯爵家は救われて、しかもあの娘を排除できるでしょう? あの侯爵子息……オスカーといったかしら? 彼も真実の愛を貫いてアルセン伯爵家の娘と結婚できる。丸く納まって、皆幸せになれるわ!」

「そのために冤罪を負わされるエルザの犠牲は致し方ないと?」

「ええ。だってあの娘は悪役令嬢だもの。排除されて当然の存在よ。悪を徹底的に潰す絶好の機会を見逃すなんて次期王としてらしくない失態だわ」


 悪役令嬢の一人くらい、王命を使えばどうにでもなるでしょう?


 パトレアの言葉にライアンの視線がすっと冷えた。その視線を、同じように温度のない視線で受け止める。いまさら怖気づいたというのかしら? 王族は時に非情な判断が必要とされるものよ。国のために人を切り捨てるくらい余裕でできないとダメなのに……歳下のアルバートですら理解できるものを、どうして王太子であるライアンは理解できないのかしら?


「母上、悪役令嬢とは物語に登場する架空の存在です」

「もちろん知っているわ。さすがアルバートは賢いわよね、あの娘にふさわしい気の利いた呼び方を選んだものだわ!」

「どうしてそう思うのですか?」

「だって悪役令嬢ならば誰も行く末を気にしないでしょう?」


 物語の中で悪役令嬢は排除される未来が決まっている。それなら現実でも悪役令嬢と呼ばれたエルザの人生が不幸な結末だったとしても誰もが納得するだろう。


 だって悪役令嬢ですもの、ね。


「だから表向きは慈悲を与えたように見せかけて、父親と同じくらい歳の差がある王弟殿下との王命による婚約を提案したのですか?」

「完全に退場されたら困るのよ。修道院になんて連れて行かれたら、エルザが私の手元に残らないじゃない。王弟殿下に嫁がせれば、いつでも必要なときに呼び出せるでしょう? もし離婚されたら、引き取って私の侍女か女官にするの。そうすればエルザの知識や能力は使い放題、拾われた恩を返すために心の底から尽くしてくれるはずよ」

「そうでしょうか?」

「地獄のように戒律が厳しいとされる修道院に行かされるよりはマシでしょう? 私は慈悲深いのよ」


 そういう意味で非常に都合のいい駒なのだ、エルザ・カレンデュラという娘は! いつもは反抗ばかりするライアンが珍しく話を聞いてくれるので、パトレアは気持ちよく話し続ける。だから自分が本当は言わなくてもいい思惑まで口にしていることに気がついていなかった。するとライアンは呆れた表情を隠すことなく深々と息を吐き出した。


「……父王よ、聞きましたか? これがこの国で最高位にある女の真の姿です」

「たしかに聞いた。賢女と呼ばれたいがための本音もな」

 

 カーテンの背後から姿を現した夫は見たこともない厳しい表情を浮かべている。


 そこでようやくパトレアは自分がはめられたことに気がついた。

 弱腰な、王族らしくない失態。そう揶揄されて、彼の瞳には怒りと失望の色が濃くにじむ。ああ、なんてこと……誰がいつ、こんな冷酷で残酷な仕打ちを……まさか!


「悪役令嬢、エルザ・カレンデュラの差金ね!」


 こんな無慈悲なことができる冷酷で残忍な人でなしは、あの娘くらいしかいないもの。すると王は絶望したように天を仰いだ。打ちひしがれ、震えるその肩に面を伏せたライアンが労わるような手つきで触れた。


