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第127話「怪人」

 9番目コミカライズ①巻、12/24に発売です。

 前回までの大まかなあらすじ。

 9番目の災厄こと――俺、クレス・アリシアは、学園祭を目前にして以下の3名の災厄と合流を果たす。

 3番目の災厄、エルメス。

 5番目の災厄、アウラ。

 6番目の災厄、マキナ。

 

 彼らと共に、ボスが予見したこの学園祭中に訪れるという事件を対処しなければならない。

 しかし同時に学園の生徒の1人としてやるべき責務もある。

 それは演劇の主役(なぜかお姫様役)であったり、ミスコンの出場(なぜか女装をして)であったりといったことであり、潜入中である以上疎かにはできないだろう。


 さて、未知なる敵から最も襲われる可能性がある人物として、俺たち災厄は『マイ・ハルカゼ』を要注意人物と認定した。

 よって俺は文化祭1日目、彼女に「一緒にまわらないか?」と申し出た。

 なんだかんだと時間はかかったが、ようやくマイさんの待つ教室に辿り着いた――ところから物語は始まる。





「……クレス君、なんだかやつれた?」

 

 自分たちの教室は、机や椅子が一掃され、演劇のための準備室と化していた。

 そこら中に小道具や衣装が並び、裏方の皆さんはせわしなく手を動かしている。

 

 どうやら俺の到着が遅れたこともあって、マイさんは役者のひとりでありながら小道具の製作を手伝っているようだった。

 こちらが教室に入るとすぐに近づいてきたが、第一声はまさかの心配だった。


「そんなに疲れているように見える……?」

「うん。それにいつもより銀髪に潤いがないような……」

「う、潤い?」


 女性には髪の鮮度が見ただけで分かる能力があるのだろうか。

 自分にはまったく分からない例えである。

 

「クレス君の髪はいつも完璧なキューティクルがあるんだけど……」

「それがないってこと?」

「うん。いつもの90%分くらいしかないね」

「へぇそれは……ってたった一割減!? もはや誤差でしょそれ」

「いやいや。なんといってもこのクラスにいる女子――私たちはもう半年以上クレス君の銀髪をかんさ……見てきたからね」


 観察と言いかけたのがバレバレである。 

 ……まぁ見られても実害はないからいいけどさ。


「――っと、あんまり時間もないし、そろそろ行こうか」


 マイさんが時計を見て催促をする。

 俺やマイさんは役者側なので基本裏方仕事はしないが、それでも演技の練習であっり、衣装合わせなどがあって思いのほか教室に拘束されることになっている。

 文化祭を回るとした隙間時間に行くしかないのだ。




 

 ――で、それからはさっそくとマイさんと外へ出たのだが、


「「はぁ…………」」


 出店がある場所とは反対にある、人気の少ない広場で2人して肩を落とす。

 

「人混みに殺されるかと思った……」

「しかもなんだか沢山絡まれたしね……」


 ただでさえ人が多いのに、マイさん歩いているせいか話しかけられまくる。

 正直楽しむよりも、早くも気が滅入ってしまった。


「私がって言うけど、クレス君の人気も相当だったよ」

「そんなことはないと思うけど……」

「いやもう女の子たち全員目にハートマークを浮かべて殺しに来てたよ」

「殺しに来てた!?」

「そうだよ……色々な意味でだけど」


 色々ってどういう意味なんだ……。

 マイさんは「私がいなかったらどうなっていたことやら」と首を振る。

 そしてクレス君は守れて良かったと笑った。


(な、なんか立場が逆転しているような……)


 どうやら自分は女性たちからの魔の手から守られていたらしい。

 なんにせよ勇者の存在はそれだけで人目を引く。

 この学園の生徒であれば多少見慣れているだろうが、今日は部外者が多くこの学び舎に訪れている。

 滅多にお目にかかれない美少女勇者……当然部外者は近寄りたいだろう。


(どうするか……)


