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第126話「大祭4」

 

「しまった。マイさんを待たせているかも――」


 学園祭も1日目。

 任務ということもあってマイ・ハルカゼと行動を共にすると約束した今日この頃。

 俺は駆け足気味に教室に向かっていた。


「あらクレス君」

「あ、どうもクラリスさん」


 混み合う道中、相変わらず艶やかな金髪を目にする。

 持ち主はもちろん我らが生徒会長である。


「随分と慌てたご様子で」

「ツレに色々と面倒をかけられてしまって……」


 本目的の前にアウラさんやマキナさんやアウラさんやマキナさんやアウラさん――エトセトラ、主に2人の女性陣に時間を取られてしまったのである。


「反対側の階段に向かった方が早く到着しますよ?」

「え、そうですかね?」

「えぇ、女子のお手洗いは反対側に行ったほうが近いです」

「いやトイレに急いでいるんじゃないんで……というかナチュラルに女子用を勧めるのやめてください。生徒会長としてどうなんですかそれは」

「冗談ですよ。ジェンダー的な問題を軽々しく扱うわけにはいきません。お祭りと言うことで反対側にも男子のお手洗いを増設してあるんですよ」

「あぁなら安心してトイレに――ってだから違いますって!」

「頑なに否定するのも理解できますけどね。ワドウさん曰くニホンのあいどる?とやらは、排泄の類いを絶対にしないそうです」

「なんか会長、今日のテンションおかしくないですか……?」

「いいえ別に。ちょっと労働して、もう少し労働して、後押しに労働して、今もこれからも労働をしているだけですよ?」


 誰か会長をお休みさせてあげて!

 よく観察すれば、確かにその金髪は相も変わらず美しいものだが、肝心の碧い瞳からハイライトが消えているではないか。


「心配はいりません。明日にはクレス君の生まれ変わった姿が見れるので」

「自分が女装することがクラリスさんの健康状態を回復させてくれるとは思えないんですが……」

「いやいや効果絶大ですよ。これは魔法学的に証明されていることです」

「明らか嘘でしょう!」

「本当です。既に実証実験は済まされており、明日は模型氏も呼んでクレス君を模した人形を制作する予定です。これもまたニホン文化、ふぃぎゅあというやつです」

「はぁ、えらく異世界文化を取り入れますね」

「そりゃあ監修にワドウさんがいますから」

「おい!」

「大量生産が可能になれば随時前線へと配布し、士気向上に努めます」

「俺の許可とってないですよね……」

「ちゃんと規定されたお金は払いますので」

「そういう問題じゃないんですが……」


 ダメだ。

 今のこの人と喋っていると、こっちまで混乱――って、そもそも遅刻しそうだという話だったじゃないか。


「く、クラリスさん、そろそろ……」

「あぁ、待ち人がいるんでしたね。人が多いので廊下を走る際はお気をつけて」

「はい!」


 生徒会長なら「走らないように」と注意するべきところなんだろうが、今の彼女の疲労状態なら仕方ないのだろう。

 俺もまさかここまでの規模の学園祭だとは思っていなかった。

 想像の10倍は人が来ている。

 これをまとめるクラリスさんはどれだけ凄い事をなしているのか。


「……女装、頑張ろ」

 

 これまで女装女装とくどいぐらいくらい言われてきた自分だけれど。

 人生で前向きに、自分から女装しようと思ったのはこの時が初めてだった。


「だけどフィギュアはイヤだな……」


 自分そっくりの人形が各所に配られる。

 もはや指名手配所と同じような……。

 とりあえず教室に着いたらワドウさんを締めるところから始めよう。

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