表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された鍛冶錬金師は、数値を信じるギルドを見限って静かに最強になる 〜評価されなかった生産職ですが、使った人だけが違いに気づきます〜  作者: 神崎タクミ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/78

第1話 役に立たない技術職

※本作は「追放×生産職」をテーマにした物語です。

派手な戦闘無双ではなく、

数値では測れない技術と、それを正しく評価する人々を描いています。

静かな成り上がりを楽しんでいただければ幸いです。

 冒険者ギルドの会議室は、いつもより空気が重かった。

 長机を囲むのは、前線で名を売る戦闘職たちと、ギルドマスターのバルド。そして、部屋の隅に立たされている一人の青年――カイル・エルグ。


「結論から言う」


 バルドが低い声で告げた。


「カイル、お前は本日をもって、このギルドから外れてもらう」


 一瞬、誰かが息を呑む音がした。

 だが、カイルは表情を変えなかった。ただ静かに、その言葉を受け止める。


「理由は分かっているな?」


「……はい」


 短く答えると、戦闘職の一人が苛立ったように舌打ちした。


「分かってるなら話が早い。最近の装備、どうなってる? 前より壊れやすいし、更新も遅い。薬だって足りない」


「現場が回ってないんだよ!」

「生産職が足を引っ張ってどうする!」


 次々と飛んでくる非難。

 カイルはそれを遮らず、黙って聞いていた。


 副長のセインが、机に置いた書類を叩く。


「数字を見ろ。ここ半年、装備更新率は低下、錬金薬の供給数も横ばい。コストだけは増えている」


「素材を無駄にしてる、って話だな」

「そういうことだ」


 セインは冷たく言い切った。


「研究だの試作だのと言って、成果を出していない。ギルドは慈善事業じゃない」


 カイルはようやく口を開いた。


「……試作は、すべて次の工程に繋がっています。今すぐ形にならなくても——」


「今すぐ必要なんだよ!」

 戦闘職の男が机を叩く。


「俺たちは明日も命懸けで潜る。理屈より、使える装備を寄こせ!」


 正論だった。

 少なくとも、この場では。


 バルドが手を上げ、場を制する。


「カイル。お前の理論や姿勢を否定するつもりはない」


 ――嘘だな、とカイルは思った。


「だが、このギルドの方針とは合わなかった。それだけの話だ」


 淡々と、まるで天候の話でもするように。


「明日までに工房を明け渡せ。私物だけは持っていっていい」


「……研究ノートは?」


 問いかけると、セインが即座に答えた。


「ギルド資産だ。置いていけ」


 一瞬、胸の奥が軋んだ。

 半年分の記録。失敗も成功も、すべて詰まったノート。


 だが、カイルは首を縦に振った。


「分かりました」


 それ以上、何も言わなかった。


 騒然とする会議室を背に、彼は静かに扉を閉める。


 ――結局、証明できなかった。


 頭の中で、そう結論づける。

 自分のやり方が間違っていなかったとしても、価値を伝えられなかったのは事実だ。


 工房に戻ると、見慣れた道具たちが並んでいた。

 何度も手入れし、癖を把握した相棒。


「……悪いな」


 誰にともなく呟き、必要最低限だけを袋に詰める。


 壁に掛けられた武器を見て、ふと思い出す。

 これを使った冒険者は、確かに言っていた。


『使いやすい』


 だが、それは数字にならない。

 評価表にも、報告書にも載らない。


 袋を背負い、工房を出る。

 鍵を閉めることはなかった。もう、自分の場所ではない。


 外に出ると、夕暮れの空が広がっていた。


「……仕方ない」


 そう呟いて歩き出す。


「証明できなかった俺が、悪い」


 その言葉は、誰に聞かせるでもなく、石畳に吸い込まれていった。


 この時のカイルは、まだ知らない。

 自分が去った後、このギルドが何を失ったのかを。


 そして――

 自分の技術が、本当に必要とされる場所が、すぐそこまで来ていることを。

ここまでご覧いただきありがとうございます。


当面の間は、1日に3話を投稿予定です。


ブックマークをして、続きを楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