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追放された鍛冶錬金師は、数値を信じるギルドを見限って静かに最強になる 〜評価されなかった生産職ですが、使った人だけが違いに気づきます〜  作者: 神崎タクミ


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第88話 対等

 黒い影が、ゆっくりと歩いてくる。


 隠れない。


 逃げない。


 ただ、正面から。


 「……出てきたわね」


 ミレアが低く言う。


 その声には、警戒と――わずかな興奮が混ざっていた。


 カイルは答えない。


 ただ、その男を見る。


 細い。


 無駄がない。


 持っている武器も、異様にシンプルだ。


 だが。


 それが逆に分かる。


 ――完成している。


 「……指揮官」


 エルザが呟く。


 男は止まる。


 距離、二十歩。


 そのまま、視線だけがこちらに向く。


 「……面白い」


 低い声だった。


 抑揚はない。


 だが、明確に。


 評価している。


 ミレアが笑う。


「どうも。そっちも」


 男は首をわずかに傾ける。


 視線は、カイルから動かない。


 「お前だな」


 一拍。


 「構造を作ったのは」


 カイルは答える。


「はい」


 それだけ。


 余計なことは言わない。


 男は言う。


 「未完成だ」


「はい」


 即答。


 ミレアが横で笑う。


「素直すぎでしょ」


 だが。


 それが事実だった。


 男は続ける。


「だから壊せる」


「はい」


 一拍。


「ですが」


 カイルが言う。


「壊される前提で作っています」


 沈黙。


 男の目がわずかに細くなる。


 「……なるほど」


 初めて、興味が乗る。


 ミレアが小さく息を吐く。


「食いついたわね」


 次の瞬間。


 男が動いた。


 速い。


 だが。


 読める。


 カイルが一歩。


 固定。


 同じ位置。


 同じズレ。


 だが。


 ――通らない。


 刃が止まる。


 わずかに。


 軌道が修正される。


 「……修正」


 エルザが呟く。


 固定が通じない。


 男は言う。


 「再現は甘い」


 そのまま、踏み込む。


 ミレアが入る。


 ぶつかる。


 重い。


 だが、拮抗する。


 「……硬いわね」


「はい」


 カイルは言う。


 そして。


 視線を動かす。


 動き。


 癖。


 選択。


 全てを見る。


 男が再び動く。


 今度は。


 逆方向。


 固定の外。


 ミレアが反応する。


 だが。


 わずかに遅れる。


 「――!」


 弾かれる。


 後ろへ。


 地面に滑る。


 血。


 だが。


 立つ。


「……っぶないわね」


 ミレアが笑う。


 だが。


 笑っていない。


 男は言う。


 「固定は対処できる」


 一拍。


 「パターンだからだ」


 その通り。


 カイルは頷く。


「はい」


 そして。


 言う。


「だから増やしました」


 次の瞬間。


 カイルが動く。


 位置を変える。


 固定ではない。


 だが。


 “決まった動き”。


 もう一つの固定。


 男の刃が外れる。


 わずかに。


 「……複数」


 男が言う。


 理解している。


 だが。


 完全ではない。


 ミレアが踏み込む。


 さっきと同じではない。


 違う角度。


 違うタイミング。


 振る。


 当たる。


 浅い。


 だが。


 入る。


 男がわずかに後退する。


 静寂。


 初めて。


 距離ができる。


 エルザが息を呑む。


「……押した」


 ミレアが笑う。


「いいじゃない」


 だが。


 男は笑わない。


 ただ。


 静かに言う。


 「対等だな」


 その一言。


 それは。


 初めての評価だった。


 カイルは答える。


「はい」


 一拍。


「ここからです」


 男が頷く。


 わずかに。


 そして。


 武器を構え直す。


 空気が変わる。


 今までとは違う。


 “本気”。


 エルザが震える。


「……次、来ます」


 カイルは言う。


「はい」


 そして。


 一歩前へ。


 同じではない。


 だが。


 崩れない。


 構造。


 それが。


 ここまで来た。


 だが。


 まだ終わらない。


 むしろ。


 ここからだった。

読んでいただきありがとうございます。


ついに「対等」という評価が出ました。

ここまで積み上げた構造が、ようやく通じ始めています。


ですが――ここからが本番です。


次は「決着」。


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