「なぜここでいまさらエルザの名が出てくるのか……現実と空想の区別もつかないというのか? 被害妄想も甚だしい。私が自由にさせすぎたか」

「女性同士の揉め事は女性同士で解決するものだと放置していた私も同罪です。父上のせいだけではありません」

「ちょ、ちょっと! あなた達が何を言っているのかわかりませんわ!」


 意味はわからないけれど、まずい状況にあることだけはわかる。パトレアは自分が最も美しく見える角度と仕草で王の足元にひざまずいた。


「ああ、この国の王にして我が最愛の人スタンレー! 今のはほんの冗談だったのよ!」


 こうして許しを乞えば、優しい夫はいつだって許してくれる。――――ところがだ、パトレアの予想を裏切るように彼はしらけたような表情で首を振った。


「パトレア、君には常々聞きたいと思っていたことがあったのだ」

「まあ、何かしら?」

「君は城の人間が頻繁に開かれるレディ・カンファのことをどう受け止めているか知っていたのか?」


 なぜレディ・カンファのことを? 突然、想定外の話題を振られたパトレアは一瞬頭が白くなった。それでも侍女からは一定の評価をされていると聞いていた。またおおむね好意的に受け止められているということも。

 だが彼女は、世の中には真実を耳障りのいい言葉で包むという話術があることをすっかり失念していた。侍女達が王妃の不興を買いたくないばかりに、真実とは遠くかけ離れた評価を伝える可能性があることにも思い至ることはなかった。だからパトレアは満面の笑みを浮かべ、自信たっぷりにこう答える。


「も、もちろんよ」

「そうか、わかってやっていたのだというのなら余計に()()()()

「えっ!」


 混乱してパトレアは言葉を失った。やっぱり言っている意味がわからない。どういうこと? 


レディ・カンファ(賢女による献策)とは賢妃エイレーネが夫の治世を助けるために始めたものだ。エイレーネ王妃の在位期間は二十四年あったけれど開催回数は八回。それに対して君はこのところ半年に一度のペースで開催しているから、すでに彼女の倍以上は開催しているな。レディ・カンファこそが君の誇りであり、支えでもあった。継続するために尽力する君の努力を否定する気はないよ」


 実際に助かったものもあったしね。そう答えた夫の諦めたような視線が意味するものは何なのだろう。必死にパトレアは考えた。どういうわけか嫌な予感しかしないのだ。


「やっぱりわからないようだね。私は半年に一度のペースで君が献策するたびにこう思ってきたよ。君はよほど私の政治に不満があるのだ、と」


 献策とは、言い換えれば現行の政治や制度に対する不備不足の指摘だ。回数が多くなるということは、すなわち現王政にはたくさんあったという評価に繋がる。だから在位期間の長かったエイレーネ王妃でも本当に必要と思われたときにしか開催されなかった。その根底にあったものは、王の執政を邪魔しないという()()。本音を聞かされたパトレアは仰天し、あわてて否定する。


「ち、ちがうの! そんなつもりではなく、あなたの助けになればと思って、私は……」

「君はそのつもりだったかもしれないが、文官や使用人達のほとんどの人間がそう思っているよ。私が頼りないからだと」

「っ、ちがう! ちがうのよ!」

「それなら私ではなく君が王であればもっと上手く治世できるという自己顕示だろうか?」


 どうして、どうしてそんなふうに悪いほうにばかり受け取るの? いつのまにか王の寵愛と信頼が失われていたことに、パトレアはようやく気がついた。レディ・カンファに夢中になるあまり、一番大事なものを忘れていたのだ。彼女は呆然として言葉を失った。


「レディ・カンファか……。正直なところ、口先だけなら誰でも言える。だが実際に君は自分の力で一から法案を作ったことはあるか? もしくは商品化するために図面を引いたことはある?」

「ないわ、だって私がすべきなのは献策だけだもの!」


 そう、形にするのは城に勤める文官や委託業者の仕事だ。王妃のやることではない。


「では質問を変えよう。もし我々が時間をかけて準備した新法の制定や条例の改正案、それだけでなく販売しようとして準備を進めてきた商品に、レディ・カンファの提言とほぼ同じものがあったとしたら、君はどう思う?」

