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追放された鍛冶錬金師は、数値を信じるギルドを見限って静かに最強になる 〜評価されなかった生産職ですが、使った人だけが違いに気づきます〜  作者: 神崎タクミ


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第74話 数値の支配

 空気が、変わった。


 それは目に見えるものではない。


 だが、その場にいる全員が理解していた。


 ――格が違う。


 灰色の外套の男は、一歩も動いていない。


 それでも。


 場を支配していた。


「続けてください」


 低い声。


 命令ではない。


 だが拒否はできない。


 監査官が短く言う。


「継続」


 三人の兵士が構える。


 呼吸が乱れている。


 だが止まらない。


 止まれない。


 ミレアが小さく言う。


「……見られてますね」


「はい」


 カイルは答える。


 ただの監査ではない。


 選別。


 評価。


 そして――


 切り捨て。


「やります」


 カイルが一言だけ言う。


 三人が動く。


 再現層。


 安定した動き。


 崩れない。


 揃っている。


 ヴァルディア側も動く。


 同じ。


 揃っている。


 均衡。


 完全な。


 灰色の男が言う。


「……同等」


 エルザの手が止まる。


 その一言。


 それだけで評価が決まる。


 ミレアが歯を食いしばる。


「……まだです」


 カイルは言う。


「切り替え」


 一人が前に出る。


 最大層。


 踏み込み。


 速い。


 重い。


 深い。


 だが。


 灰色の男が言う。


「不安定」


 その瞬間。


 空気が止まる。


 兵士の動きがわずかに鈍る。


 ミレアが小さく舌打ちする。


「……見てる」


 カイルは言う。


「続けてください」


 兵士が振る。


 入る。


 深い。


 だが。


「再現不可」


 灰色の男が言う。


 エルザが記録を止める。


 その一言で。


 価値が落ちる。


 ミレアが言う。


「……最悪ですね」


 カイルは動かない。


 ただ見ている。


 灰色の男は続ける。


「制度として不適」


 静かな断定。


 それだけで。


 終わる。


 ――はずだった。


「違います」


 カイルが言った。


 全員が止まる。


 視線が集まる。


 灰色の男が初めて、完全にカイルを見る。


「……説明を」


 カイルは一歩前に出る。


「評価基準が違います」


「基準は固定です」


「はい」


 一拍。


「だから負けます」


 ミレアが息を呑む。


 エルザが目を見開く。


 監査官が動く。


 灰色の男は言う。


「……どういう意味ですか」


 カイルは言う。


「今の評価は」


 一拍。


「単一です」


 エルザが理解する。


「……平均値」


「はい」


 カイルは頷く。


「平均では勝てません」


 事実。


 ヴァルディアはそこが強い。


「ですが」


 一歩。


「分布で見てください」


 灰色の男の目が細くなる。


「……分布」


「はい」


 カイルは言う。


「最大値」


「中央値」


「最低値」


 一拍。


「全部で評価してください」


 エルザが即座に記録を開く。


「データ、あります」


 ミレアが笑う。


「やりますね」


 灰色の男が言う。


「提示を」


 エルザが読み上げる。


「再現層:安定」


「最大層:高出力」


「切り替え:成功」


 そして。


「全体効率:上昇」


 静寂。


 灰色の男が言う。


「……分布としては」


 一拍。


「優位」


 その一言。


 それで空気が変わる。


 ミレアが小さく拳を握る。


「……来た」


 カイルは何も言わない。


 ただ立っている。


 灰色の男が言う。


「しかし」


 その一言で、再び止まる。


「複雑」


 一拍。


「管理困難」


 エルザの表情が固まる。


 ミレアが言う。


「……そこか」


 カイルは静かに言った。


「はい」


 認める。


 その上で。


「だから分けました」


「……分けた?」


「はい」


 カイルは言う。


「役割です」


 一拍。


「全員に求めていません」


 灰色の男が、わずかに興味を示す。


「……続けてください」


「再現層は維持」


「最大層は突破」


 一拍。


「それぞれ役割を持たせます」


 エルザが補足する。


「管理単位を分割」


「負担軽減」


「評価可能」


 灰色の男は黙る。


 長い沈黙。


 そして。


「……合理的」


 その一言。


 ミレアが笑う。


「やっと来ましたね」


 だが。


 灰色の男は続ける。


「ただし」


 一拍。


「前例がない」


 空気が再び止まる。


 カイルは言う。


「作ります」


 迷いなし。


 灰色の男が見つめる。


「……本気ですね」


「はい」


 そして。


 男は一歩下がった。


「一次評価」


 一拍。


「保留」


 ミレアが息を吐く。


 エルザが記録する。


 だが。


 終わりではない。


 灰色の男が最後に言う。


「最終評価は」


 一拍。


「王が行う」


 その一言で。


 すべてが次に繋がった。

ここで「理論勝利」を入れました。


ただし、まだ確定ではありません。

次は――王です。


ここからさらにスケールが上がります。


ブックマーク・評価してもらえると嬉しいです。

続きを楽しみにしていてください。

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