 今後の方針を悩んだ。

 それはマイさんとの今後の行動計画についてもそうであるし。

 なにより自分の〝護衛〟任務の在り方について。

 この感じだと他3人の勇者も同じ調子だろう。

 ケンザキに限って言えばようやく退院となったが、これでは苦労してそうだ。


「マイさん、あのさ――」 


 話しかけると、彼女は遮るようにしーっと指を立てた。

 その視線を真剣に遠くへ向けて動かさない。

 俺はなにか異常事態が起きたのだと悟り、一気に気を引き締めた。

 マイさんはこちらに顔を向けず、小声で話しかけてくる。


「クレス君、私たち勇者は黒い髪や瞳が特徴だっていうじゃない?」

「ああ」

「他の大陸で黒い髪や瞳をしている人っている?」

「否定する。現状では〝黒〟を持つのは異世界人しかいないとされているよ」

「なら……」


 マイさんはゆっくりと立ち上がり、俺を一瞥してからどこかに向かって歩き始める。

 俺も小さく頷いてから彼女の横に追いついた。


(一体マイさんはなにを見つけたっていうんだ――)


 ただマイさんは多くは語らず、黙々と人混みに向かうのみ。

 ならばと先の会話から推測をしてみる。


(マイさんは自分たちのアイデンティティ――象徴とも呼べる外見について確認した。黒髪と黒眼は異世界人である証拠と知ってなにを思う……?)


 困惑する。

 しかしふと脳裏に、この学園に来たばかりのことを思い出した。


(そういえば……あの資料には〝5人目〟の異世界人がいるって)


 確かその男の名は――ショーゴ・マノ。

 文献には『巻き込まれし者』とだけ記載があった行方知らずの人物である。

 なぜこの男のことを今になって思い出したのか。

 明確な理由はない。

 しかし自分の感覚を信じるならば――

 

 俺はリスクを背負って賭けに出ようと思った。

 静かに深呼吸をした後、マイさんにこう尋ねる。

 

「もしかして――巻き込(、、、)まれた(、、、)?」

「え……」


 あれだけ真剣な面持ちだった彼女の表情が揺らぐ。

 まったくの他人から発された『巻き込まれた』というワードに極端に反応してしまった。

 

「あ、ごめん。変な言い方した。本当は――他の勇者であるワドウさんやスガヌマなんかがあの人混みに巻き込まれていた? って訊こうと思ったんだ。俺たちもさっき酷い目に遭ったし、あまりに黙々としているもんだから、もしかして今から助けに行こうとしているのかなって」


 違うの? と俺はたたみ掛ける。

 が――違うもなにもあったものではあるまい。

 彼女ら4人は、王国によって〝5人目〟をことを口外禁止とされているのだから、本当のことを答えられるはずもないのだ。


「え、えーっと……うん、まぁそんな感じ。なんかあの人混みの中に凜花が混じっているように見えて。それで……すぐ助けなきゃって。ごめん、急に動いて」

「謝ることじゃないさ。じゃあ助けに行こうか」

「でもでも、もう見失っちゃったし。というか凜花じゃなかったかも」

「ふーん……」


 マイさん、嘘がヘタである。

 顔と口調を見れば一発だ。


(これは本当に――物語が大きく動きそうだ)


 だいぶイジワルなことをしたが、マイさんに幾つものカマを掛けて〝5人目〟がこの学園にいるかもしれないという仮説が立った。

 そしてもし仮にショーゴ・マノとやらが学園にいたとして、


(目的はなんだ? どんな能力を持つ? これまで姿を隠していた理由は? なぜ今になって勇者たちの元にやってきた? そもそも国境をどうやって越えてきた? あるいは協力者がいるのか? それとも――)


 疑問は尽きない。

 マイさんはいかにも取り繕ったという笑顔を浮かべて、この話題を強引に切り替えようとする。

 

「そ、そろそろ教室に戻ろうよクレス君」

「ああ……そうだね」


 果たして〝5人目〟は自分たちの敵なのか、そうでないのか。

 またショーゴ・マノ以外に敵がいるとすれば、彼奴らは何者なのか。

 

 怪しき人々の舞踏(ロンド)が、静かに始まっていた。

 どうも、東雲です。

 随分と間が空いてしまい、申し訳ありませんでした。


 いつもの如く駄文を並べますが、近頃はR18小説に熱中しています。

 やはりエロは強い……!

 ここ最近はノクターンノベルズの方で書いていたのですが、勉強不足だと思いしらされてばかりです。


 それから――『9番目』コミカライズ①巻が明日24日に発売されます。

 クリスマスイブのお供に是非いかがでしょうか?

 ……って、分かっています。急に更新したと思ったら宣伝かよ!という声が聞こえて来ますとも。

 ただ現在なろう用の新作も作ってまして、具体的には来年1月あたりに投稿できたらなぁと考えています。

 

 どこもめっきり寒くなってきたと思います。

 みなさん、身体をご自愛くださいませ。

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