「な、なんですって……」

「重なったのは、たまたまで偶然かもしれない。だがレディ・カンファの開催回数が増えるほど偶然であっても一致する確率は上がるものだ」


 先進的な案でも商品でも、先んじた者が称賛を浴びることができる。つまりパトレアは気がつかないうちに他人の功績を横取りしていたのだ。パトレアはレディ・カンファを開くことに一生懸命で、周囲の状況が見えていなかった。


「君達は我々が現状どのような問題を検討して対応する準備を進めているのかということに本気で興味がなかったらしいな。たしかに人の想像力は無限ではあるけれど、ときには別々の人間が同時期に似たようなことを思いつくこともある。それを、さも自分達が先に思いついたという顔で献策するものだから我々の準備も得られる功績も全て君達のものになってしまった。別のときには、満を持して発表しようとした商品を君が余計な発言をしたばかりに販売を見送らざるを得なくなったこともある。心当たりはないかい?」

「あ、あ……」

「準備というものには、お金と同時に時間もかかる。法令や改正案だって、ペンを握りしめて紙を睨んでいたってできるものではない。文官達が文字を書いて形式を整えたからこそ形になるのだ。それを先に口にしたというだけで自分達の功績だと誇示されては、さすがに仕事と割り切ってはいても悔しいだろう。不満も溜まるし、やる気も低下する」


 やがて誰もが与えられた仕事以外何もしなくなった。画期的な案も計画も、どうせ横から口先だけで奪われるのだから。さて文官達の思考力を奪ったものは、一体誰だったのか?


「それでも悪役令嬢(エルザ)だけは君を諌めていたそうではないか。いくらなんでも度が過ぎると」

「っ、それは……!」


 ――――臣民のために献策するのではなく、議会を開催することが目的になってはおられませんか?

 

 なによ、悪役のくせに。まるで自分が正義であるかのような言葉を吐くなんて生意気だ。あのときはそう思って、不愉快だと退けた。


「さて、こうなるとどちらが本当の悪役なのだろうね?」


 あの娘の言葉は正しかったとでも言いたいの? いやよ、そんなことは認めない。自分の過ちを受け入れがたいパトレアは激しく首を振った。


「いいえ、いいえ! 悪役令嬢と呼ばれるような娘の言葉に、聞く価値はありません!」

「ならばなぜ追放した悪役令嬢を取り戻すようなまねをしたのだ。皇国が引き取ってくれるというのだから、放っておけばよかったのに」

「それは皇国の善良な人々が毒されてはいけないからですわ! エルザは皇国の人々の善良な精神に欲望という毒を垂れ流すのです。人々を傀儡としてしまうようなおそろしい毒を持った娘。決して表に出してはいけない悪しき存在なのです!」


 閉じ込めておかなければ。そうしなければ、いつか……。王は冷めた瞳で激昂する王妃を見返した。


「不思議だな、貶す言葉のはずが逆にエルザを賞賛しているように聞こえる」

「は? そんなわけはないでしょう!」

「悪だというわりに、殺すでもなく見捨てるわけでもない。なぜ生かしたまま、エルザを自分のそばに引き留めようとしている?」


 ぐっと言葉に詰まった。


「パトレア、君はエルザの何を恐れているのだ?」

「恐れるですって、冗談が過ぎますわ。王妃である私が公爵令嬢ごときの何を恐れていると?」

「君はずいぶんと爵位にこだわりがあるようだけれど、エルザはもう公爵令嬢ではないよ。カレンデュラの姓を捨て、ユーザ・ロ・バルディアス皇国の国籍を持つ平民となった。彼女はラングレア王国とは一切関わりのない人間になったのだ。そんな彼女の、一体何を恐れているんだい?」

「ですから私は恐れていませんわ!」

「ではなぜ、エルザに関わりを持ったのだ!」


 常は穏やかな夫が耐え切れないというように怒鳴った。


 エルザ・カレンデュラはもういない。

 悪役令嬢は退場したというのに、なぜ残された人々は幸せになれないのだろうか?



 

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[一言] いや偉そうな事言ってるけど国王も王太子もお前ら同罪やぞ
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