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【5/2コミカライズ一巻発売】【完結保証】およそ100年幽閉されていた魔術師夫婦は世界を巡る  作者: 吉野茉莉
第二話 魔術師の資質

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第二話 魔術師の資質 ⑨

 街に来て三日目になり、私たちは荷物をまとめた。


 ケーリュの家に行き、ケイオンも合わせて四人で街を出た。ケーリュは長い杖を持っている。農地を横切り、林の中に入る。そこまでは道も整備されているようだった。


 林の中に、開けた場所があった。


 そこにはアーチ状に組まれたレンガ積みの建築物があった。


 二人が並んで通り抜けられるくらいだ。


「確かに魔素が他の場所より濃い」


 アランが言った。その差は私にはまだわからない。


「これが転送門だ。場所によって多少の形の違いはあるが、大体は似たようなものだな。それじゃあ準備をする」


 ケーリュがケイオンから何か袋を受け取り、腰を屈めてその中身を掬って地面に落としていく。石灰のような白い粉だ。


「石で書いておけばいいんだろうが、この辺りは獣がいてな、都度書かなくちゃいけない」


 建築物を囲むようにケーリュは一周して石灰を撒いていく。


 あまり時間はかからず、準備は整ったようだ。


「じゃあ、いいな」


 ケーリュが屈んで杖でトンと地面を叩き、立ち上がってアーチを指した。


「『透明な混濁』

 『屹立する海』

 『水平な山脈』

 『逆転する砂時計』

 『到達する永遠』

 『融合する魂』

 『重複する世界』

 『割れることのない(ひび)を開けよ』」


 アーチに白いヴェールがかかる。


「さあ、行ってくれ。入ればすぐに向こう側の転送門に着く」


「ありがとう」


 私がケーリュとケイオンに向かってお礼を言う。


「ただ、あまり次の街は気に入らないかもしれないな。特にあんたみたいな魔術師にとっては」


 ケーリュはアランを見ていった。


「どういうことだ?」


「行けばわかるさ」


「わかった」


 アランが私の手を取ろうとしたところで止め、ケーリュを見た。


「互いの選択に、最良の祝福を」


 アランの言葉を聞いて、ケーリュは苦笑いをしているみたいだった。


「懐かしい。久しぶりに聞いた。まあ、そうだな、互いの選択に、最良の祝福を」


 アランと同じく返した。彼らには理解ができるフレーズなのだろう。


「行こうか、エミーリア」


「あの」


 アランと一緒にアーチをくぐろうとしたとき、ケイオンが声を掛けた。


 アランが先に振り返る。


「なんだい」


「良い魔術師になるには、どうしたらいいですか?」


 ケイオンが聞いた。


 アランが一瞬だけ考え込む。


「良い魔術師になるには、そうだな、強い意志を持って、諦めないことだ」


「諦めないことですね、ありがとうございます!」


 ケイオンが深々と頭を下げた。


 それをケーリュは黙ってみていた。


「それじゃあ」


「じゃあね」


 私とアランはアーチに向き直し、一歩踏み入れた。

(二話目はここまでです)

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