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追放された鍛冶錬金師は、数値を信じるギルドを見限って静かに最強になる 〜評価されなかった生産職ですが、使った人だけが違いに気づきます〜  作者: 神崎タクミ


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第62話 広がらない技術

 数日後。


 砦の一角に、簡易の講習場が作られていた。


 木の机。

 並べられた盾。

 十数人の兵士。


 その前に立っているのは――


 ミレアだった。


「今日は、隊形と受け方を教えます」


 兵士たちが少し緊張した顔で頷く。


「難しいことは言いません」


 一拍。


「斜めに受けて、流すだけです」


 シンプル。


 カイルのやっていたこと。


 それを言語化したもの。


 ミレアは盾を持ち、実演する。


「正面で受けると、こうなります」


 衝撃を受ける動作。


「一点に集中します」


 次に、斜めに構える。


「角度をつけると――」


 衝撃を流す動き。


「分散します」


 兵士たちが頷く。


「簡単そうだな」


「そう見えますね」


 ミレアは笑う。


「じゃあやってみましょう」


 兵士同士で組ませる。


 盾を構える。


 一人が押す。


 もう一人が受ける。


 最初はうまくいく。


「お、いけるな」


「簡単じゃねえか」


 だが。


 二回目。


 三回目。


 少しずつズレる。


 角度が甘くなる。


 足が滑る。


 衝撃が戻る。


 兵士が顔をしかめる。


「……あれ」


「さっきと違う」


 ミレアが静かに見ている。


「もう一回」


 やらせる。


 だが同じ。


 再現できない。


 エルザが腕を組む。


「……安定しない」


「はい」


 ミレアはあっさり言う。


「しません」


 兵士が言う。


「角度が分からねえ」


「どれくらい傾ければいいんだ?」


 ミレアは少しだけ考える。


「感覚です」


 その瞬間、空気が止まった。


「……感覚?」


「はい」


「それじゃ分かんねえよ」


 兵士が苦笑する。


 当然だった。


 再現できない。


 それはつまり。


 教えられない。


 カイルは少し離れた場所で見ていた。


 何も言わない。


 ただ観察している。


 ミレアはもう一度やらせる。


 だが結果は同じ。


 個人差。


 ばらつき。


 安定しない。


 エルザが低く言う。


「制度にできませんね」


「ええ」


 ミレアは頷く。


「無理です」


 兵士たちが少しずつ諦めた顔になる。


「やっぱり規格の方がいいか」


「同じ方が楽だな」


 その言葉が、重く落ちる。


 ミレアは何も言わなかった。


 否定できない。


 それもまた事実。


 講習は終わる。


 兵士たちは去っていく。


 残るのは、静けさ。


 エルザが言う。


「……これが限界です」


 カイルは答えない。


 ミレアがぽつりと言う。


「分かってましたけどね」


 一拍。


「やっぱり難しい」


 少しだけ悔しそうな声。


 だが目は死んでいない。


 カイルが初めて口を開いた。


「いいですね」


 ミレアが振り向く。


「何がです?」


「失敗です」


 ミレアが一瞬だけ驚く。


 カイルは言う。


「壊れました」


 一拍。


「だから次が作れます」


 ミレアが少しだけ笑う。


「……そうですね」


 エルザが静かに言う。


「ですが時間がありません」


 制度は結果で評価される。


 そして今。


 結果は出ていない。


 カイルは空を見る。


 砦の上。


 遠くの森。


 そして市場。


 すべてが繋がっている。


 静かに言った。


「別の形にします」


 ミレアが聞く。


「どうやって?」


 カイルは少しだけ考え――


 答えた。


「人を変えます」


 技術ではなく。


 使う側を。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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