第七話 魔術師不要 ⑩
「なんだか疲れたね」
宿屋を出て私たちは入ってきた門へと向かう。最初に来たときよりも街を歩いている人が多い。みんな私たちと反対方向、街の中心に歩いているようだ。
「なんだろ」
「さあね」
少し歩いて門のところまで来た。
門にいた衛兵が槍を持っていない手を上げた。
「旅人さん、予定通りだね」
「ええ、はい」
滞在期限の三日、ということだ。もし私たちが起きなかったり、街に留まることを選択したとしたら、キガサワはどうするつもりだったのだろう。
「どうだったかい?」
「素敵な街でした」
衛兵が笑顔になる。
実際にはほとんどどこにも行かなかったけど。
「それはよかった。じゃあ元気で」
「ええ、そちらも」
「街の人たちは?」
アランが衛兵に聞いた。
「ああ、なんか、監督官から話があるって。俺たちは行けないが、なるべく多くの人を聞いて欲しいって。あまり人前には出てこないからこんなことは今までなかったんけどな、まあ、悪い話じゃないだろう。街は平和そのものだ」
私とアランが顔を合わせる。
「何か知ってるのか? あんたらは監督官に会ったって聞いたが」
「いいや、食事をしただけだ」
「そうか。次はどこへ行くんだ?」
「ええっと、この隣街です。私の故郷なんです」
「へえ、そうなのか。俺も用事で何度か行ったことがあるが、こことは違って広くていい街だったな。まさに牧歌的という言葉が合っている」
「そうです。領主はベルクグリーンです」
私は自分の姓を言葉に出した。
「ベルク……?」
衛兵は首を傾げた。
「いいや、そんな名前じゃなかったような気がするが」
「そうなんですか?」
「うーん、俺もそこまで覚えているわけじゃないからな、自信はない」
「そうですか……」
「まあ、また来てくれよ」
私たちは軽くお辞儀をして、その場を離れた。
「ここから歩いて二日くらいだよ」
私がアランに言う。
「でも、隣街なのに領主の名前を知らないなんて」
「どうかな、もう百年経つ」
「そうだね、別な家になっているのかも」
「行けばわかるよ」
「うん」
そうして、一抹の不安を持ちながらも私たちは目的地に近づいていく。






