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追放された鍛冶錬金師は、数値を信じるギルドを見限って静かに最強になる 〜評価されなかった生産職ですが、使った人だけが違いに気づきます〜  作者: 神崎タクミ


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第59話 戦後の歪み

 戦場は、終わっていた。


 だが静けさは、安堵ではなかった。


 兵士たちは動いている。

 負傷者の搬送。

 装備の回収。

 遺体の確認。


 だが、どこか空気が重い。


 将校が丘の上に立ち、全体を見ていた。


「……持ったな」


 隣に立つ副官が答える。


「はい。想定以上に」


 だが将校は、頷かなかった。


「想定外だ」


 一拍。


「良い意味でも、悪い意味でも」


 視線の先には、整備区画。


 兵士たちが盾を並べている。


 壊れた盾。


 壊れていない盾。


 その差が、明確に分かれていた。


 副官が言う。


「例外の影響ですか」


「……ああ」


 将校は小さく息を吐く。


「隊形変更で持った」


「はい」


「だが」


 一拍。


「他の部隊は同じことができるか?」


 副官は答えなかった。


 できない。


 それは分かっている。


 ――カイルがいたから成立した。


 それだけの話。


 整備区画。


 ミレアが、盾を一枚持ち上げていた。


「こっちは壊れてない」


 横に置く。


「こっちは壊れてる」


 別に置く。


 並べると、はっきり分かる。


 壊れたものは、同じ場所が歪んでいる。


 だが壊れていないものは――


 歪み方がバラバラだ。


 エルザがそれを見る。


「……再現性がない」


「はい」


 ミレアは頷く。


「いい意味でも、悪い意味でも」


 カイルは少し離れた場所で見ていた。


 何も言わない。


 ただ観察している。


 エルザが言う。


「報告書が書けません」


「でしょうね」


 ミレアは笑う。


「再現できないので」


「これでは制度にできない」


 エルザの声は真剣だった。


 王は制度として認めた。


 だが。


 制度とは本来――


 再現できるものだ。


 カイルは静かに言った。


「無理です」


 エルザが振り向く。


「なぜ」


「人で変わるので」


 一拍。


「同じになりません」


 正論だった。


 エルザはしばらく黙る。


 そして言う。


「では」


 一歩踏み込む。


「どうやって広げるんですか」


 その問いは重かった。


 制度になった以上、広がらなければ意味がない。


 だが――


 カイルは答えない。


 ミレアが代わりに言う。


「広げられません」


 エルザが眉を寄せる。


「それでは」


「はい」


 ミレアはあっさり言った。


「だから例外なんです」


 その言葉で、場が止まる。


 制度なのに、広がらない。


 それは矛盾だった。


 エルザが低く言う。


「……王はこれを許容すると思いますか」


 カイルは空を見る。


 夕方の光。


 戦場の終わり。


 だが問題は終わっていない。


「許容しなければ」


 一拍。


「消えます」


 静かな事実。


 制度は、結果で評価される。


 その時。


 遠くの門の方で、再び動きがあった。


 兵士が駆けてくる。


「報告!」


 将校が振り向く。


「何だ」


「王都より通達!」


 空気が変わる。


 兵士が息を整えながら言う。


「ヴァルディアとの通商が、一部再開されました」


 その一言で、全員が止まった。


 エルザの顔が変わる。


「……早すぎる」


 将校が低く言う。


「つまり」


 一拍。


「戦場とは別に動いている」


 カイルは静かに呟いた。


「来ましたね」


 戦場では勝った。


 だが。


 別の場所で、戦いが始まっていた。

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