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さくらの季節   作者: 木内杏子
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意味、ないじゃん

みなさま、かれんちゃんを覚えていらっしゃるでしょうか。


「……?」


覚えてない!?


最初の方に出てきた、明希の彼女、今は元カノさんです。


「いや、それでも分かんね」っていう方は、第9話「妹」をご覧ください。


長々と前書き失礼しました。

部活終わりに、あたしはふらっとある街に立ち寄った。ちょうど2ヶ月前まで、毎日明希と来ていた駅に降り立ち、その辺をブラブラした。


明希と別れてからも、あたしはこの街が好きで、そしてまだ明希が好きだった。


『かれん』


そう明希に呼ばれた頃が懐かしい。でも、いいんだ、もう。あたしは明希の恋を見守ることにしたから。



あたしは、少し歩いて公園のベンチに腰を下ろした。木陰に吹く風が気持ちいい。目の前では小学生になるかならないかぐらいの男の子が一生懸命穴を掘っていた。落とし穴でも作るのだろうか。自然に笑みがこぼれて、そのまま、あたしはふと目を公園の側の道路に向けた。



1人の女の子が体操服でとぼとぼ公園の前を歩いていく。あ、桜ちゃんか。あたしはとっさに走って桜ちゃんに話しかけた。



「やっほーー!! 桜ちゃん!久しぶり」

わざと明るい声で、沈んだ表情の桜ちゃんに話しかけた。彼女はびくっと肩を震わせて、やや俯きがちにあたしを見た。髪の隙間から見える目は、赤くなっていた。


「……かれん、さん?お久しぶりです」

ぼそぼそと疲れ切った声で、桜ちゃんが言った。泣いてたのか。何があったの。今頃幸せにしてると思ったのに。

だって、明希は……。



「どうした? 大丈夫?」

あたしは、今にも泣きそうな桜ちゃんを公園のベンチに座らせた。男の子は落とし穴に飽きたようで、ブランコに座っていた。


「もしかして。明希?明希がなんかやったの?」

あたしは気づいていた。桜ちゃんと坂であった時、確信した。

桜ちゃんは明希に恋をしている。だから、桜ちゃんをこんな顔にできるのは明希しかいない。


「……今日、明希先輩に彼女さんを紹介されました。かれんさんとは別れたんですね……」


は。あたしは耳を疑った。そもそも、あたしと明希が別れた理由は、桜ちゃんだ。


「私と同い年の綺麗な女の子でした。ふふ、私なんて……ああ、何言ってるんだろ。っていうかなんで知ってるんですか。私が明希先輩のことが好きってこと」


暗く笑った桜ちゃんは痛々しかった。


「いや、なんとなくわかっちゃったっていうか……。そっか。まあ、私も振られたけど、明希に」


適当にごまかして、あたしは涙をこらえながら自嘲的に作り笑いをしている桜ちゃんをみて、明希にイライラしてきた。


だって、だって、明希。あたしと別れたのは、そんな何処の馬の骨かわかんないような子と付き合うためじゃないでしょーが。



ちゃんと、誠実に思いを伝えるためじゃなかったの?後悔しているんじゃないの、桜ちゃんを振って傷つけたこと。なのに。また傷つけてる。意味ないじゃん、あたしと別れた意味ないじゃん。あたしが明希のこと、諦めた意味、ないじゃん。


あたしに打ち明けてくれたこと、全部、ウソだったの?あんなに真剣な顔をして、ウソを吐いたの?違うよね。そうじゃないって信じてる……。



後悔してんなら、ちゃんと伝えなさいよ。


ずっと、好きなんでしょ。桜ちゃんのことが。

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