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追放された鍛冶錬金師は、数値を信じるギルドを見限って静かに最強になる 〜評価されなかった生産職ですが、使った人だけが違いに気づきます〜  作者: 神崎タクミ


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第64話 時間差の敗北

 講習は続いていた。


 兵士たちの動きは、昨日よりも明らかに良くなっている。


 足を動かす。

 衝撃を逃がす。

 流す。


 繰り返すことで、形になってきている。


「……できてきたな」


「さっきより全然違う」


 兵士たちの表情も変わっていた。


 理解ではなく。


 “使える”という実感。


 ミレアが頷く。


「いい感じです」


 エルザも静かに言う。


「再現性は出てきています」


 制度に近づいている。


 だが――


 その時。


 別の整備兵が走ってきた。


「報告!」


 場の空気が引き締まる。


「何だ」


 エルザが答える。


「第三部隊ですが」


 一拍。


「全装備をヴァルディア製に切り替えました」


 沈黙。


 ミレアの動きが止まる。


 エルザの顔が固まる。


「……なぜ」


「補給が安定しているためです」


「……」


「あと」


 一瞬だけ言い淀む。


「訓練が簡単なので」


 その言葉が、重く落ちた。


 ミレアが小さく呟く。


「……そっちか」


 カイルは静かに聞いている。


 整備兵は続ける。


「第四部隊も検討中です」


 エルザが歯を食いしばる。


「早すぎる」


 だが。


 理由は明確だった。


 ・すぐ使える

 ・同じものが手に入る

 ・教えるのが簡単


 それは――


 時間の差。


 ミレアが低く言う。


「こっちは育てる」


 一拍。


「向こうは配る」


 その違いは大きい。


 カイルは静かに言った。


「負けていますね」


 エルザが振り向く。


「……認めるんですか」


「はい」


 事実だった。


「今は」


 一拍。


「時間で負けています」


 講習は効果がある。


 だが時間がかかる。


 一方でヴァルディアは。


 最初から完成している。


 その差は――


 戦場より残酷だった。


 ミレアが拳を軽く握る。


「でも」


 一拍。


「このままじゃ終わらないですよね」


 カイルは頷いた。


「ええ」


 そして言う。


「相手の土俵で戦っています」


 ミレアが理解する。


「規格と速度の勝負」


「はい」


「だから負ける」


 エルザが言う。


「では、どうするんですか」


 カイルは少しだけ考えた。


 そして。


「土俵を変えます」


 ミレアが笑う。


「やっぱりそれですね」


 カイルは言う。


「速さでは勝てません」


 一拍。


「なので」


 静かに。


「速さを意味のないものにします」


 エルザが目を細める。


「……どうやって」


 カイルは市場の方を見る。


 人の流れ。


 選択。


 基準。


 そして。


「壊します」


 ミレアが一瞬止まる。


「……何を?」


 カイルは答えた。


「選ばれる理由を」


 それは。


 正しさそのものへの、攻撃だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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