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ゲルダの見解


「やぁ、レイネ。戻って来たよ」

「叔父様。この度はお忙しい中ご協力して下さり、ありがとうございます」 

「君は兄上の娘なんだ。気にしないでくれ」


 恭しいレイネのお礼に、”叔父様„と呼ばれた赤い髪をした高身長の男性は苦笑交じりに返した。

 赤髪はアルグラント家の遺伝なのだろうか?

 そんな事を考えていると、レイネの叔父様は僕へ視線を移した。


「君がジンクだね? レイネの叔父、ゲルダ・アルグラントだ」

「ジンクです。よろしくお願いします」

「よろしく」


 ゲルダ様が手を差し出してきたので、僕は握手を交わす。

 身長に見合った大きな手は、岩の様な触り心地をしている――剣だこがあるんだ。この人がどれだけ剣を振ってきたのかよく分かる。

 握手を終えるとゲルダ様は神妙に話す。


「君の状況については聞いているよ。分からない事が多くて不安な事だろう。

 レイネから聞いているかも知れないが、私は精神干渉魔法に精通していてね。もしかしたら君の力になれるかも知れない」

「ありがとうございます。とても心強いです」

 

 精神干渉魔法が謎に包まれた魔法である事は知っている。その分野に詳しいゲルダ様の協力が得られるのだから、本当にありがたい。


「――ああ、レイネ。魔道具をジンク殿の部屋に配置したいのだが構わないかな?」

 執事に「持って来てくれ」と命じるゲルダ様に、レイネは訝し気な表情を浮かべた。

「ジンクの部屋にですか? 理由をお聞きしても?」

「実は、持って来た魔道具は特殊でね。指定した人物に掛かった状態異常の魔法を解くか弱体化させることができるんだよ。逆に、能力を強化する事も可能だ。ジンクに掛かった魔法にも効果があるかも知れない」


 ゲルダ様が言い終えたところで、執事が魔道具らしき物を運んできた。

 魔道具には指輪やブレスレットのようなアクセサリーの形をした物や掌サイズの物が多いけど、眼前にある直方体の魔道具は一般的なものと比べてだいぶ大きい。僕の上半身くらいはありそうだ。必要な魔力量や付与する魔法の複雑さによって魔道具に必要な大きさが異なるそうだけど、国軍が使う魔道具となるとやっぱり違う。


 一方でレイネは平然と話し始める。

「やはり、複雑な魔法が付与されているだけあって大きいですね。許可を得るのに苦労されたのでは?」

「いいや。幾ら幅広い効果のある魔道具でも、数人程度にしか効果を発揮できないからね。すぐに許可を頂けたんだ」

 ゲルダ様の話から何か事情を察したのか、レイネは苦笑を浮かべた。

「……承知しました。効果対象は取り敢えずジンクと担当の護衛に指定しておきますね」

「ああ、そうしてくれ」



 僕とレイネは、ゲルダ様にこれまでの経緯と現状について説明した。レイネは僕が攫われそうになって1週間意識を失っていたところから説明を始め、僕は自分の知識・常識、感覚などをどれだけ覚えているのか話した。

 僕はただ色々してもらうわけにもいかないから、せめて自分も戦いたいと言ったのだけど。


「――……なるほど。魔法を使えて、戦い方も理解しているのか。……だが、戦闘経験を覚えていないようでは、戦力になるかどうかは少し怪しいな。戦闘には基本参加しない方が良いだろう。逆に足を引っ張ってしまう恐れがあるからね」


 ゲルダ様にそう諭された。


「それより君は、記憶を思い出す事が先決だろう。……とは言っても、ただ闇雲に思い出そうとするのは逆効果だ。適度に休む事も重要だよ?」

「……はい」

 ゲルダ様は僕の返事に納得するように頷くと、話を続ける。

「実は、精神干渉魔法は上手くいったとしても、永続的に効果が続くわけではないんだ」

「そうなのですか?」

 レイネは意外そうに言った。

「まず規模にもよるが、精神干渉魔法を使うには他の魔法と比較して多くの魔力が必要となる。人の精神、記憶や価値観に干渉するのはそれくらいエネルギーを必要とするんだ」


 この事は大半の人が知っている事だ。

 案の定、レイネは神妙な面持ちで頷いた。

 

「そして、効果を維持するのにそれなりの維持能力が必要となる。これも他の維持能力が必要な魔法と比べて、高度な技能が要求される」


 例えば、魔法で火や水、土を生み出す魔法は魔力を使う事で()()を生み出している。つまり生み出した物は自然の物と同じように魔力でできていないため、魔力の維持能力を必要としない。逆に自然には存在しない物――例えば結界や付与魔法などは魔力でできており、維持するのに維持能力が求められるのだ。そして、その維持能力にも限界がある。

 精神干渉魔法も同様だろう。


「それなら、僕が記憶を思い出すのは時間の問題って事ですか?」

 僕の問いにゲルダ様はかぶりを振る。

「いいや。そうとも言えない。まず、君が魔法を掛けられてから10日程経っているのに記憶を思い出す事がほとんどできていない。夢を見たと言っていたけど、それが過去にあった事なのか、ただの空想なのかも分からない」


 レイネへの疑念を抑えて記憶を思い出すために夢の事を話したけど、あまり役に立たなかったか……。


「――そうなると、君に使用された魔道具は魔法固定機能が付与されている可能性が高い」

「それは、まさか……!」

 レイネは悲鳴じみた声をあげた。


 魔法固定機能……? 僕の記憶にそんな言葉はない。


「残念だが……――自力で記憶を思い出せる可能性は……ないだろう」


 衝撃の言葉に、僕の頭は真っ白になった。







お読みいただきありがとうございました!


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